私とカートゥーンと鈴と。: 魔法が解けて Disenchantment

魔法が解けて Disenchantment

魔法が解けて Disenchantment
2018 (米) 85/100
 『シンプソンズ』『フューチュラマ』を手掛けた漫画家マット・グレーニング氏が製作総指揮を務めたアニメーションの最新作。原題の"disenchantment"は興ざめや幻滅、呪いから開放されるという意味。決して某ディズニー映画の続編の題名を捩ったものではない。

予告編


あらすじ

  •  決められた運命から逃れたい王女ビーン、妖精の世界に退屈するエルフのエルフォ、気さくで猫顔の悪魔ルーシー。彼ら三人の夢を叶える大騒動が今始まる...
主な登場人物
①→②→③→
④→⑤→⑥→

王女ビーン①
 TPOを弁えない酒豪の王女。政略結婚に嫌気が差したことで、ひと騒動起こし、その際にルーシーとエルフォに出会う。父親の血を引いているお陰で喧嘩には強いが、残酷なことは嫌い。

エルフのエルフォ②
 挙動不審な男子小学生のような声を持つ成人エルフ。いつもハッピーでキュートな妖精の世界に嫌気が差して、単独で旅立った。彼の目標は未知の世界への探索と経験。見た目が可愛いだけで、結構淫らな一面もあるので侮れない。

悪魔のルーシー③
 とある目的のために、ビーンに取り憑いて(?)いる悪魔。周囲からは変な黒猫として認知されており、正体はバレているようでバレてない。手助けや加勢することがあっても、最終目標の悪事のためのもの。決して彼に心を許してはいけない。

ゾク王⑤の右側の大男
 ビーンの父親にして、ドリームランドを統治する王。

ウーナ女王 ⑤の左側
 ゾグ王の悲しみを癒やすため、そして外交のために結婚した二番目の妻

宰相のオドバル⑥
 ゾグ王に仕える聞き手にして、メインの登場人物の中で比較的常識人。三つ目だが、超人的な能力は持ち合わせていない。

バンティ ④の左側
 ビーンが暮らす王室に仕える召使い。周囲に優しさを振りまくものの、発言の一つ一つに毒が篭っている。



さあ、大騒動の幕開けだ。
 結論から言えば、シンプソンズやフューチュラマ(前二作)に見慣れない方なら、"過激さ"だけで気に入るだろう。鑑賞前までは、(前二作)が怖気づくほど刺激の強い脚本と魅力的なキャラクターを見れるのだと期待していた。しかし1シーズン通してみると、想像していたような作品とは全く異なることに気づく。本作に登場するパロディやブラックジョークは、FOXの検閲局と熾烈な情報戦を繰り広げてきた前二作のような毒気の濃さを売りにしたものと比較しても、明らかに衝撃が薄い。(特定人物の揶揄がないから物足りないだけかもしれないが)

 前者では、身近にある現代社会に意表を突き、超個性的なキャラクターにそれらを代弁させることで、笑わせつつも説得力がある作品に仕上がっていた。後者でも、その思想や概念が1000年後により極端な形で表れていることを笑いにしていた。しかし、『魔法が解けて』では舞台が中世のため、先鋭的な発想や倫理をただ採用するだけでは、流石に無理がいく。現代的な家財道具や商店を、魔術のような非科学的なもので補おうとするのはいい。しかし、それ以外の線引きが曖昧模糊で、酷い時には失笑モノになる。疫病や魔女裁判が頻繁にあった現実の常識と、近現代の幻想叙事詩であるゲーム・オブ・スローンズ、ロード・オブ・ザ・リング等の中にある常識を混合させて欲しくなかった。

 しかし、現代的な価値観が浸透しきった場面での弱点を無視すれば、一般大衆が連想する中世の常識を"disenchant"打ち砕くコメディとして大変興味深いものとなる。そうすれば、希少価値のある書物や装飾品をネット通販の在庫を確認するノリで価値を判定したり、身体全体をいじくり回されば担当医を要求する(セカンドオピニオン)といった場面も気に入るだろう。前二作でもお馴染みのフェイント・ジョーク(1)も冴えており、明確に中世の生活だと悟れる場面でのツッコミは爆笑必至だ。



 また、『シンプソンズ』のホーマーやバート、『フューチュラマ』のベンダーやゾイドバーグのような強烈な印象を残すキャラクターこそいないものの、登場人物は個性的で絵柄に慣れれば好感が持てないキャラはいないはず。雄叫びをあげる狂人こそいないものの、皆喜怒哀楽の感情はひしひしと伝わる。シンプソンズ好きであれば、絵柄を見ているだけで満足できるかも。(個人的には、バンディとエルフォの絡みは最高の名場面だと思う。)


 全編に渡って3DCGが使用されており、デジタル処理の恩恵で画面に登場するどんな物体も描き込みが粗暴なことが全く無いのが素晴らしい。かつて、『フューチュラマ』で高額の制作費による打切りを宣告されたマット氏からすれば、最高の制作現場だったろう。

 たった10話しかない新作に対して、ギネス記録所持のアニメと13年続いたアニメほどの重厚さがないのは火を見るより明らかだ。それでも、シットコムに慣れない方、シンプソンズの絵柄が好きだった方なら退屈することはないだろう。

 Netflixで絶賛配信中。

(1)フェイントジョーク
 誰か(A)が他のだれか(B)に特定の動作をするふりをする。その後、(B)が(A)に関連する物や状況から察して、本当にやる動作を理解する。その一連の行動を笑いの種にしたもの。

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