私とカートゥーンと鈴と。: オリバー ニューヨーク子猫物語 Oliver and Company

オリバー ニューヨーク子猫物語 Oliver and Company

オリバー ニューヨーク子猫物語
Oliver and Company
1988 (米) 80/100

 死にかけだったディズニーが復活する兆しが現れ始めたことを象徴付けた本作品。ブローウェイスタイルのミュージカルは、後に続くディズニー第二の黄金期の礎となった。そして、知名度優先の芸能人吹替による宣伝が露骨になったのもこの頃から。(※ディズニー作品の日本初公開時の吹替は芸能人吹替が常だったが、TV等の大々的宣伝はあまりなかった。)

 原作はクリスマスキャロルで有名なチャールズ・ディケンズの小説『オリーバ・ツイスト』。元々は実写映画だったものを、主要人物を動物に置き換えたのがこれ。

予告編

ストーリー
 ニューヨークの路上で売られていたオレンジ色の猫がいた。ある大雨の夜に路上に放り出されてしまう。偶然出会ったドジャーという犬に「街で暮らすコツ」を伝授してもらったものの、分前に不満を持つ猫は、彼を追って古びた舟にたどり着く。
 船の持ち主のフェイギンはドジャーを含めた5匹の犬の飼い主だった。しかし、フェイギンは高利貸しから取立に追われており、3日以内に金を返さないと命はないと脅されていた。翌日、子猫も犬達の仲間入りを果たし、生きるための盗みを働くことに協力するが...




第二次黄金期の序章となったディズニーアニメ。
 過去にはバンビ、そして最近ではズートピアといったように、動物を擬人化させる技術に関しては世界一のディズニーが創り上げる動物ものは、アニメキャラを観ているだけで楽しい。特に、歌や踊りを重視するミュージカルの形式を採用したことで、アニメーションの動きに深みが増している。


 原作でもあるオリバー・ツイストの未読者でも問題なく視聴できるものの、原作にあった過激さが"殆ど"除かれたことで、原作にあった見せ場はなくなっているのが残念。本編中の背景を見ると少々雑に感じるシーンが多い。しかし、それらの作画は個人的には過去のディズニーにはなかった"現代らしさ"の演出の一つに感じる。なぜなら、冒頭でオリバーがNYの路地を彷徨うシーンでは、アジア系の少年・ヒップホップに夢中の青年・コカコーラやソニーの広告等、今までのディズニー作品ではまず登場しない存在が描かれているからだ。

 前作のオリビアちゃんの大冒険で誕生した展開のテンポの良さに加えて、本作では進化したミュージカルの表現が加わっている。それまでのミュージカルシーンでは歌う舞台が固定されていたのだ。例えば、『白雪姫』では部屋の中で姫や小人が歌うことはあっても、部屋を飛び出すことはない。また、『眠れる森の美女』でも姫が歌い踊るものの、舞踊会の範疇に収まっている。動物達が次々と出て来る『ジャングル・ブック』でも、その場所から飛躍的に移動することは無かった。 つまり、今までは実写でも実現可能な動きを軸に構成されていたのだ。

 しかし、本作では犬や猫がニューヨークを舞台に車を飛び越える犬猫や、ペットを扇動させてキャッツ/CATSも顔負けの一大行進を視聴者に見せてくるのだ。80年代のブロードウェイで特徴的だった複雑でなく親しみやすい踊りに、思わず口遊みたくなる歌。そして、随所に動きで魅せるギャグを挿し込んだことで、"牧歌的・古典的で律儀な歌声や音楽"を優先していたディズニーアニメが、本作より一層魅力的になったのだ。

 芸能人起用が印象的な本作だが、出演者は全員芸達者で耳障りになる演技は無きに等しい。5匹の犬達のリーダーのドジャー役をビリー・ジョエル/松崎しげる、金持ちの家に飼われている雌犬のジョルジェット役を木の実ナナ/ベット・ミドラーとなっている。そして、この配役は完璧だ。勿論、俳優の顔が浮かんでしまう台詞も多少ある。(あたりきしゃりきよ。が代表例)しかし、致命的ではない。

 ミュージカルシーンはどれも甲乙つけがたいけど、個人的No.1は木の実ナナが歌う『完璧なのはラクじゃない』ジョルジェットの人物像や思惑を赤裸々にさらけ出す彼女の姿は強烈。

 また、悪役であるサイクス(演 石田太郎)も一般的なディズニーヴィランズとは一線を画す存在である。というか、血も涙も無いただのヤクザ。フェイギンが彼の家に訪れるシーンでの通話内容は、もはや子供向けではない。

 そして、何と言っても、悪党の制裁がディズニー史上最も過激。
とりあえずこちらをどうぞ(ネタバレ注意)


 落下死や自殺などで死亡シーンを有耶無耶にしていたディズニーとは思えない、現実的でエグい描写。スペイン語訛りのチワワ・ティトの運転テクニック以上に衝撃的。

 高利貸しに追われる哀れな身分ではあるものの、ヒロインを借金帳消しの材料にし、借金を踏み倒したフェイギン。彼に同情しづらい点を除けば問題なく楽しめる一作。
     

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