私とカートゥーンと鈴と。: 旧吹き替えってなんだろう? Japanese Dubs

旧吹き替えってなんだろう? Japanese Dubs

旧吹き替えってなんだろう?

 80年代のTVを視聴した世代や、DVD以前の映像媒体に触れたカートゥーン好きにとって、海外アニメの鑑賞にはある高い壁が存在することがある。

 それは、旧吹き替えの存在である。

 今回は旧吹き替えの共通の特徴や長所・短所を"主観的に"解説していく。

 そもそも海外アニメの旧吹替とは

 ディズニーの場合 ブエナビスタもとい現在のディズニー公式の吹替でなく、日本国内で初公開された時のものやポニー・キャニオンやバンダイから販売された作品に付属された吹替を指す。なお、ディズニー製作のテレビアニメ(『ダックテイルズ』『チップとデールの大作戦』、『ガミーベアの冒険』等)は除外する。

ワーナー・ブラザースの場合 1996年以降に放映された東北新社版以前の『マンガ大作戦』、『バックスバニーのブンブンランド』等で放映されたルーニー・テューンズを指す。それ以前のものは視聴が不可能に等しいので存在しないものとする。

それ以外の作品 VHSや50-80年代に放映された際に使用されたもの。
現行版の特徴 
 現在の吹替は、基本的にオリジナルの演技を念頭に置いて、瓜二つと思えるような翻訳に徹底している。そのお陰で原語版と比較しても遜色ない出来だ。芸能人吹替が鼻につくことがあっても、大抵は満足できるローカライズとなっている。特に、ディズニー作品を観た観客がミッキーやドナルドの声真似を他国で披露しても、他の国でそのキャラクターだと特定できるのは素晴らしい仕事ぶりだ。

 ルーニー・テューンズ(LT)有するワーナー作品でもオリジナルの雰囲気を忠実に再現している。また、実写映画公開に先駆けて新規に製作されたTVアニメ『スクービードゥー』でも同様に再現されている。

 それが旧吹替だとどう変化するのか?
声優の違い
 原語版の声を意識した現行版に対し、旧吹き替えでは劇団員を中心とした配役で原語版にはない独自のテンポを構築している。そのため、声色でなく外見から導き出されたキャラクター像を意識して配役したように感じられる。

 例えば、ミッキーマウスは裏声の高い音は出さない代わりに、純粋無垢な少年を連想させる声が充てられている。特に、富山敬氏(バックスバニー)のクールながらも貫禄のある声や、関時男氏のアヒルっぽくても聞き取りやすいおじさん声のドナルドダックは、原語版にはないキャラクターの一面を映し出しているといえよう。 
語彙の違い
 現行版は台詞と口の動きの違和感をなくし、子供にも理解できる単語を選別しており、お手本の如く精巧な翻訳がなされている。そのため、親子で安心して鑑賞できる映像作品の入門編のような仕様となっている。

 旧吹替の場合、原語版に比べて台詞の量が圧倒的に多く、アドリブや意訳のようなものが多い。その分、語彙もバラエティに富んでおり、現行版では味わえなかった会話の妙が加わっている。 一例として、『ドナルドの誕生日』という短編を挙げよう。甥たちが貯金箱をドナルドから取り返す場面を見て欲しい。



 旧吹替の方は口数が圧倒的に多く、貯金箱のメロディも言葉が途切れたような直訳でない。そして、貯金箱の鍵を明らかに4回回しているにも関わらず、暗証番号は7・4の二文字だけ。この数十秒間の場面だけでも、双方の目指す方向性が異なることが明白に解るだろう。





ナレーションの存在

 オリジナルを知るもの。または、新規に視聴する中学生以上の方にとって邪魔と感じる存在だ。察しのつく物事をわざわざ解説したところで、意図的に毒を抜いたような印象が強く、子供目線で会話する大人の声に苛立ちを覚えるからである。この問題は、過去にTVで放映された劇場用短編カートゥーン全体に当てはまる。ルーニー・テューンズ(LT)でも例外ではない。現在のデイジー役を務める土井美加氏やバッグス・ダフィーによるナレーションが挿入されているが、ギチギチに敷き詰めたような印象が強く慌ただしく感じる。特に、ブラックな笑いが目立つ(LT)にとって最大級の邪魔者だったといえよう。

 但し、冗談を交えたコメンタリーのような好意的な印象を持つものもあり、一概にナレーションを否定することは出来ない。キャラクターがナレーションを請け負うものであれば、基本的にアドリブ色の濃い演技を楽しめる物が多く、視聴者の好奇心を煽るものとして成立しているからだ。

 7,80年代に放映・翻訳された当時の海外アニメの殆どが、未就学児を含めた児童達に作品を存分に楽しませる目的でナレーションを追加したという明確な理由がある以上、その存在は必要不可欠だったといえる。実際、私が小さい頃は、旧吹き替えの短編を磁気テープが擦り切れるほど見返したし、ナレーションの声を聞いてから笑っていた。

 TBS版もとい『ミッキーマウスとドナルドダック』版でも旧吹替と似たようなナレーションが挿入されている。特に、ミッキーには"少年声"というのは当時の共通認識だと感じられる。なお、このバージョンは東京ディズニーランド開園に便乗した番組で、再放送やソフト化は今日に至るまでない。

 なお、LTでは現行版にも日本独自のナレーションが追加されている。ただLTの場合、物語の展開上必要な最低限の量を、最高に笑える瞬間に添えているため、旧吹き替えのナレーションとは全くの別物である。

 また、ナレーションとは違うが、子供向けに編集された代表例として『トムとジェリー』がある。オリジナルではトムとジェリーは人語を発することはまずない。極稀に、人語を話すことが合っても、決して会話をすることはなく、あくまでそれ自体をギャグとする場合のみである。

"The Missing Mouse"『恐怖の白ネズミ』より
 しかし、日本語版では旧ドラえもんでスネ夫を演じた肝付寛太氏とバートシンプソンやハットリくん、ロボコン役で有名な堀絢子氏がトムとジェリーの感情語を担当している。ナレーションほど作品の雰囲気や面白さはぶち壊してはいないものの、日本国外で認知された”話さない”キャラ像を知るものにとってはこれ以上にない屈辱だろう。

 個人的には、過去に視聴経験のある作品に限定すれば、ナレーションはありだと考えている。オリジナルを尊重することに重点を置くものとしては、見直してもどうもノリについていけないのだ。

 映画に関してはまたいつか。

1 件のコメント:

  1. なるほど、面白いです。
    大昔見たディズニーの短編を自分の子供に見せようと検索したところ、新旧の吹き替えがあると知りました。
    ドナルドなんかは、聞き取りやすい旧版のほうが子供には理解しやすいんじゃないかなと思います…。確かに内容も大分補充して話しているみたいですね。とても勉強になりました。

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