私とカートゥーンと鈴と。: サイコノータス Psiconautas

サイコノータス Psiconautas

サイコノータス ~忘れ去られた子供達~
Psiconautas
2016 (西班,仏) 88/100

 新千歳空港国際アニメーション映画祭にて鑑賞。監督や本編などの前情報は仕入れていなかったので、この映画祭の中では一番衝撃が大きかった作品です。不慮の事故によって放射能で汚染されたどこかの島で繰り広げられるダークファンタジー。全編に醸し出されている曖昧な不安や憂鬱な要素が癖になる一作。原作はアルベルト・バスケスの同名漫画。絵柄の雰囲気を極力変えずに絵柄を変えるのに苦労したとか。
 

予告編

あらすじ

  •  島の大部分が放射能によって荒廃した後の世界。その島に今もなお住んでいるディンキーとその友人、サンドラとゾリット。彼らは、両親や知り合いからの重圧に耐えきれないため、窒息しそうなほど重苦しいこの世界から脱出しようと計画する。 その頃父親をなくしたバードボーイは、生活苦のために手を出したドラッグの密輸によって警察に追われていた。また、彼自身の体を和らげるために服用した薬は、心の中の悪魔を誘き出し怪鳥による悪夢と妄想によって彼を苦しめていた。そんな接点のなさそうに見える彼等は、思わぬところで出会い、そして危機に直面するのであった....
"暗闇の世界にだって希望の光はあるはず。"

 キャラクター一人一人が深い悩みを抱えていて、その悩みを丁寧に解説しているところが良い。
 ② ③

ポンコツロボと宗教に取り憑かれた親を持つネズミのディンキー①
残酷非道な悪魔の誘惑に悩まされるウサギのサンドラ②
いじめっ子の格好の標的、足手まといで臆病者の狐のゾリット③
公には姿を示さない謎の多い鳥男、バードボーイ④
ゴミの山からお宝を探すネズミの親子達⑤
母親の介護に明け暮れる豚
 ⑤

 彼らのビジュアルは丸みを帯びていて可愛らしい。それに対して、本作の世界観は夢も希望もない暗さに満ち溢れている。登場キャラと背景画の圧倒的な格差によって彼らの抱える悲惨な現状が浮き彫りになる。デフォルメの効いた登場キャラに反して、本作での戦闘場面や後半のアクションシーンでの陰惨さは途轍もない。血は一滴ずつ正確に描写され、噛みちぎられた後はその後の場面でも引き継がれている。特に、⑤のキャラクターが資材目当てに死に物狂いで互いを殺し合う場面は戦慄モノだ。
 

 世界観や設定もあくまで内容に添えているだけであって、何らかの風刺や核反対などといった安直なメッセージを込めていない部分が良かった。ただ、本作での教訓やメッセージ自体は同意しかねるものであったが...

 陰気で退廃的な世界とはいえ、その世界観をぶち壊さない程度には明るい場面も一応ある。本作の準主人公・バードボーイが時折埋める黄金に輝くどんぐり。その木の実が生い茂る巨大な木の隠れ家のシーンは特に印象的。まるで風と谷のナウシカに登場する腐海の奥底のよう。


 ただ本編全体を見ると、【自身の現状を打破したいなら、過去の祖先が犯した問題を解決しろ】と言われているような感じがする。特に"放射能汚染"というワードが登場する本作では、"福島"の問題は当事者でない方が片付けろと言われたような気がして、どうにも納得がいかない。


 それでも、崩壊寸前のこの世界で直向きに生きる彼らの姿は、一度は見たほうがいいと思う。




追記
 本作品のパイロット版の短編アニメBirdboyはこちらの公式ビデオから視聴できます。崩壊前の平和な世界が冒頭で描かれている分、長編よりもエグいです。今後、サイコノータスを観ようと思う方は予習にどうぞ。
 

    

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