私とカートゥーンと鈴と。: マウスタウン ロディとリタの大冒険 Flushed away

マウスタウン ロディとリタの大冒険 Flushed away

マウスタウン ロディとリタの大冒険
Flushed away
2006 英米合作 (PG) 40/100 


 ピクサーアニメーションの一つ、『ファインディング・ニモ』。劇中には個性的なキャラクターが多数登場するが、その中でも一際目立つのがマーリンとドリーを無我夢中に食わんと目論むカモメたちだ。このカモメのモデリングは比較的シンプルで眼球も非常に小さく、同じ鳥科のペリカンことナイジェルと比べても明らかに絵柄が異なることが判る。それもそのはず、なにせ他社のデザインをパク引用したからである。

 アードマンスタジオの"The Wrong Trousers"ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』に登場する悪役、フェザーズ・マックロウ。つぶらな瞳とキュンとくる可愛さを持つ一般的なペンギンとは程遠く、周囲に本性を現さずに沈黙を通す邪悪な存在である。このペンギンの存在と終盤の模型列車の場面が印象的な本作は、アカデミー短編アニメーション賞を獲得し、世界中の映像作家に多大な影響を与えたといわれている。そして、ピクサーの一部の従業員にもその影響を受けていたのだった。

 

 今回は逆に、アードマンスタジオ側の敬意(?)が示されている作品。

あらすじ
 ネズミのロディはロンドンの一等住宅地で"ペット"として豪遊する日々を満喫していた。ところが、下水道から飛び出したドブネズミ・シドに生活環境を荒らされたあげく、追い出すまいと仕組んだ計画が失敗し、地下水道へと流されてしまう。その後、路頭に迷う中なかたどり着いたのは下水道に広がるもう一つの街だった....
本編一部


 『チキン・ラン』や『ウォレスとグルミット』の劇場版でタッグを組んだアードマン・アニメーションズとドリームワークスが提携解除する決定打となった作品。日本では2007年の3月に公開予定で独自のポスターも製造されていたにもかかわらず、壊滅的な興行収入で急遽ビデオスルーとなった。

 アードマン・アニメーションズは現在、手描きもCGもコマ撮りも臆することなく扱う世界でも数少ないスタジオだ。『アーサー・クリスマスの大冒険』のような傑作を輩出したスタジオなら、CGアニメの処女作にも多少の期待を寄せてしまうが、本作はユーモアの供給過多による消化不良といった具合なのだ...




互いの強みが悉く相殺されている。

 英国の俳優や英国風のブラックユーモア、アードマンキャラのカメオ出演まで詰まっているのに、マシンガントークの演技や迫力ある映像で展開をゴリ推しているのが残念で仕方ない。『ヒックとドラゴン』より前のドリームワークス作品は基本的に、お喋り野郎が付き物だった。(『シュレック』のドンキーや『森のリトル・ギャング』のRJ、『アンツ』の主人公のZなど)  本作の主人公もその内の一人に当てはまるのだが、彼も周りの世界もコテコテの英国仕立てでどうにもしっこりとこない。 おならやゲップで安易に笑わせようとする場面を観る度に、その思いを強くする。
 
本作には、様々な人種をネズミに当てはめて誇張したり、ファインディング・ニモを劇中に登場させ、冷蔵庫の中にハン・ソロを登場させるといったハリウッド好みのネタが多数登場する。しかし、そのネタを繰り広げる舞台が英国となるとこれまた頓珍漢である。

 リアル調にリアルな質感であれば汚さを笑いに転換させるジョークが成立するが、こちらの場合、ニック・パーク調のネズミにリアルなシミや汚れを演出するものだから、シドが登場するあたりはもう見ていられない。




 そして、この作風の最大の問題点は質を落としたように感じること。ニック・パーク風のモデリングが相変わらず好感の持てるデザインなのは素晴らしい。だけど、彼の絵柄をCG化すると技術的制約が緩くなったと思われ、独自の強みを持つクレイアニメからの安易な脱却を試みたのだと勘違いされやすくなる。

 第一、完全な新規作のCGアニメで敢えてニック・パークの絵柄を採用する必要はあったのだろうか。英国が舞台であることを強調させる材料としても不十分で、彼の絵柄に適当な特殊効果がなされているわけでもない。

 かつて、ドリームワークスの会長・ジェフリー・カッツェンバーグ氏はこんな言葉を残している。

「ディズニーのお題目は“子供たちと、大人の中にある子供心ための映画”だ。だからドリームワークスは“大人たちと、子供の中にある大人心ための映画”を作るんだよ。」

 本作の場合、パロディや人種ネタに注力する余り、子供側が満足し難い作品となっている。かといって、抱腹絶倒の小ネタが満載だとしても大人からはあらすじが予想できる内容で満足し難いのである。

 物語の本筋となる大事件のトリックに、サッカー好きの英国人特有の習慣を擬えたのは巧妙だと感じたが、その後"迫力"を中心にした映像で纏めてしまうのは惜しかった。

 ここまで、散々不満ばかりを述べたが決して駄作ではない。繰り出されるジョークの大半は単体であれば笑える。特に、英国王室をダシに上流階級よりも労働者階級を称賛する場面は最高。また、ヒュー・ジャックマンケイト・ウィンスレットのネズミコンビと対峙するジャン・レノが演じる蛙の絡みが数百年と続く英仏の関係を揶揄したようで見ていて楽しかった。

 Netflix、プライム・ビデオ、DVDで視聴可能。

  

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