私とカートゥーンと鈴と。: ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち Watership Down

ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち Watership Down

ウォーターシップダウンのうさぎたち Watership Down
1979 (英) 80/100 安住の地を目指すウサギたちの葛藤

 ピーターラビットの実写版の公開が近づく中、近所のレンタルビデオ店ではウサギ絡みの作品の在庫が少なくなっている。皆がそうというわけではないだろうが、"ピーターラビット"的な作品を借りに来た人々が大半(のはず)だ。昼夜を問わず、親子連れが表紙のパッケージのみで吟味する中、今回紹介する作品を選んだ方は、今どんな顔をしているのだろうか....

 今回はそんな作品。

あらすじ
 イギリスの田園地帯に暮らす野うさぎたち。危険を察知するのに一際優れたファイバーは「恐ろしいことが起こる。野原が血だらけになる。」と予言する。長老を含めた多くのウサギ達は、平和ボケが過ぎたせいか全く信じなかったが、ファイバーの兄・ヘイゼルと一部のうさぎたちはその言葉を信じ、安住の地を目指して旅を始めるのだった...

予告編


紹介&感想

 原作は、以前にも紹介した『疫病犬とばれて』を著した英国の小説家リチャード・アダムズの同名本。一応、児童向け小説の体裁を取っているが、どちらかと言うと大人の方が楽しめる作品だ。原作の魅力の一つでもあった"動物の擬人化"はアニメでも健在。文明の利器を使用するようなことはなく、野生動物の動きをベースにしている。人間と会話することもない。戦う際もか細い歯で噛む、肉球があるそうない手に生えた爪で引掻き合うなど、かなりリアル。

 
 リアルな動物のアニメーションを担当したのは、『バンビ』や『ファンタジア』に参加したアメリカのアニメーター、フィリップ・ダンカン。弱肉強食、縄張りの抗争によるうさぎ同士のデスマッチなどを徹底して精巧に描かれる。人間に駆逐されたり、鷹に食われたりするなど、周りには敵だらけ。(年配者の平和ボケは相当やな...) 英国の田園風景の長閑さとは対象的な彼等が属する生態系が存在するからこそ、ウサギたちの葛藤が面白いのだ。逃げ足が速いことが取り柄のうさぎたちが、知恵と勇気で苦難を乗り越えていく物語。多彩なテーマが織り込まれおり味わい深い。

 人間に映る自然と動物達の暮らす自然は別物。人間が関わるアニメで、この定義をしっかりと反映させたアニメは中々ない。(自然の中で起こる非現実な出来事や、絶対的な悪が存在する動物アニメならゴマンとあるが。)

 後半のウーンドウォート将軍が支配する恐怖政治の国エフラファとの戦いは壮絶だ。エフラファへの潜入と脱出、将軍との決戦。緊迫感に富んだ音楽をバックに描かれるうさぎたちの闘いは必見。
 

 原作との大きな違いは、人間が介入するのは中盤のみということ。映画では、人間はウサギたちの居住地を破壊し、到底立ち向かうことのできない悪しき存在だということ。原作のラストでは皮肉にも人間に救われるという落ちがあるものの、本作品ではウーンドウォートと決着をつけて終演する。これは、個人的に大正解だと思う。原作は児童向け小説として出版されただけあって、オチが軽かった。中盤までは自然の摂理や食物連鎖に従うウサギ達が存在したのに、終盤のうす平べったい感情論が支配する内容の味気無さに呆気にとられたからだ。

 そして、主題歌『ブライト・アイズ』が特に良い。英語版をアート・ガーファンクル、日本語版では井上陽水が訳して歌っている。素朴ながらも力強い歌声の英語版、その良さを引き継ぎながらも落ち着いていた余韻を残した日本語版どちらも聴き心地が良い。なお、日本語版の歌は単体では入手困難必至なので、聴きたい方はDVDをどうぞ。

 格好いいウサギを見たい方にはお勧めの一作。

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