私とカートゥーンと鈴と。: アカデミー賞長編アニメーション賞 Academy Awards (上)

アカデミー賞長編アニメーション賞 Academy Awards (上)

 第90回アカデミー賞のノミネート作品の選考が発表された。そして、案の定日本の作品は受賞候補に残ることは無かった。
参考サイト


2017
米国
リメンバー・ミー 
アイルランド・カナダ
The Breadwinner(邦題未定)
米国
Ferdinand(邦題未定)
英国・ポーランド
ゴッホ最期の手紙
米国
ボス・ベイビー

 当たり前。なぜなら、アカデミー賞はあくまでも"アメリカ人"の映画祭。作品の是非を問う映画祭を楽しみたい場合は、ベルリン国際映画祭やアヌシー国際アニメーション映画祭の結果を見たほうがいい。参考になるし、コンテストとしても面白い。そして、オスカー像を外国映画が掴み取ることは基本的にないのだから


 しかし、中には「ジブリ作品はどうなのか」とか、「アードマン作品は例外なのか」などと言い出す方もいるかもしれない。

 今回は、過去のアカデミー賞の結果とちょっとした考察を紹介しつつ、何故日本の作品が受賞・ノミネートされないのかを書こうと思う。

年度
作品
2001
受賞作品は太字、ノミネートは細字。
シュレック
ジミー・ニュートロン 僕は天才発明家!(以下JN)
モンスターズ・インク

2001年はアカデミー賞長編アニメーション賞の創設年。その背景には
劇場用アニメが単純に増加したこと。
大手スタジオのアニメ部門創設により、ディズニー一強時代の終焉を迎えていたこと。
"子供向け"の玩具としての認識が消え始めていた。
既に存在するアニー賞への対抗。
といったことが主な理由にあげられる。
 作品候補はピクサーの『モンスターズ・インク』、ドリームワークスの『シュレック』、そしてニコロデオンもといパラマウントの『ジミー・ニュートロン 僕は天才発明家!3作品。


 ディズニーへの対抗心剥き出しのパロディや醜男の恋愛談でアメリカ人を魅了したシュレックや、CGアニメでは高難易度の毛並みを再現したサリーとギョロ目で一つ目の化物の大冒険を描いたモンスターズ・インクは選考部分でも納得のいく作品だ。しかし、JNは奇妙だ。創設当時最低でも3作品は候補を挙げると宣言した影響で、無理矢理入れた感が強い。JNを簡単に説明すると、ニコロデオンが製作したCGアニメで、発明家の天才少年が食料として誘拐された両親を救出するといったストーリーの作品。

 勿論、駄作というわけではない。主人公の発明品が繰り広げるノリノリの演出や悪役側のタマゴ星人役の俳優陣(パトリック・スチュワート氏、マーティン・ショート)が名演技は面白い。しかし、CGもストーリーも際立って素晴らしいわけではない。
 

2002
千と千尋の神隠し以下『千』
アイス・エイジ
リロ・アンド・スティッチ
トレジャー・プラネット

 長編アニメ賞最初の激戦。受賞候補は5つ。
 FOXからは、氷河期に暮らす動物たちと人間の赤ん坊の交流と大冒険を描いた『アイス・エイジ』。ディズニーからは2作品。愛を知らない宇宙人と一人ぼっちの生意気な少女との愛を描いた『リロ・アンド・スティッチ』と、宝島をベースにしたスペースオペラ『トレジャー・プラネット』。ドリームワークスからは西部開拓時代の馬をリアルに描いた『スピリット』。そして、日本の巨匠・宮﨑駿氏によるジブリ作品『千』。
 カリオストロの城の全てに虜になり、80年代から宮﨑駿氏と深い親交を持つピクサーのボス、ジョン・ラセター氏がローカライズを担当。彼が熱心に全米各地を駆け回りながらプロモーションした甲斐あって、『千』が見事受賞。この活動はドキュメンタリービデオとして販売中。
 
 ここで注意したいのが、ジブリ作品の配給はディズニーが担当していること。つまり、アカデミー賞の中では『千』がディズニー作品として認識されているのだ。勿論、建前では映像や脚本を理由に挙げるのだろうが、実際には違う。その事実はこの後の結果で一目瞭然となる。

2003
ファインディング・ニモ
ブラザー・ベア
ベルヴィル・ランデブー
 受賞候補は3つ。
 ピクサーからは、ダイバーに誘拐された一人息子を救う太平洋での大冒険を描いた『ファインディング・ニモ』。ディズニーからは、神の気まぐれで熊へと転生された人間を描いた『ブラザー・ベア』。フランスからは、マフィアに誘拐された競輪選手の孫を救う一部始終を描いた『ベルヴィル・ランデブー』。米国配給はソニー・ピクチャーズが担当。

 今回から初めてフランス産の"海外作品"が参加。カートゥーンでもANIMEでもないフランスアニメ。1997年度の短編アニメ賞にノミネートされた同監督の作品『老婦人と鳩』で話題を集めた監督、シルヴァン・ショメ氏。彼が創り上げた超現実主義を彷彿とさせるデフォルメとスウィング・ジャズ、そして会話を殆ど交わさない物語が特徴的な本作品。注目を集める作家を取り上げることで、アニメーションにおいても"世界"的な映画祭だと思わせようとしているのが読み取れる。

2004
Mr.インクレディブル
シャーク・テイル
シュレック2
 2大スタジオの一騎打ちとなった2004年。受賞候補は3つ。
 ピクサーからは、ヒーロー一家が主人公のアクション映画Mr.インクレディブル』。ドリームワークスからは2作品。俳優の顔に寄せたCGデザインが特徴的な魚達のお話『シャーク・テイル』と、人食いオーガのパロディだらけのコメディアニメ『シュレック2。アニメの先駆者兼大御所のディズニーがノミネート候補に挙がらないところから、ディズニーの影響力が弱くなっていることを認識できる。

2005
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!
ティム・バートンのコープスブライド
ハウルの動く城
 アカデミー賞の常連のピクサーの作品がない上に、大手スタジオによる劇場アニメが殆ど存在しない珍しい2005年。受賞候補は3つ。
 1999年にドリームワークスと業務提携契約を結んだクレイアニメの大御所・アードマンスタジオからは、大野菜コンテストに忍び寄るおばけウサギの退治に奔走する発明家と犬のコンビが登場する『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』に携わった精鋭たちを抱えるコマ撮りアニメの制作会社ライカからは、人間と屍のちょっとブラックなラブストーリーを描いた『コープスブライド』、配給担当はワーナー。そして、日本からは90歳の少女とヘタレの魔法使いの恋物語を描いた『ハウルの動く城』
 スタジオの大火災に見舞われた災難を乗り越えて見事受賞したのは素晴らしいけれど、引っかかる部分がある。ドリームワークスとの業務提携だ。上記のジブリ作品のディズニーへの関わりのように、それが存在しなかったら、米国の制作会社によるコープスブライドに賞を譲り渡したのではないのだろうか?という疑問が浮かぶ。
 どんな作品でも素晴らしい部分が存在し、大勢のファンを抱える作品だらけだからケチをつけるつもりはない。しかし、やはり"米国の関わり"が引っかかるのだ。

2006
ハッピー フィート(以下HF
カーズ
モンスター・ハウス
 ディズニーがピクサーの買収を決めた2006年。ノミネート作品は3つ。
 ワーナーからは、可愛いペンギン達の踊りによる抗議活動が印象的な『ハッピーフィート』。ピクサーからは、哀愁漂う寂れた街に迷い込んだ青二才の車が主人公の『カーズ』。コロンビア映画(ソニー)からは、人食いボロ屋に挑む少年少女と葛藤を描いた『モンスターハウス』
 2006年度の選考は個人的に大嫌いである。アカデミー会員の"エゴ"が露骨に現れているからだ。『HF』は歌唱力が全ての南極で、歌が下手だけど踊りが得意な仲間外れのペンギンのお話。その中で自然保護や地球環境に関わるメッセージを挿入されているのだが、これが頓珍漢なのだ。大気汚染だとか人口増加、不法投棄などならまだ納得がいくが、"漁業における乱獲が全ての原因"のように扱うのは許せないし、意味がわからない。自国の状況と真摯に向き合わず、棚に上げる行為には只々呆れる。
 まあ、2009年度のドキュメンタリー映画賞の受賞作品に、イルカ猟を盗撮したザ・コーヴが選考されたことを知ると『HF』が選ばれたのも納得だが。

 続く)

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