私とカートゥーンと鈴と。: 海綿をも凌ぐニコロデオン史上最大のドル箱 『ラグラッツ』Rugrats

海綿をも凌ぐニコロデオン史上最大のドル箱 『ラグラッツ』Rugrats

ラグラッツ Rugrats
1991-2006 (米) 75/100
企画 アーリーン・クラスキー、ガボー・クスポ、ポール・ジャーマン
音楽 マーク・マザースボー、デニス・M・ハニガン、ボブ・マザースボー、ラスティ・アンドリュース
編集 カール・ガラベディアン、ジョン・ブライアント
制作会社 クラスキー・クスポ、ジェームズ・アニメーション(1991-1997)、ニコロデオン・アニメーション・スタジオ (1998-2003)
動画・作画担当 ワン・フィルム・プロダクション(1991-92)、アニビジョン (1992-2003) シーズン9 全172話

 ニコロデオンは視聴ハードルが高い。

 日本じゃあ特に高い。

 重度のカートゥーン・ネットワーク(CN)派の投稿主にとって、十数前までベイビーTV等の未就学児向け放送局にしか映っていなかった。思い返せばそれも無理はない。なんせ、日本国内の広告でニコロデオンの本質をアピールしたCMは、"マクドナルドのあれ"以外に存在しないと断言しても過言ではないのだから。

 知育に適した放送局として宣伝する広告ばかりで、【少年少女の抑圧された欲望や好奇心を具現化した番組の宝物庫】という本来の姿を説明したチラシやCMが余りにも少なかった。

 一押し番組に『ジェニーはティーン☆ロボット』や『インベーダー・ジム』、『アバター 伝説の少年アン』、『Opps! フェアリーペアレンツ』が映ることは希少で、いつも『スポンジボブ』『ドーラといっしょに大冒険』、『ブルーズ・クルーズ』等無難で希薄なチャンネルだと思われるものばかり。

 その癖、NHKで定期的にニコロデオンの番組を提供していたのは何だったのだろう。カートゥーン・ネットワークがテレビ東京系列を中心にチャンネルを宣伝する姿とは対象的に、彼らは番組提供するだけで広報宣伝も疎かだった。 (『ダグ』、『ジミー・ニュートロン』、『スポンジボブ』、『iCarly』、『The ペンギンズ From マダガスカル』等) 公共放送のNHKに広告を掲載することはできない。ニコロデオンの存在を知っても加入方法を伝える手段がない。こんなアホなことはない。

 ディズニーの後ろ盾で暗躍するワールド・ファミリーや『テレタビーズ』有するBBC、非営利団体のセサミ・ワークショップ等の名だたる大御所ならともかく、バイアコム主導のカナダ版教育テレビ的存在には明らかに不適当な宣伝だった。確かにニコロデオンは"子供のためのテレビ"ではあるが、日本人の視聴者の子供にも安心して観せられる番組とは程遠いものばかりだった。(というか、子供向けならEテレで事足りる)

 何よりも所帯持ちの保護者への求心力が低かった。"日本初のアニメ専門チャンネル"として開局したカートゥーンネットワークとは違い、完全に幼児~小学生向けのチャンネルだったことも災いした。

オープニング


 本作の題名である"Rugrats"。その意味は絨毯"Rug"を駆け回るネズミ"Rat"の様な存在。つまり、よちよち歩きや覚束ない調子であれこれ触る幼児達そのものを指しているのだ。

 赤ん坊の疑問を"大"真面目に描く

 本作の存在を認識した時、行動が大人や小学生と比較してかなり制限された乳幼児で、どう物語を広げられるのかと非常に気になったが、よくよく考えてみれば、赤ん坊にとっての経験の大半が"未知と隣合わせの非日常"で、アニメーションのネタ切れには困らないのかもしれない。

 アニメーターは(言わずもがな)心も身体も全員成人である。そのため、赤ん坊・幼児視点で描くというのは容易いことではない。特に小学生の頃の経験と違い、文章化・形容化が非常に困難であった。"子供達の日常を描く"と言っても、1990年以前は学習・知育向けアニメを例外とすれば、題材になることもなかった。仮に幼稚園生や保育園児を登場させた所で、"わざとらしい"子供っぽさが鼻につく代物ばかりだった。

 ラグラッツの幼児は0~3歳児で構成されており、彼らの行動原理も子供達の共感が湧くものとなっている。同系列のアニメ【『ダグ"Doug"』(1991-1994,1996-1999)『エドエッドエディ"Ed,Edd'n'Eddy"』(1999-2008)、『リセス"Recess"』(1997-2001)】① に代表される子供の日常に特化したアニメーションは全て小・中学生が題材となっていた。そのため、非常に斬新に、刺激的に映ったに違いない。また、ラグラッツでは子供には本来適さない題材も、赤ん坊がどう"それを受け止めるのか"を研究し、真摯に描いている。

 現代社会を経験すればするほど疑問にすらしない物事に対して、独自の見解を示して、間髪入れずに行動に移す。ラグラッツはまさに"元気いっぱい"を体現した姿なのである。

 また、ラグラッツでは赤ん坊の保護者が登場するのも興味深い。話を独立させる為のテーマを固定化させる補助的存在でありながら、子供の保護者として意見を代弁する役割も存在するのだ。子供たちが一つの住居に集合する以上、親御さんも一堂に会するのは当たり前だが、その描写を追加したのは素晴らしい。

 ①で言及したアニメーションは大人の存在を邪険に扱うか、子供達の影で活躍する状態だった。ところがラグラッツの場合は、赤ん坊の周囲に密接に関わる保護者としてほぼ毎回登場するのだ。しかも、双方に見どころがある。ここが良い。

 製作元のクラスキー・クスポはこれをきっかけに初期のニックトゥーンを続々と排出する。その影響で90年代の大半ニック作風が画一化されたようで似たり寄ったりな印象。まあ、対象年齢が違えばそれも違うが...

余談

 因みに制作会社のクラスキー・クスポは"Private Compeny"..いわば日本でいうところの非公開型企業。本作の打ち切られた2004年の放映終了と共にテレビ向けオリジナルアニメーション製作は大幅に縮小されている。広告や企業向けの映像に特化した影響で、公式サイトはもはや開店休業状態のよう。最近、90年代のニックトゥーンを復活させる機運が高まっている半面、当時の製作スタッフの創作物とは程遠い代物になりそうで少し不安。

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