私とカートゥーンと鈴と。: 白くまになりたかった子ども L'enfant qui voulait être un ours

白くまになりたかった子ども L'enfant qui voulait être un ours

白くまになりたかった子ども
L'enfant qui voulait être un ours
2002 (仏丁合作) 65/100 サンには成れぬ、誰であれ。
監督 ヤニック・ハニトラップ

 イヌイットは文字を持たない民族であったが故に、民族の知名度とは裏腹に伝承や民話が少ない。(一応、イヌクティトゥット語には文字が存在するものの、外国の宣教師による人工言語のため数えないものとする。)つい最近では、"Never Alone" -Kisima Ingitchuna- といったような特殊な方法で伝統を後世に伝える試みも行われたが、依然としてイヌイット関連の作品というと相当数が限られる。

 今回は、そんな作品の一つ。

※特殊効果や音楽はフランス製作。アニメの根幹ともいえる作画と美術設定はデンマーク製作。題材と制作スタッフの親密性を考慮し、分類は"その他の欧州"とする。

あらすじ 生後間もない赤ん坊を誘拐された人間の親子と、失った子の代わりとしてその赤ん坊を誘拐したシロクマの親子。誘拐された子どもはシロクマから"熊"として育てられていく。ところがある日、実の父親に発見され人間の世界へと連れ戻されることとなり....


予告篇



 まず、良かったのは『犬神』を連想させるシンプルで繊細な水彩画。氷雪の世界で動く描き込みの少ない登場人物たちは親近感が湧く。特に、クマと少年が健気に戯れている場面を見ると思わずほっこりする。また、周辺地域の北欧を舞台にした『ブレンダンとケルズの秘密』や『ソング・オブ・ザ・シー』を担当したブリューノ・クレ氏の楽曲が氷雪の大地をより壮大なものに仕立て上げている。



...しかし、本作は絵柄の印象と実際の内容が大分異なる。

 非人間に育てられた人間のアイデンティティを問う作品は、『もののけ姫』、『ターザン』、『ジャングルブック』、『野生の少年』と数多く存在するが、主人公に待ち受ける運命は上記の作品に比べるとかなり残酷である。事柄だけを並べれば、白くま側に非があるのは火を見るより明らかだ。ところが、子どもの動物への愛着や、クマに一切触れされないと躍起になる実親の姿を見ると、一概にそうとは言いずらくなる。

 そして後半では、幻想的な銀世界を彩る心地いい音楽であったはずの音楽が、クマと人間の見えない壁や重苦しい雰囲気を強調させる音楽に聞こえてくるのだ。

 不満だったのは舞台が現代だったこと。電話やインターネット、味気ないコンクリートのような類は一切登場しない世界で"イヌイットの神話"を描くのに、時代背景を考慮したとこで独自の良さが出るとは到底思えなかったのだ。

 里親、養子経験がある方なら涙腺が緩む秀作。


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