私とカートゥーンと鈴と。: 父を探して Boy and the world

父を探して Boy and the world

父を探して Boy and the world
2013 (ブラジル) 75/100
 "アニメ"の本質と今あるブラジルの姿を教えてくれる秀作。
第88回アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネート
2014年アヌシー国際アニメーション映画祭長編アニメーション部門
クリスタル賞(最高賞)と観客賞
その他にも全世界で44もの映画賞を受賞

 先日、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』の絵柄が雑だと、雑談の中で話題に出た。そこで、私は「絵巻物を連想させる力強い曲線の滑らかな動きを再現するために、通常のアニメの数倍の手間暇がかかっているから、それは違うのでは?」と問いかけた所、「それは作者の過剰な拘りに過ぎないよ。判断するのは、評論家でも学者でもなく、一般人を含めた観客だよ。」と一蹴されてしまった。確かに、塗り残しのあるように見えるけど、そう思ってほしくはない今日此の頃。

 今回は、そんな作家性全開のブラジルアニメの紹介&感想。

予告編
 
あらすじ
 ある日、少年の父親は出稼ぎのためにどこかに旅立ってしまった。父親を見つけて、家に連れて帰ることを決意し、旅に出た少年を待ち受けていたのは、虐げられる農民たちの農村や、孤独が巣食う都会と、少年にとっては未知の広大な世界だった。少年は、行く先々で出会った大人たちや犬、音楽を奏でる楽隊の助けを得て父親を探していく。(映画.comから引用)

紹介&感想
 物語が伝わりにくくて、アニメーションの美しさが際立つ作品は基本的に嫌いなのだけど、本作品は違った。アニメーションならではの表現を最大限に活かした展開が印象的で"イメージを膨らませる"という事に特化して物語が進む。

 クレヨンや色鉛筆、切り絵、油絵の具などを使い分け、時には手描きらしく、時には幾何学的に描かれる唯一無二の世界。子供向け絵本の世界をそのまま映像したかのような、優しい絵柄。台詞という台詞が存在しない設定だからこそ、より輝くものがある。最小限の人物の描き込みと混じり気のないシンプルな背景。主要人物のキャラは誰にでも描けそうだなんて思っちゃいけない。バーバパパやキティほどの大衆性はないけど、バランスが崩すことなく躍動的に動かすのは楽じゃない。

 この物語は一般大衆や大人の視線でなく、少年から見た世界を描いている。どこか不安定だけど、常識に束縛されない自由な世界が広がっている。
 そんな、彼の旅路には、働き詰めの農民達(多分ファヴェーラかな?)や、人の温もりに飢えた都会人たち、そして記号的だけど柔らかい作風のブラジルの大自然が待ち伏せる。それらの描写は、近代のブラジルをおさらいしつつ、ブラジルの問題点を浮き彫りにしている。そして、そういった要素が重苦しいものとして、視聴者にあまり強く訴えるようなことがなかったのが良かった。




 なお、原題の「O Menino e o Mundo」というのはポルトガル語で「少年と世界」という意味。感情に訴えるものこそが宣伝とする悪い癖で『父を探して』なんて邦題がついたけど、これじゃ表紙のポスターに犬を加えた押井守監督の『イノセンス』並の詐欺だぞ。
  ブラジルの都会人と田舎人との扱いの差は、日本の比ではないことを実感する。広大な土地と、一民族一国家として合理する信念を持つブラジルらしい社会的メッセージ。映像の奇抜さ薄れているものの、監督の主張はひしひしと伝わってくる。

 短編でなければ、大抵眠りについてしまいそうな映像で、よくぞここまで魅力的にさせたなと褒め称えたい一作。

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