私とカートゥーンと鈴と。: とてもいじわるなキツネと仲間たち Le Grand méchant renard et autres contes

とてもいじわるなキツネと仲間たち Le Grand méchant renard et autres contes

とてもいじわるなキツネと仲間たち
Le Grand méchant renard et autres contes
2017 (仏) 80/100
 フランス映画祭で数少ない日本での配給予定が未定で、個人的に日本での上映を心待ちにしていた作品。 原作は、アニメ映画『アーネストとセレスティーヌ』で監督を務めたバンジャマン・レネール氏の同名の絵本。監督自身の作品の映像化とだけあって、力の入れ具合は前作よりも強い(と感じる)。

⬇英語版


予告篇



あらすじ
~赤ちゃん配達便 編~  
 生真面目なブタは何かといい加減なアヒルとウサギにうんざりしていた。そんな時、コウノトリが「羽根を痛めてしまったので、代わりに赤ん坊を運んでほしい」とブタに頼んできた。豚は始め、彼要望を無視していたが、依頼を引き受けたアヒルとウサギの無謀な計画に居ても立ってもいられなくなり....
~大きい悪いキツネ編~
 ニワトリ達さえビビらない小悪党なキツネは、カブを食べながらひもじい毎日を送っていた。ある日、オオカミの助言でキツネは孵化する前の卵を盗むことにした。その後、計画通りに卵を手に入れたが、彼はニワトリまで成長させてから食べたほうが良いと考えたのだった。ところがことはそううまく運ばないもので...
~クリスマスを救え!編~
 年に一度のクリスマス・イブでもブタの気分は曇り空。アヒルとウサギがどんな馬鹿をしでかすか彼は不安で堪らないのだ。そんな中、サンタクロースを頑なに信じるアヒルとウサギは、うっかりガラスのサンタ人形を粉々にしてしまう。本物のサンタを殺したのだと勘違いした彼らは、罪滅ぼしとして自分たちがサンタクロースになることを決意するが...
 本編は少々特殊な構成となっており、直接関係のない3つのお話をオムニバス形式で公開して、その休み休みに動物たちが切り盛りする劇団の姿を写している。

 3つのお話はあくまでも"動物たちが活躍する演劇"となっておりフィクションだということが強調させている。動物たちに本来備わっている生物学的本能や、本編中の事故・怪我・器物破損に対して怖がってしまう児童達でも安心して楽しめる。


寓話的な側面をシンプルな筋書きと、牧歌的な温かみを持つ独特な水彩画調で淡々と物語は進んでいく。そして、その随所にTVアニメもといカートゥーン的なドタバタが挿入されている。『パンダコパンダ』を見ているかのような親しみと可愛さがあり、懐かしい雰囲気を醸し出している。




 登場する動物達にはひよこを除いてこれといった名前を与えらえておらず、物語の理解を大変容易なものにしている。動物の性格はグリム童話や神話で一般的に広がっていった認識とは正反対なものが多い。そして、皆個性的で微笑ましい。神経質で真面目なブタさんに、無鉄砲でいい加減だけど憎めないアヒルとウサギ。自分の存在を認めてもらいたいがために、冷静沈着なオオカミに従うキツネ。そして、過激な行動が目立つ頼もしい女大将のようなニワトリなど様々。
 


水彩画調のアニメーションは日本やアメリカでいうとどうしても、芸術的要素に傾倒することが多く、高貴で、繊細で、果てしない奥深さを兼ね備えた絵画のようになる傾向がある。ジブリ作品に至っては、コンピューター制御による作業の効率化よりも映像美を優先するあまり、変態的なアニメーション映画になっている。(映像美を追求することも十分素晴らしいが)
 本作の場合は、あくまでも原作の画風を尊重するべく導入されており、水彩画ながらも規則的な配色でスッキリとしている。


 唯一惜しかったのは、劇団という設定が十分に活かしきれてないこと。弱肉強食の世界を表現しつつ、実際には演技だと説明するだけでなく、それ以外の小ネタも用意して欲しかった。劇と劇の間の休憩時間のドタバタをもっと観たかった。それ故に、エンドロールも突如登場した掃除夫で締めくくるのは、納得がいかなかった。

 ほっと一息つけるお勧めの一作。

 なお、本作が公開された際なんと(日本語字幕なし・弁士による日本語解説)という特殊な形態だった。子連れの多い作品でまさかの暴挙が起きたと、上映前の私はかなり不満だった。「台詞が多くて、子供中心の作品で、吹替も字幕もなしなんてフザケてるのか」と。ところが、意外なことに上映開始から10分辺りには私は世界観に浸っていたのだった。勿論、映画内のフランス語の会話に被る形で音声が挿入されていたのはいただけないし、随所で感情のこもった会話を邪魔していた。それでも、牧歌的な温かみのある映像の魅力は消え失せることなく、一時的な補足だけでも満足はできた。

 日本語字幕や吹替版を制作する余裕がないことは、昨今の海外アニメーションの輸入状況から察すれば一目瞭然で、字幕製作が数日で完了する作業ではないことも理解している。しかし、子連れの多い作品に関してはせめて吹替版が欲しかった。百歩譲っても平仮名多めの字幕が必要だった。激しく動く場面を中心に児童の笑い声が聞こえる劇場内と、フランス語話者の観客が弁士を邪険に扱うのを目の当たりにすると、強くそう思う。

 DVDあり(但し、国内・米アマゾンでの取扱はなし)

⬇サントラ

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