私とカートゥーンと鈴と。: 動物農場 Animal Farm

動物農場 Animal Farm

動物農場 Animal Farm 1954 (英) 
65/100 原作改変を加えた英国初の総天然色長編漫画映画
 いつの時代でも、定期的に売れる作品がある。世間に溢れる不安の捌け口として、またはその解決策として、大衆が求める本がある。
 今回はそんな原作から誕生したアニメ。

あらすじ
 残忍で無能な農場主に虐げられてきた動物たちは、2匹の有能な豚スノーボールとナポレオンをリーダーとして革命を起こす。「すべての動物は平等である」という理想を掲げ、人間を追放し、自ら農場経営に乗り出す。順調に滑り出したかに見えた「動物農場」だったが、幸せな日々は数ヶ月しか続かなかった・・・。(DVDの紹介文から引用)
予告編


英国初の総天然色活動漫画

 原作は、1945年に刊行されたジョージ・オーウェルの同名の寓話小説。社会主義国家に振り回された支配者と平民を寓話の体裁で描いた本作品は、本来なら影響力が絶大的でソ連から地理的に離れたアメリカで製作する方が現実的であった。しかし、当時ハリウッド映画界に蔓延していた"赤狩り"の影響でその企画を実現するのには困難な状況だった。そんな状況下でも、本作による啓蒙は効果的なものだと睨んでいたCIA捜査官エヴェレット・ハワード・ハントは原作者の遺族と面会し、"動物農場"映画化の権利と取得した。

 こうした背景があるせいか、結末は原作から大きく変更されている。




 本作では、知性を持って活動する動物達も生物学的に問題ない範囲で活動している。四足歩行が二足歩行になることもない。人間的な生活を勤しむ豚を除けば、皆ただの動物だ。例えば、牧場主の監視の目を逃れるために隠れる時、ひよこはただ行進するものの、ウサギ以上に大きい動物はみな低い姿勢を保っている。

 原作の終盤の場面。ナポレオンを中心に豚と近隣の人間達が祝賀会を、年老いた牝馬のクローヴァーが垣間見る。その後、彼の目が衰えたことで彼の視界が霞んでいき、豚と人間との区別ががつかなくなってしまうところで作品が終了する。この場面では、人間による呪縛から逃れても、その立場に豚がすり替わっただけで状況は変わらなかったことを暗示している。 アニメではその後、豚たちへの怒りに賛同する動物達が、再度革命を起こす所で終了する。善悪の区別がはっきりと見分けられるよう配慮したこの改変は正解だと思う。社会構造は延々とループすることを強調させた原作のラストの場合、国威宣揚という背景がある上では致命的だからだ。

 また、アニメ版のみを見ると崩壊の原因が個人本意によるもので、他の動物が指導すれば自ずと成立するようにも捉えられてしまうのが残念である。しかし、それも前述のCIAの思惑が深く関与した結果であるため、仕方ないといえばそうなのだが....

 アニメも原作も訴えかける基本的なメッセージは変わらない。しかし、72分という上映時間は原作を要約した程度にすぎないため、"小説"の存在が本作の最大の弱点であると考えられる。それでも時代背景や英国のアニメ史を考慮すれば、一度は見るべき作品であると思う。

 

1 件のコメント:

  1. 今さらですが、原作ラストの解説、クローヴァーは牝馬なので「彼の目が~」ではなく「彼女の目が~」ですね。

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