私とカートゥーンと鈴と。: アカデミー賞長編アニメ賞 Academy awards (下)

アカデミー賞長編アニメ賞 Academy awards (下)

の続き)


2007
レミーのおいしいレストラン
ペルセポリス
サーフズ・アップ
 受賞候補は3つ。
 ピクサーからは、不衛生の象徴・ネズミが一流のフランス料理で大騒動を巻き起こすレミーのおいしいレストラン』。フランスからは、イラク人作家の自伝的バンドデシネを映画化した『ペルセポリス』。ソニーからは、水の表現に力を入れたサーフィンが題材の作品『サーフズアップ』
 
2008
ウォーリー
ボルト
カンフー・パンダ
 受賞候補は3つ。
 ピクサーからは、塵塗れの未来の地球で清掃活動に日夜明け暮れるロボットが主人公の『ウォーリー』。ディズニーからは、現実を知らないヒーロー気取りの犬が主人公の『ボルト』。ドリームワークスからは、大食漢のパンダがカンフーマスターへの道へと歩む過程を描いた『カンフー・パンダ』

2009
カールじいさんの空飛ぶ家
コララインとボタンの魔女 3D
ファンタスティック Mr.FOX
プリンセスと魔法のキス
ブレンダンとケルズの秘密
 これまた、激戦区となった2009年。受賞候補は5つ。
 ピクサーからは、子供の頃からの夢を実現するために旅に出た老人を描いた冒険活劇『カールじいさんの空飛ぶ家』。大手スタジオの配給をやめたライカからは、親子愛を欲する悪い魔女の罠に囚われた少女を描いたコマ撮りアニメ『コララインとボタンの魔女』。20世紀フォックスからは、現代に生きる野生動物の生き様を描いた『ファンタスティックMr.FOX』。ディズニーからは、ニューオーリンズ育ちの黒人女性が主人公のプリンセスストーリー、『プリンセスと魔法のキス』。そして、アイルランドのアニメスタジオ【カートゥーン・サルーン】は、世界一美しい本を巡るケルト神話を元にした作品、『ブレンダンとケルズの秘密』




2010
トイ・ストーリー3
ヒックとドラゴン
イリュージョニスト
 ピクサー作品でも、ドリームワークス作品でも最高傑作と言われる2作品が揃い踏みした2010年。受賞候補は3つ。
 ピクサーからは、元祖・長編CGアニメの第3弾『トイストーリー3』。ドリームワークスからは、龍殺しを躊躇う意気地なしのバイキングと翼のかけた伝説の龍との交流を描いた『ヒックとドラゴン』。フランスからは、2003年度のアカデミー賞ノミネート作品『ベルヴィル・ランデブー』を手掛けた監督が描く手品師のお話、『イリュージョニスト』

2011
ランゴ
パリ猫ディノの夜
チコとリタ
カンフー・パンダ2
長ぐつをはいたネコ
 今年度からは受賞候補は基本的に5つとなる。『カーズ2』の大失態により初めてピクサー作品がノミネート候補から外れた2011年。
 ニコロデオンもといパラマウントからは、カメレオンの皮を被ったジョニー・デップの西部劇『ランゴ』。フランスからは、『パリ猫ディノの夜』。ドリームワークスからは2作品。ノミネート作品の続編『カンフー・パンダ2と、シュレックに登場する猫の殺し屋ことプスを主役にしたスピンオフ『長ぐつをはいたネコ』

2012
メリダとおそろしの森
フランケンウィニー
パラノーマン ブライス・ホローの謎
ザ・パイレーツバンド・オブ・ミスフィッツ
シュガー・ラッシュ
 ピクサーからは、イングランドの森を舞台に、戦う女性を全面に押し出した『メリダとおそろしの森』。ディズニーからは2作品。ティム・バートンの実写映画のリメイク『フランケンウィニー』と、実在のゲームキャラが多数登場する『シュガー・ラッシュ』。ライカからは、オカルトに深く精通する少年が主人公の『パラノーマン』。アードマンからは、科学祭に出場する風変わりな海賊を描いた『パイレーツ〜』

2013
アナと雪の女王
クルードさんちのはじめての冒険
怪盗グルーのミニオン危機一発
くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ
風立ちぬ
 宮﨑駿の引退宣言が世界中の映画ファンの注目を集めた2013年。
 ディズニーからは、耳にタコが出来るほど聞いた主題歌【Let It Go】のMVこと『アナと雪の女王』。ドリームワークスからは、外界との繋がりを断つことで平和に暮らそうとする原始人を描いた『クルード〜』邦題嫌いなんだよなあ...   ユニバーサルスタジオが所有するアニメ会社・イルミネーションからは、盗みの稼業を辞めた二流の紳士が主人公の映画第二弾『怪盗グルーのミニオン危機一発』。フランスからは、孤独な熊とネズミの交流を描いた『アーネストとセレスティーヌ』。そして、日本からは2018年現在新作を製作中の宮﨑駿監督の作品『風立ちぬ』

2014
ベイマックス
The Boxtrolls
ヒックとドラゴン2
ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
かぐや姫の物語
 ピクサーの栄光がなくなったのではと噂された2014年。
 ディズニーからは、日本国内の宣伝詐欺が悪い意味で話題になったヒーローアニメ『ベイマックス』。ライカからは、風変わりな箱型トロールに育てられた人間の子供が主人公の『The Boxtrolls』。ドリームワークスからは、2010年度のノミネート作品の続編『ヒックとドラゴン2』。2009年度の『ブレンダン~』【カートゥーン・サルーン】からは、アザラシ型の人魚が登場するセルキー伝説を元にした『ソング・オブ・ザ・シー』。そして、日本からは高畑勲監督が水彩画で描く竹取物語、『かぐや姫の物語』

 2014年度のアカデミー賞で特筆すべきは『レゴ・ムービー』が選考されなかったことである。レゴの宣伝映画としても、親子愛の映画としても、そしてコメディ映画しても一級品だった本作。しかし、実写シーンが本編全体の3割を超えたことにより選考候補にもならなかった。そのため、多数の映画ファンは怒りを覚えたのだ。
 その代償かどうかは不明だが、主題歌の『Everything Is Awesome/全てはサイコー』で楽曲賞のノミネートを受け、オスカー像の授与式ではエマ・ワトソンやメリル・ストリープなどの授賞式に参加した俳優にレゴブロックのオスカー像が配布されたという。
 なお、事実上の二作目でRottentomatoesやIMBDで大絶賛の『レゴ・バットマン/ザ・ムービー』もノミネートを逃している。この事から、アカデミー会員はレゴ嫌いが多いといわれている。

2015
インサイド・ヘッド
アノマリサ
父を探して
ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~
思い出のマーニー

 ピクサーからは、人間ドラマと人間の内側に存在する"感情"たちが織りなすドラマを描いた『インサイド・ヘッド』。パラマウント(配給のみ)からは、人生に退屈している所帯持ちの男性を描いたコマ撮りアニメ、『アノマリサ』。ブラジルからは、哲学的だけどポップな絵柄が特徴的な『父を探して』。アードマンからは、ウォレスとグルミットシリーズのスピンオフ作品の劇場版『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』。そして日本からは、北海道の湿地帯で暮らす心を閉ざした少女を描いた『思い出のマーニー』。


2016
ズートピア
KUBO/クボ 二本の弦の秘密
モアナと伝説の海
ぼくの名前はズッキーニ
レッドタートル ある島の物語

 ディズニーからは、キツネが主人公の『ロビンフッド』以来となる登場人物全員が動物で構成された『ズートピア』と、太平洋が舞台のポリネシア系プリンセスが主人公の『モアナと伝説の海』。ライカからは、中世の日本を舞台にしたコマ撮りの絵巻物、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』。スイスからは、荒んだ家庭環境のために孤児院に引き取られた少年を描いた『ぼくの名前はズッキーニ』。そして、ジブリに務める高畑勲監督の制作指導化で制作されたフランスアニメ(間違っても日本の作品には数えるのはない)『レッドタートル ある島の物語』。

2017
リメンバー・ミー
ボス・ベイビー

Ferdinand(邦題未定)
Breadwinner(邦題未定)
ゴッホ 最期の手紙
そして、今年度。
 ピクサーからは、死者の日をベースに制作された同社初のミュージカル作品『リメンバー・ミー』。ドリームワークスからは、精神的な幼少期を知らずに職務を全うする赤ん坊が活躍する『ボス・ベイビー』FOXからは、闘牛になることを拒む心優しき牛が主人公の『Ferdinand』。二度のアカデミー賞の候補に挙がるアニメスタジオ【カートゥーン・サルーン】が描く過酷な環境で生きる女性の"働き手"を描いた『Breadwinner』。そして、全編が油絵で構成された狂気の作画が堪能できる英国・ポーランド合作映画『ゴッホ/最期の手紙』

 アカデミー賞の選考の問題点として、興行収入が重視することがあげられる。

 作品の評価という点では、『ボス・ベイビー』『Ferdinand』は明らかに場違い。興行収入面ではオープニング成績で美女と野獣を抜き、最終的に5000万ドルを稼いだボスベイビーも、『Ferdinand』も、作品の評価は賛否両論だ。前者は、コメディ映画としてジョークが寒く、風刺が空回りしていることから。後者は古典的な作品をリメイクしただけで物語が薄く、コメディ要素が本家を穢しているといった理由から。(ボス・ベイビーは個人的に好きですが)

 また、老若男女関係なく楽しめる作品がノミネートを果たすから、極一部の客にしか評価されない作品だから日本のアニメは選ばれないと豪語する輩もいるが、それは嘘。もしそうなら、性行為のシーンが存在する『アノマリサ』や、イラン人の女性が活躍する『ペルセポリス』、そして今年度の『Breadwinner』は候補に残ることはまずあり得ない。


ここで、今までの受賞作品の傾向を見てみよう。
・ピクサー
・ディズニー
・ドリームワークス
・ニコロデオン

 ディズニーは、CG化の並に押しつぶされ一時期は危うい状態だったが、2008年以降の映画は基本的にノミネートを果たしている。ピクサーは初期・中期にかけての活躍が凄まじいものの、最近では、続編物は選考から外されていることもあるため、安泰というわけではなさそう。ドリームワークスは、『シュレック』や『ヒックとドラゴン』、『クルードさんち〜』等のヒット作で受賞争いに参戦することはあるものの、評判も興行収入もミニオンズ有するイルミネーションスタジオに客を取られている印象。ニコロデオン
正直まぐれの印象が強い。第一回の『ジミー・ニュートロン』はTVアニメの劇場版で高い興行収入が理由でノミネートされたの過ぎず、受賞を果たしたランゴに関してはニコロデオンというよりジョージ・ルーカスが治めるILMの成果が評価されただけだからだ。

 ノミネート作品のみで絞ると....
 ライカは、CGアニメが全てでないことを印象づけるための立役者のような印象。勿論、作品の質も評価も一定の量を獲得しているので、会社の作品自体がつまらないわけではない。『アイス・エイジ』で有名なブルースカイスタジオは、『ブルー初めての空へ』や今年度の『Ferdinand』のノミネートは果たしているものの、同年度のライバルに興行収入や評判で頭一つ突き抜けるほどのものを得たことがないため、受賞する率は低い。

『ハッピーフィート』『ファンタスティック・MrFOX』『アノマリサ』と、他業種の監督が手がけるアニメーションも見逃せない。しかし、ノミネート候補に残ることがあっても、G指定作品並の莫大な興行収入とディズニー関係者の"コネ"が存在しない限り、栄冠を手にすることはないだろう。また、海外作品はディズニーやドリームワークス等の米国企業との提携が必須となる。2006年度と2002年度の受賞作品を見れば明確だ。

以上のことから作品の受賞の肝となるのは、
米国の制作会社
高い興行収入か圧倒的な脚本・映像の高評価
となるのである。

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