私とカートゥーンと鈴と。: 南部の唄 Song of the South

南部の唄 Song of the South

南部の唄 Song of the South
1954 (米) 83/100 スプラッシュマウンテンの元ネタ。


 世の中には、封印作品というものが存在する。関係者の諸事情で公に姿を見せないものや、一般市民の抗議により公開禁止となったものなど多数。世界一のエンタメ企業として名を馳せるディズニーカンパニーも例外じゃない。

 今回は、そんな作品の紹介と感想。
あらすじ
 白人の少年・ジョニーとその家族は、アトランタから南部の農場へ移住することになった。父親と離れ離れになった寂しい思いのジョニーを慰めたのは、下働きの黒人・リーマスおじさんのおとぎ話だった。
 小さなブレア・ラビットが意地悪なブレア・フォックスブレア・ベアを知恵でやりこめるリーマスおじさんの話は、楽しく機知に富んでおり、ジョニーは黒人の少年・トビーや近所に住む少女・ジニーと一緒におじさんの話にのめりこむのだった。しかし、ジョニーを素直で従順な少年に育てたいジョニーの母親・サリーは、ジョニーがリーマスおじさんの話に夢中になるのを快く思っていなかったのだ....

本編一部


紹介&感想
 原作は、ジョーエル・チャンドラー・ハリス著の『リーマスおじさん(Uncle Remus)』シリーズの「Uncle Remus; His Songs and His Sayings. The Folk-Lore of the Old Plantation(1880年)」と「Nights with Uncle Remus(1883年)」で、二冊には約100話の小話が収録されている。



 映画本編は農場主の息子と下働きのリーマスおじさんとの心のふれあいの部分と、リーマスおじさんが語るお伽噺の部分の2つに別れる。実写部分のあれこれや「黒人云々~」をそれほど語りたくはないので、アニメ部分を中心に紹介する。



 まず、アニメと実写の切り替えが上手い。本作の主題歌を歌い出すところでアニメーションの世界へとリーマスおじさんが入り込むのだが、歌い始めた途端に緑豊かな世界が広がるように見せる巧みな演出は、流石ディズニーといったところ。お話に登場するうさぎや狐や熊は、イソップ童話の存在した古代から培われてきた典型的なイメージが、色濃く反映されている。ウサギは、頭は切れるがトラブルメーカーで、狐は姑息なお調子者で、熊は大柄なだけで鈍感と言った具合だ。



 実写との融合はリーマスおじさんとうさぎどんの会話シーンと、子供達と動物達が共演したエンディングのみ。個人的に、ディズニーにおける実写とアニメの混合における基礎はここで完成していると思う。実写内のアニメよりもアニメ内の人間のほうが現実味があり、存在が浮きにくいことを製作陣は理解している。そのため、シーン転換の巧妙で観る気が失せるということもない。

 アニメ部分の物語は、「ウサギどんの家出」、「タール人形」、「笑いの国」の3編で構成されており、ここがスプラッシュ・マウンテンの直接的な原作となっている。どの話も説教臭くないすっきりとした教訓話となっており、気軽に楽しめる。リーマスおじさんの南部訛りの語りの一句一句が印象的。また、スプラッシュ・マウンテンの予習にも最適である。逆に、乗車済みの方なら話の展開が読めて、思わずニヤリとなるだろう。


 本作品は1986年からディズニーにおける封印作品となっている。しかし、典型的なステレオタイプを描いたプロパガンダが無修正のまま一般公開されているのに対し、未だに本作が封印されているのは納得できない。人権や民族どうこうの差別や平等を謳うなら、双方を封印するかその逆を行わないと不自然だ。200年以上に渡る人種差別の問題は根深いのは理解できるが、他民族の事となると途端に無関心になる団体が蔓延る米国で、そんなことをとやかく言われる筋合いはないはずだ。

 ディズニープロ特有の表現に関わる問題が、最悪の形で現代にまで影響した作品。
 

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