私とカートゥーンと鈴と。: ニモ NEMO Little Nemo

ニモ NEMO Little Nemo

ニモ:NEMO
LITTLE NEMO Adventures in Slumberland
1989 (日米合作) 35/100 


 ANIMEという言葉があまり浸透してなかった70年代。TMS(現トムス・エンタテインメント)は国内のアニメ市場に限界を感じていたため、1975年海外進出のための原作探しを始めた。そして、米国におけるアニメの状況と日本との倫理・法的ルールを熟知した上で選ばれたのは、古典的名作『リトルニモ』。53億もの資金を投じるには格好の素材であったはずが......

 今回は、凡作にしては製作背景が凄まじい作品。
予告編


 原作は、ウィンザー・マッケイが1905年から11年までに連載した新聞漫画『夢の国のリトルニモ』。シンプルで古典的な起承転結の漫画が一般的だった連載当時、それは異質だった。陰惨で超現実的な夢の世界への旅を描いた作品は当時は不評だった。しかし、再評価によって現代でも高い支持を受ける作品となった。

 このアニメ映画に関わったスタッフは豪華さだけで言えば、世界一である。予算・人材ともに莫大で神々しい。 あのディズニーの黄金期を支えた伝説的アニメーターナイン・オールドメン。『グーニーズ』や『ホームアローン』、『ハリーポッター』等の作品を手掛けた映画監督クリス・コロンバス。火星年代記』や『華氏451度』等の小説を執筆したSF作家レイ・ブラッドベリ。東映動画のアニメーター第一期生大塚康生、スタジオジブリでお馴染みの宮﨑駿と高畑勲、そして近藤喜文。『ブルーベリー』や『アルザック』で知られるバンドデシネ作家のメビウス。 もはや、世界のクリエイターのるつぼ状態と化した制作現場で、まともな式も取れるはずもなく...

 ※本作品のドキュメントはリトルニモの野望に記載されているので詳しくはそちらからどうぞ。
  
感想
 映像が凄い。他は単調。
 夢の世界が舞台ならいろんなことが出来たはずなのに、それが映像にだけとどまってしまったのは惜しい。

 原作者ウィンザー・マッケイのデザインと世界観が、見事に再現された映像は圧倒的である。現実の動作をモデルにしたディズニー式のアニメイトと、Anime式の構図が見事にドッキング。CG未使用とは思えない浮遊感溢れる木製ベッドに乗る姿は、好奇心が湧き立つ。ディズニー式となると本作品がミュージカル映画と勘違いしそうになるが、音楽がディズニーらしい曲調なだけでミュージカルでないので大丈夫。躍動的でリズミカルなオーケストラは、ディズニーなら間違いなく歌詞をぶち込んだだろう。

 山場となるシーンは全てが名シーン。縦横無尽に動き回るカメラワークに、無駄に生き生きとしたな登場人物。まるで、ピーターパンでの飛行シーンと天空の城ラピュタでのドーラ一家のシーンのごちゃ混ぜのよう。上記の製作スタッフが混ざりあっただけあって、日米双方の求める演出や表現が混ざりあっているのは、なんとも言えない




 但し、映像以外は支離滅裂で意味不明。台詞から察せられるのは大まかなあらすじ程度。ストーリーは目的も順序もややこしくてしょーもない。何度も何度もベッドから覚める主人公で、観る気が失せること間違い無し。また、主人公は夢の世界を旅するだけで、夢を支配できたり夢の中で優位に立てる特殊な能力を持っているわけではない。ずっとパジャマ姿だと、マザーMOTHERのネスを連想するから、何かあるのではと期待しちゃうんだよなあ....

 冒険活劇としても、動くだけで物語の意外性は皆無。豪華で壮大で幻想的なのは映像だけなので、それ以外には期待してはいけない。物語が退屈なところをみると、脚本家が無能であったのではと疑ってしまう。しかし、脚本担当がクリス・コロンバスだということ
を思うと、本作品の製作が如何に混沌としていたかが容易く想像できるだろう。

 1989年に公開された本作は、皮肉にも企画者が権利を放棄した後にビデオ市場で制作費を埋め合わせできるほど稼ぎだした。また、AKIRAやドラゴンボール等のTV用・劇場用アニメの進出の方が、結果的に米国に与えた影響が大きかったのは残念でならない。

当時のCM

映像研究という点でなら誰にでも勧められる一作。

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