私とカートゥーンと鈴と。: ブラッド・バードという男 Brad Bird

ブラッド・バードという男 Brad Bird

 ドン・ブルースやゲイリー・オールドマン、ジョン・ラセター、ティム・バートンと同様に、衰退しかかっていた70年代後半から80年代前半当時のディズニーに在籍していた天才の一人、

ブラッド・バード。

 今回は、彼について書こうと思います。

 彼は、物心付いたときからアニメーションに夢中だった。11歳から13歳にかけて初めてのアニメーション作品”Tourtoise and Rabbit”『うさぎとかめ』を制作する。14歳の時その作品を直接ウォルト・ディズニー・スタジオに送った所、ディズニー社の異例の高待遇で、同スタジオでのインターンシップを受ける。このときブラッド・バードを指導したのがナイン・オールドメンの1人であるミルト・カールであり、バードは今でも彼を師匠と仰いでいる。

 ※ミルト・カール ディズニーの伝説的アニメーター”ナイン・オールドメン”の一人。驚異的なデッサン力を持っており、参考資料なしでも十二分に出来の良い絵を描けたという。彼の描く動物キャラは至高。(バンビ、レディ、うさぎどん、シア・カーン等...) 

 その後、カルフォルニア芸術大学”CaLARTs”に入学し、アニメーションを学ぶ。卒業後、夢の職場だったディズニーに就職するものの、かつての師匠達やアニメーションに対する情熱はスタジオから無くなっていた。そんな状況に喝を入れようと、バードは上層部に不満を言い改善を要求した。ところが、その時彼らはバードの社員証を破き、彼にクビを宣告する。そして、彼は思い残すこともないまま、それといった実績を残すこともなく、80年代前半に退社した。

 なお、彼が若い頃の70-80年代のアニメーション業界は、悲惨そのものだった。TVアニメに牌を奪われた映画業界は劇場用の短編アニメを製作を中止し、一般大衆には”子供のもの”としか認識されず、映画会社は「儲かりもしない子供の娯楽に大金は”絶対に”注ぎ込まない」と、重い腰を動かそうともしなかったのである。ディズニー社も製作自体は行なっていたものの、無難な動物もので勧善懲悪の単純なものばかりで、革新性は皆無に等しかった。実際、ウォルトディズニーが直接関わらなくなった『おしゃれキャット』から、1988年の『オリバー ニューヨーク子猫物語』までの 主要キャラクターの大半が動物なのは、その影響化にあると思われる。(※個人的には、ビアンカの大冒険は好きですが...) 


 また、ディズニー社以外にもハンナ・バーベラコンビやラルフ・バクシ、ウォルター・ランツなど(他にもいるけどここでは割愛。)のクリエイター達も製作自体はしていたものの、ハンナ・バーベラはTVアニメの”カートゥーン”(ここでは子供っぽいものの意味)の製作を主軸し単純なものしか作らず、ウォルター・ランツはかつての作風がヒットしないまま影を潜めていき、ラルフ・バクシはあくまでも”成人映画”の製作に意欲を燃やす変わり者として、認識されただけに過ぎなかった。

 




 その後、スティーブン・スピルバーグの映画会社【アンブリン・エンターテインメント】に所属し、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』のなかの一編、”Family Dog”を製作。

 そして、1989年、『ザ・シンプソンズ』の制作プロダクションであるクラスキー・シスポに就職し、『ザ・シンプソンズ』の第1シーズンに制作監督として携わる。その後のシンプソンズの黄金期に支える大役を務め、アニメ業界内での知名度を上げていった。(今思うとシンプソンズのマンネリ化ってブラッド・バードはいなくなったからなのか....?)

 そして、ワーナーブラザーズの企画案にあったテッド・ヒューズ原作の『鉄の巨人』に目をつけ、『アイアン・ジャイアント』を制作に着手する。紆余曲折を経て完成したこの作品は評論家から絶賛されたが、制作費を稼げないほど興行的には成功せずに終わった。 この失敗の原因は【↓】とされている。

◯前作の『魔法の剣キャメロット』によるワーナーのブランド力の欠如
◯製作の遅延による宣伝不足
宣 伝 不 足。
 

 期待とは程遠い結果に意気消沈するブラッド・バード。その後、カルアーツ時代のかつての旧友、ジョン・ラセターの招待を受けてピクサーに移籍。アイアン・ジャイアントで培われた2D3Dの最先端の技術をピクサーに伝授しつつ、完成させたヒーロー一家の物語・『Mr.インクレディブル』は第77回アカデミー長編アニメ賞を受賞し、アニー賞では全10部門制覇を成し遂げた。

 彼の経歴ややりたいことは、米国だから輝いている印象が強い。仮に、彼が日本に産まれていても、アクション系の作品を手掛けたうちの一人に過ぎなかったと感じる。彼が持っていた企画は刑事物やディストピア系が多かったらしいが、カテゴライズされずに成長して来た日本の文化の中では、青年誌に普通に載せられるものばかりだからだ。勿論、レミーのおいしいレストランもアイアン・ジャイアントもMr.インクレディブルもお気に入りだから、彼の作風が好きなことには変わりないけれどね。


セクハラ騒動に巻き込まれてほしくないお気に入りの監督。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事