私とカートゥーンと鈴と。: ダックマン Duckman Private Dick/Family Man

ダックマン Duckman Private Dick/Family Man

ダックマン Duckman private dick/family man
1994-1997 (米) (TV-PG,14) 95/100
DVDパッケージ絵















「何ジロジロ見てんだよ!」


製作総指揮 エヴァレット・ペック
原作 "Duckman" 著 エヴァレット・ペック
製作 ジェフ・レノ、ロン・オズボーン、ガボア・クスポ、アルレーネ・クラスキー
出演 ジェイソン・アレクサンダー、グレッグ・ベーガー、ナンシー・トラヴィス、ダナ・ヒル、パット・ムシック、ティム・カリー、ドゥイージル・ザッパ
音楽 スコット・ウィルク、トッド・イヴェガ、フランク・ザッパ(シーズン1,OP,EDのみ)
制作スタジオ クラスキー・クスポ、レノ・オズボーンプロダクション

 アヒルほど感情を露呈できる生物はいないと思う。わんぱく・ワガママ・鬼金棒など、感情を爆発させるには最適のキャラクターだからだ。ナチに隷属され、ミッキーのスターの座を羨ましがるドナルド・ダックに、才能あれど情緒不安定で暴走気味で薄汚いダフィー・ダック。マーベルコミックの影の実力者でワケありの名探偵のハワード・ザ・ダック。アメリカン・コミックでのアヒルの活躍は、決して褒められるものではないものの、人間味がありつい味方したくなる奴らばかりなのだ。

 クラスキー・クスポ"Klasky Cuspo"。90年代のニコロデオンを知る者には親近感の湧く存在だろう。『ザ・シンプソンズ』のパイロット版や『ラグラッツ』、『ジンジャーの青春日記』、『ロケットパワー』、『ぎゃあ!!!リアル・モンスターズ』を手がけており、日本人の美的感覚では一瞬で不気味だと感じやすい絵柄が特徴的だった。


 今回はそんな会社が産み出した"最低"のアヒルが主人公のアニメ。
 
オープニング


概要
 シンプソンズの大ヒットにより、プライムタイム(19:00-23:00における大人をメインターゲットにした時間枠の通称)でのアニメ番組が、大きな収入源になり得ることを知ったテレビ局達。彼等は二匹目のドジョウを狙おうと、そういった番組を躍起になって製作していた。 FOXはファミリーガイ、コメディセントラルならDr.Katzサウスパーク、MTVならビーバス・アンド・バットヘッドダリアと言った具合に。そんな中で、スポーツ中継やドラマを得意としていたNBCの傘下のUSAネットワークが送り込んできたのが、この一匹のアヒルだ。
 
 なお、副題のPrivate dick/family man とは私立探偵/家族思いの男という意味である。
 
あらすじ(1話)
 誰もが救いを求め、誰もが認める名探偵...の夢から覚めたニコチン中毒の私立探偵ダックマンはいつものように事務所へと赴いた。彼の元で受付として働くフラッフィーとウラナスが郵便物を確認していると、突然その内の一つが爆発した。その爆発物の送り主を突き止めるべく刑務所へと向ったのだが...


主な登場人物
"エリック"ダックマン "Eric" Duckman
 海外アニメで"アヒルの探偵"という言葉を聞くと、グラビティフォールズの劇中のTV番組を連想する方もいそうだが、彼ほど可愛くはない。ひよことは影も形も似つかないぶっきらぼうな黄色い姿に、瞳と同化した眼鏡を被った家鴨。女誑しでどんなことにも三日坊主。素行は荒々しく、常に喧嘩腰のような口調。今日も探偵稼業に励むバツイチのシングルファザー。

バーニス おばさん"Aunt Bernice"
 ダックマンの義理の姉。ダックマンとは常に嫌悪で同調することはまずない。良き父を演じようと、不必要に彼の息子達に付きまとうダックマンの邪魔をすること。そして、フィットネスクラブに通うことが日課。ただ、たまに、意気投合することも....

エイジャックス"Ajax"
 ダックマンの息子で、バーニスの甥。たまに専門的な知識や思考を家族に晒すものの、あくまでもバカの一つ覚えになっており、知能は低い。家族の中ではダックマンの一番の理解者。また、女性理事長と相思相愛の仲になるほどのやり手。

チャールズとマンボ"Charles&Mambo"
 エイジャックスの弟二人組。シャム双生児を思わせる肉体ながらも、10歳児にしてはかなりまとも。不自然なほどインテリで、日常会話はもはや大学生の域に達している。

おばあちゃん"Grandma-ma"
 登場回数は多いものの、本編では屁をこくことしか役割がない老婆。但し、家族からお荷物として扱われていないので問題なし。

コーンフェド"Cornfed"
 冷静沈着で抑揚のない声で喋る豚。上司であるダックマンに何を言われようと、動じることのない真人間。(彼の精神が病む"Pig Amok"回は別) 文武両道で、「人を殺す200の方法を知っている」と主張するほどの強者。ダックマンが指揮する事件の大半は彼の成果。

フラッフィー"Fluffy"とウラナス"Uranus"。
 ポリティカルコレクトネスや自由・平等・博愛を謳うような存在として描かれているウザ可愛い赤と青のぬいぐるみ。彼等に対するダックマンの仕打ちは、4,50年代のクラシックアニメとは又違った残虐性と不条理さを兼ね備えている。ダックマンの行動は常軌を逸しているものの、「食肉のために動物を殺すのはダメダメ」だとか、むやみに話題を振ろうとする姿を観れば、自ずとぶん殴りたくなるのも納得がいく。
 海外の掲示板でケアベアならぬ"Who Cares" Bear(だから何? ベア)と呼ばれた、サウスパークにおけるケニーのようなキャラクター。



 パロディや風刺自体はそれほど新鮮味はないが、その見せ方が非常に独特。他社のキャラクターを茶化した映像を見せるだけでなく、主人公の周りの物体は全て否定的描かれている。その影響で静止画では一見乱雑に見えてくるものの、ダックマンの荒々しい言動と殺伐とした世界観に見事に溶け込んでいた。

 暴力的で非現実的なキャラクターが登場するカートゥーンでは、大抵現実と区別させるために指の数を減らす傾向がある。本作では全てのキャラクターの指が人間と同じ5本であり、子供を端から相手にしていないのもいい。擬人化された動物とそうでない動物が共生する世界ではあるものの、探偵物語には必要不可欠な血や銃弾に淫らな題材は包み隠さず曝け出しているため、間違っても子供には見せてはいけない。

 サブキャラとして登場する方々は、聖職者・セレブ・依頼人と全員いかれている。主人公が天国から帰還して喜ぶ姿を見て解剖医が落ち込んだり、茶化す対象が皆カリカチュアにみられる顔付だったりと、とにかくブラックユーモアが強烈。

 主人公のダックマンは頼りなさそうで怠惰に見えるけど、やる時はやる男。周囲に傍若無人な行動を撮ることで、心の中を読まれないようにしている。他のキャラの個性もしっかりと区別がつくからこそ、彼の内面性が際立っていて良かった。特に、口煩く自論を話しているものの、その大半が一理あるもので共感出来ることが多いのだ。

 
また、フラッフィーとウラナスは、純粋に見ていて楽しい。ダックマンによる嬲りの一部始終は、悪趣味でハッピー・ツリー・フレンズを連想するほど残酷。しかし、制作側が意図的にウザ可愛いと思わせるキャラ設定が上手く作用しており、ついつい観てしまう。なお、彼等は縫いぐるみなので何度でも蘇るので安心。

 そして、なによりも題名の"Family man"の名に恥じない立派な家庭内ドラマが繰り広げられていること。『キング・オブ・ザ・ヒル』『ファミリー・ガイ』が存在しない90年代後半で、共感しうる家族内描写は大変貴重である。社会風刺や皮肉が詰まった大人向けカートゥーンは既に存在したものの、家族に多く焦点を充てた作品は『シンプソンズ』『ダックマン』だけだった。

 
 

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