私とカートゥーンと鈴と。: アーリーマンに至るまで Early man

アーリーマンに至るまで Early man

アーリーマンに至るまで。 Early man



 7月に日本で公開するアードマン・アニメーションズの劇場映画最新作、『アーリーマン』。原始人が主人公の本作には、ある特殊な経緯がある。今回はその背景とアードマンの長編における歴史の紹介。


 1995年に5本の長編作品の契約を締結したアードマン・アニメーションズドリームワークス。彼らは双方の強みを活かしつつ、10年間に渡ってチキン・ラン、ウォレスとグルミット、マウスタウンと作品を製作してきた。

 ところが、2007年に4作目の製作途中で契約は破棄されてしまう①。ちょうどその頃、ディズニープロダクションが手描きアニメに回帰すると宣言した矢先のことだった。この出来事に対し一部では、伝統を救おうと躍起になるディズニーを前に、ドリームワークス社は後退しているのだとという批判もあった。 しかし、その行動は正解であったし、有益でもあった。 なぜなら、アードマンがドリームワークス社に身を寄せること自体が危ない橋を渡るようなものだったのだから。




 『チキン・ラン』は興行的にそこそこの成功を収め、コマ撮りアニメとして世界一の成績を記録している。しかし、次作にあたる『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』では5年の歳月を費やしたにも関わらず成績はあまり思わしくなかった。アカデミー賞を授与されたほどの傑作としては、あまりにも異常なことだった。

 そして、3作目の『マウスタウン ロディとリタの大冒険』では制作費を回収できないことの失敗作となった。また、この作品で彼らが提携することに対するデメリットが露呈してしまった。

 1つ目は"クレイアニメ"という映像形態。

 新興企業のドリームワークスは映画スタジオ。映画スタジオは基本的に、映画館での配給やTVでの放映やDVDの販売といったもので食いつないでいる。そのため、作品数がそもそも少ない彼らは常に資金難に付きまとわれていたのだ。 そんな状況で、作品を掛け持ちするほどの体力のないスタジオの様子を4,5年も待つ余裕はなかったのだ。
 また、チキン・ランの公開された時期・90年代後半から00年代前半におけるアニメーション産業において、CGアニメーション以外は"芸術作品"のような枠組みで捉えられる事が多く、興行的に成功するものはなかったのだ。(日本市場は例外)

 2つ目は"英国ユーモアと米国ユーモア"の捻じれ。

 もしドリームワークス社が配給と資金調達のみを担当していたら、アードマン特有の毒々しいユーモアと軽快なテンポとシニカルな笑いが詰まった映画が提供されていただろう。しかし、英国と米国の企業が互いに製作をする状況では、そうはいかなかったのだ。 チキン・ランでは雄鶏役としてメル・ギブソンが登場し、W&Gではスリル満載の映像のゴリ押しで話を纏めようとした。

 そして、『マウスタウン~』ではほぼ完全にアードマンの"妙"が活かされず、存在しないも同然の状態になっていたのだ。

 Mr.ビーンを見るとこれでもかと言うほど痛感するが、アードマンもとい英国のコメディでは、基本的に毒を込めたシニカルな動きで笑わせることが多い。本作でも自虐を含めた風刺ネタが多い。しかし、途中に差し込まれる大量の会話や一枚絵で笑わせる画面でその勢いが相殺されてしまうのだ。ヒュー・ジャックマンを軸としたイギリス人俳優で脇を固めておきながら、中途半端な混ぜ方はするものじゃない。

 下の画像は映像面で光るギャグの一例である。

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右側に氷漬けのハン・ソロが...(マウスタウン ロディとリタの大冒険 より)

 アードマン側の企画だったものを"水の表現”の再現と"制作時間の短縮"を理由に、彼らが映像制作をドリームワークス側に委託した結果がこれである。クレイアニメでなくなった時点で、彼らの絵柄がCGアニメの長所になることはない。シリーズ作品のCG化なら、作風を維持する手段として納得がいくが、こちらは完全な新規作。アードマンの絵柄でやる必要がないのだ。

 こうして提携解除を決定したのだが、その結果ある企画が宙に浮いた状態になったのだ。それが、『アーリーマン』と『クルード~』の元となる"Crood Awaking"である。

 その企画は共同制作であったためにお互いにそのアイデアを保持した状態となったのだ。その後、ドリームワークス側はムーランやリロ・アンド・スティッチを世に送り出したクリス・サンダースディーン・デュボアの2人を製作に携えたのだ。その結果誕生したのが、『クルードさんちのはじめての冒険』"Croods"である。

 そして、アードマン側の"原始人"のアニメが今年の夏に公開される『アーリーマン』となったのだ。

 激動の時代の中で旧人と新人が理念の相違から衝突する 『クルードさんちのはじめての冒険』

 旧石器時代と青銅器時代の人間がサッカーで対決する  『アーリーマン』

 "旧世代と次世代の対立"という共通の設定からどう差別化されていったのか。公開が待ち遠しい。
 
ディズニーアニメの監督がドリームワークスに流出-映画.com
 Wikipedia クルードさんちのはじめての冒険

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