私とカートゥーンと鈴と。: Sam and Max アニメ版サムアンドマックス

Sam and Max アニメ版サムアンドマックス

The Adventures of Sam& Max:Freelance Police
(加)1997 50/100
 ティーンエージャー向けの作品が幼児向けに変貌したり、その逆の方向に転ずる作品がある。始めは幼稚園児向けだった『機動戦士ガンダム』がいつの間にか10代かそれ以上の観客に的を絞ったアニメに変わることもあれば、オタク御用達の企業が自社マスコットを幼児向けに展開させることもある。(デ・ジ・キャラット)
そんな現象は日本に限った話ではない。

 今回はそんな現象に苛まれた残念な作品の紹介。



原作コミック
 『Sam&Max』とは中折れ帽とスーツを着た紳士を装う犬と、口裂け女とタメ張れるほどデカイ口を持った暴れん坊のウサギのコンビだ。彼らは私立探偵は似て非なる“ Freelance Police” という組織を名乗り、どんな敵にも御構い無しに、デタラメに、そしてハチャメチャに立ち向かう。1987年にFishwarpという雑誌社からアングラ系漫画として掲載された本作はジワジワ人気が生まれ、1993には原作者が当時在籍していたルーカスアーツでゲーム化がなされる。

 『Sam & Max』の魅力は他の追随を許さない奇想天外さにある。主要人物の見かけや仕草はアメリカンカートゥーンのそれで、海外のテレビアニメに見慣れている方ならありきたりと思うだろう。しかし、彼らの手掛ける事件は大変興味深い。フィリピンの活火山で祀られたカルト教団の邪神を壊滅させたり、海の藻屑と消えたはずのアトランティスを探索したり、某デ◯・スターで暴れまわったり....摩訶不思議な舞台で活躍する彼らからは、マーベルやDCコミック等のヒーロー達とは全く異なる野心的なオーラが漂ってくるのだ。また、強烈なブラックユーモアを交えたウィットに富んだ会話も、アメリカ文化に浸った方ほどハマるはずだ。

 1993年発売の『Sam and Max Hit the Road』は物体を指して動作を支持するポイント&クリック式のアドベンチャーゲームとして大成功した。デイ・オブ・ザ・テンタクル』やモンキーアイランド、グリムファンダンゴ』等のルーカスアーツの名作群と同じ系譜に組み込まれている。それは、原作の画風を崩すことなく滑らかに動くドット絵のフルアニメと、ポップカルチャーのお約束を茶化しつつ、コミカルな仕草で笑わせるゲームで、妙ちきりんなコンビの認知度を高めたのだった。

 一定の認知度があれば、メディアミックス展開でより稼ごうと目論むのは万国共通。しかし、年齢層をずらすのはあまり良い傾向ではない。




 アニメ版にはいくつかの変更点がある。原作漫画やゲームで持ち味となっていた暴力描写やシニカルな台詞の全てが消されている。また、既に根付いていた子持ちの親御さん達からのネガティブなイメージを払拭すべく、【The Geek】という10歳のオタク女子を加えた。作品のテーマも、子供と大人の境目が曖昧に出来る題材に絞られていった。

 結論から言えば、子供向けの改編は既存のファンからは"一応"受け入れられたが、新規層の子供たちには受け入れられなかった。倫理規定ギリギリのアクションや台詞は、ゲームや漫画に負けず劣らずだった。語彙力を豊かにして、よりとんちの効いたサムの語り口は悪くないし、血や銃は登場しないもののマックスは相変わらずだ。"The Geek"も彼らの暴走を止める良き抑制剤として、しゃしゃり出ない程度に活躍している。 それでも、当時爆発的な人気を得ていたポケモンスパイダーマンのアニメに客を取られ、子供たちの人気はそれほど得られなかった。

 素直に笑えるギャグアニメとしての見た目の衝撃も薄く、『ロッコーのモダンライフ』『カウアンドチキン』、『アングリービーバーズ』といった同年に開始したアニメとの差別化が困難になっていた。子供向けに奇妙なもので笑いを取ることは別に問題じゃない。しかし、それは彼らの本来の持ち味が消えたことを意味していたのだった。そもそも、子供向けにしては彼らの会話一つ一つがかなり長く、聞き取れても困惑することが多かった。二度見して内容に納得できる状態は、子供向けアニメでは致命的だった。また、当時シュールやお馬鹿を全面に押し出した『ザ・ティック』TVアニメ版『アースワームジム』と比較しても、妙に優等生振った印象が強くパンチに欠けていた。

 原作再現の努力が報われなかった印象が強い一作。

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