私とカートゥーンと鈴と。: 魔法の剣 キャメロット Quest for Camelot

魔法の剣 キャメロット Quest for Camelot

魔法の剣 キャメロット Quest for Camelot
1998 (米) 18/100

 90年代前半、『リトル・マーメイド』、『美女と野獣』、『アラジン』、そして『ライオンキング』でディズニーアニメーションは一時代を築いていた。興行記録を塗り替えるほどの成績を目の当たりにした映画会社は、続々とアニメ事業に新規参入した。

 20世紀FOXは、80年代の名アニメーター【ドン・ブルース】を招き入れ『アナスタシア』や『タイタンAE』を、ディズニーを追い出されたカッツェンバーグが創設したドリームワークス『プリンス・オブ・エジプト』『アンツ』を、そしてディズニーも『ヘラクレス』『ムーラン』といった力作を武器に各社が競っていた。そんな中、ハンナバーバラやターナーと共に統合されたワーナーブラザーズのアニメ部門(WFA)が製作したのが『魔法の剣』である。

 原作は、英語圏の方にはもはや定番の『アーサー王伝説』。劇場用アニメでの英語版と日本語版の印象がここまで変わるのも珍しい。
予告編


ストーリー
 はるか昔、ケルトの地に岩に突き刺さった魔法の剣を抜くことのできるただひとりの男がいた。その男こそキャメロット王国の主であるアーサー王であった。建国の日に生まれた少女ケイリーは円卓の騎士である父を尊敬していた。ある日、強欲な騎士ルーバーがアーサー王に斬りかかり、ケイリーの父はアーサー王をかばって絶命する。alicinemaより引用




 まず、邦題がおかしい。『魔法の剣 キャメロット』原題がそもそも"Quset for Camelot"キャメロットへの探索/探求となっていて、本編中の剣にもキャメロットなんて名前はどこにもないのに、どうしてこうなった?

 この作品の良いところは、豪華歌手の名ソングが聴けること。これだけ。

 セリーヌ・ディオン、アンドレア・コアー、ブライアン・ホワイト等の錚々たる面子を揃えて素晴らしい歌声を使うのは良いことだけど、芸能人吹替の様な宣伝材料にしているだけだから、そんな歌声も宝の持ち腐れ。しかも、歌手と俳優の声質が余りにも差があるせいで世界観に入り込めないし、選曲とシーン構成が滅茶苦茶。その上、しつこい。冒頭の議会のシーンのミュージカルは伸ばせば良いと思いこんでいるのがミエミエ。ただ歌って動くだけで嫌になる。

 悪党があまりにも普遍的。他の登場人物とは一線を画する負のオーラを放つ存在とは程遠く、味気ないしつまらない。しかも、全然声が合わない。(ゲイリー・オールドマンさん仕事選んでよ...) 英雄伝なのか喜劇なのかも不明瞭だ。ギャグは寒く、物語は深そうで浅い。アーサー王要素は薄く、戦うヒロインとしても微妙。
 そして、作画は酷すぎる。完成したディズニー作品をまんまトレースしたと言った印象。『プリンス・オブ・エジプト』や『ムーラン』、『ミュウツーの逆襲』と同じ年に公開された劇場用長編とは考えられない。また、作家性も皆無。水面に映るヒロインに至っては、「どこの"美女"だよ。」と突っ込むこと間違い無し。家を飛び出して、歩きながら歌い出し、家畜と戯れる姿が余りにも類似しているシーン 見ると、製作者の作品への拘りが薄いのがわかる。


 こんな状態だから予告編の"proudly present/自信を持って送る"の部分で思わず失笑。

 子供の頃の思い出で素晴らしい作品だと記憶に残っている方には「何を言うか!」と憤慨するかもしれません。しかし、百歩譲ってもこれは良作とは言い辛い作品です。ただ、吹替版では演技と歌の部分の短所が払拭されているので、日本語版ならありかもしれません...制作当時の発表会で重役が【未だにアニメのことがよく判っていない】と発言していたが、正しくその通りだった。関係者はもう二度と関わらない方がいい。

 また、本作品はワーナーアニメーションの黒歴史であると同時に、経済的損失の原因にもなった凄まじい映画である。ワーナーアニメーションの次作『アイアン・ジャイアント』は90年代のワーナー映画の中最も高評価の作品であったにも関わらず、本作品よりも稼げずに爆死。そして、その後の作品も全て爆死。ブランドを傷つけた戦犯は明白。

 なお、ワーナーの長編アニメーション(WFA・WAG・TFA等)の中でこれだけリリースの回数が異常に多いが、間違っても好評だからではない。お伽噺のお姫様が大活躍するものと思っている"ディズニー"作品と、間違って買う方が多いだけ。個人的にはこんな作品を何度も再リリースするくらいなら、他の傑作を積極的に販売してほしい。劇場版バットマン『マスク・オブ・ファンタズム』、『キャッツ・ドント・ダンス』、『アイアン・ジャイアント』、『ルーニー・チューンズ:バック・イン・アクション』等...

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