私とカートゥーンと鈴と。: ピクサーストーリー スタジオの軌跡 Pixar Story

ピクサーストーリー スタジオの軌跡 Pixar Story

ピクサーストーリー スタジオの軌跡
Pixar Story
2006 (米)

予告編


 トイストーリー、モンスターズ・インク、ファインディング・ニモ、Mr.インクレディブル、等の傑作を世に輩出したピクサー。そんな名門スタジオの舞台裏と“ジョン・ラセター”の半生を取材したドキュメンタリー映画。購入当時は、ピクサーの短編目当てだったのでおまけ程度にしか扱っていませんでした。しかし、今ではこちらの方が気に入り、定期的に観る事が多くなったお気に入りのドキュメンタリーです。しかし、ハリウッドのセクハラ騒動によって、この作品の印象が大分変わってしまったので、今回はその事を中心に書きます。

感想(事件前)
 ピクサーの哲学、ここに極まれり。ジョン・ラセターの大胆不敵なリーダーシップ、エド・キャットムルの驚異的な技術力、スティーブ・ジョブズの資金とその経営手腕、そして、ピクサーに関わったスタッフの一人ひとりが、後世に残る傑作を生み出していたのだと強く実感できました。初期のトイストーリーやインクレディブルまでの大まかな制作秘話、80年代-00年代初期までのアメリカにおけるアニメーション事情も扱っており、資料映像としても大変満足しました。特にCG大好き民族の欧米欧州の大衆に、《CGアニメこそ唯一価値のあるもの。手描きは古臭く誰も見ない》といった定義を植え付けたために、手描きが一時的に消えてしまうことを語る姿は悲しかったです。

 驚異的な映像を創りだす企業としてのピクサー、そしてディズニーが好きな方にはおすすめの一本。




感想(事件後)
  本来ならサクセス・ストーリーとして鑑賞するのが正しい見方だがが、”あの“事件のことを考えると、自由な社風と会社員の自由な発想を平等に扱うと言っていた事が、全て嘘だったのかと思わずにはいられません。 まあ、(男性のアイデアと彼の妻子に限る)と言えば問題ないけれど。
 今思えば、私の知る限り(他にいたら是非教えてください)で、ピクサーに“始めから終わりまで”携わることのできたクリエイターとして"堂々と"表舞台に出れたのは、TEDのプレゼンに参加した女性アーティスト<1>だけでした。インサイドヘッドでの心理描写、メリダとおそろしの森の女性監督降板などの問題は、“創造性”の問題ではなかったのではと、懐疑的になります。
 実際、ドキュメンタリーの本編を観るとプロデューサーや取締役などの管理職としての女性は存在するものの、"生粋のアニメーター"としての女性が全くいませんでした。大学の同期でラセターの親友兼元同僚のブラッドバードの方が、圧倒的に女性に対する扱いが良いです。(彼自身を細かく知っている訳では無いが、ドキュメンタリー【1】を見る限りは、彼は常に暴言を吐きつつも女性と男性の扱いは平等でした)
 ハリウッドの"あの事件"の処分も休職では生温い。今迄の俳優やコメディアンでもまだまともな処罰を受けています。正直、ジョン・ラセターがいないとディズニーの地盤そのものが揺れることは間違いないですが、続編商法の連発に、"Gigantic"『ギガンテック』の制作中止といったことが起きていることを考えると、彼がいようといまいとそう変わらないと思います。

 最後に、本編の中で、ナインオールドメンのうち一人が、彼は第二のウォルトだと言いました。今思うと、その理由は創造性と洞察力・感受性豊かな部分が似ているというだけでなく、白人至上主義でプロパガンダを好意的に制作し、黄禍論を支持するレイシストらしい部分が彼に似ていたのではないかと疑ってしまいます。まあ、ウォルト自身は才能さえあれば男女関係なく扱っており、セクハラの件もあるジョンの方が酷いかもしれませんが。

嘘であって欲しかった....

  

【1】アイアンジャイアントの製作ドキュメンタリー 『ジャイアントの夢』を参照

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