私とカートゥーンと鈴と。: ビアンカの大冒険 The Rescuers

ビアンカの大冒険 The Rescuers

ビアンカの大冒険 The Rescuers
(米) 1977 70/100

 男尊女卑の社会性に変革をもたらそうと躍起になる方が多いこの世の中で、独立した女性像を打つ出すことにかけては世界一の技術を備えた企業といえば.... そう、ディズニーだ。現在ではあらゆる人種・性別の意見を聞き入れて、その要素を作品に反映させる企業だが、40年以上の前の彼らはむしろ、当時でも問題視される差別的要素を意図的に挿入する企業であった。『ピーターパン』での先住民や当時の女性像の揶揄、『わんわん物語』のシャム猫など他にも様々。

 今回は、色んな意味でディズニーの節目となった作品の紹介。

監督   ウォルフガング・ライザーマン/ジョン・ラウンズベリー/アート・スティーヴンズ
出演 エヴァ・ガボール/ボブ・ニューハート/ジェラルディン・ペイジ

あらすじ

  •  人間達が国連総会を開催するように、ネズミ達にも彼らの"国連"があった。彼らは、人影に隠れて人間の子供たちを救う国際救助救援協会。そこに届いたのは、海水まみれの手紙の入った瓶。宝石商の女主人に軟禁されたみなしごのペニーが助けを求めている。国際救助救援協会は直ちに2匹のネズミ、ハンガリー代表のビアンカと神経質な掃除夫のバーナードを派遣する。果たして、たった二匹のネズミが人間の少女を救助できるのか...?
 ミッキーマウスという象徴的存在を抱えるディズニーとしては、あまり宣伝したくないのかは不明だが、日本国内ではディズニーキャラでもかなりマイナーな作品。但し、『おしゃれキャット』のマリーと同様に、ビアンカのグッズをファッションとして身に着けた人が多い。

 ネズミの国際救助救援協会のハンガリー代表のビアンカと、協会の下働きのバーナードの大冒険。本作はディズニーとっての大きな節目となっている。 


 安直な物語からの脱却
 ウォルト・ディズニーの死後に公開された、1970年の『おしゃれキャット』でも、

1973年の『ロビンフッド』でも子連れにウケの良い勧善懲悪の動物モノで、過去の"ディズニー像"を求める大衆に媚びを売るような映画だった。その証拠に、『おしゃれキャット』から『オリバー~』までの映画の初公開時には、『白雪姫』や『ピノキオ』のような過去の作品を同時上映していた。

しかも、新作を後半に回す形で

 そんな状況にクリエイター側に危機感があったのか、本作の設定は少々冒険的である。動物が主役ではあるものの本筋に人間が深く介入しており、『101匹わんちゃん』以来の現代が舞台の映画になっている。物語はおとぎ話や音楽中心でもなく、実在の施設(ニューヨーク国際連合)が登場するほど現実的だ。また、ヒロインの境遇は決して幻想的でない。ヒロインである少女・ペニーは孤児院で里親を待ち望んでいたが、洞窟内での労働をさせるために誘拐されている。余りに暗いし、子供にはキツイ。




 独立した女性像の構築

 主人公のバーナードは所謂草食系男子で迷信深く情緒不安定。搭乗予定の飛行機が墜落することを恐れて汽車を勧めたり、口調がおどおどしていたりと、頼りない印象が強い。それに対してビアンカは、冒頭で「今はもう男社会じゃないから」と発したり、悪路を物ともせず進んでいく。過去のディズニーキャラクターのイメージにあった"添え物" や"愛情を与える者"といった要素はほぼなく、時代の移り変わりを感じ取れるのだ。敵陣に潜り込む時でさえファッショナブルでいる彼女は、そんなディズニーの意識の変化の表れだと読み取れる。(美しさを保つこと自体が"女性らしさ"だと認識している節はあるものの、1977年ならこれでも先鋭的だったのでしょう。)


 逆に、当時の典型的な女性像が垣間見れるのが本作のヴィランことメデューサだ。『101匹わんちゃん』のクルエラや『シンデレラ』のトレメイン婦人等の従来の女性の悪党には、何かしらの美貌が備わっていた。『王様の剣』に登場するおばはん魔女のマダムミムでさえ、変幻自在の術を披露する途中で美しい姿を見せている。しかし、本作の悪役であるメデューサにそういった美貌は無い。


 彼女の特徴は、おばさん特有の癖や行動を極限まで反映させていること。宝石店で吉報と勘違いして喜ぶ時の手足の震える姿や、厚化粧を拭き取りまつ毛を外す姿は、心に余裕のないケチなおばさんを見ているようで、本当に気持ち悪い。それに加えて、吹替版の中の人が『アルプスの少女ハイジ』のクララと同一人物だと知ると、もうそのギャップだけで気絶しそうほど。

 ここまで嫌悪感を醸し出したアニメーターのミルト・カールは、同業者のマーク・デイヴィスが生んだクルエラ・デ・ビルの魅力的なキャラクター像に対抗して彼女を描いたのだそう。観客に鮮烈なインパクトを与えたという点では、メデューサは確実にクルエラに勝っているだろう。

 なお、本作で違和感があったのは、動物のサイズと邦題。フィクションとはいえ、ネズミとワニとネコ以外の大きさがバラバラなのが終始納得できなかった。また、『ビアンカの大冒険』となっているが活躍の場はバーナードの方が多いので、内容に見合った題名は『バーナードの冒険』か、原題ままの『救援隊』が適切である。

 全体的に陰気で盛り上がりに欠ける場面が多いものの、最終的にはそんな鬱要素も吹っ飛ぶコメディと感動のエンディングが待っているので、ディズニー好きでなくともお勧めの一作。

 

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