私とカートゥーンと鈴と。: U ~南国の一角獣~

U ~南国の一角獣~

"U" ~南国の一角獣~
(PG)(仏) 2006 60/100
監督 セルジュ・エリザルド
原作 グレゴリー・ソロタレフ
楽曲 サンセヴァリーノ
出演 バーナード・アラーネ、ジャン・クロード・ボレ・レダット、モード・フォゲット 

 トータリースパイズ・ワクフ・ミラキュラスなど、最近は日本人受けする可愛らしいデザインの仏産アニメーションが多数輩出されており、衛星放送やケーブルテレビ局で徐々にその存在感を増している。この状況は個人的に大変好ましい状況なのだが、最近某アニメーションの講義において、それらを基準に仏アニメの歴史の全てを解説する 知り合いを目撃してしまった。Animeやカートゥーンの影響を受けた作品だけで満足する方は、こんな作品には見向きもしないだろう。

 今回はそんな作品。

予告編(フランス語)


あらすじ

  •  荒れ狂う海原の脅威に晒された城で暮らす犬・モナ。ドブネズミの盗賊によって彼女は王女でありながら、その面影は時が経つに連れて消え失せていた。そんなある日、モナは小さなユニコーン"U"と出会う。彼女はモナの幸せにするために同居することとなったが...
エジブト出身フランス在住で、レバノンやロシア向けに児童書を中心に執筆していた影響からか、ロシアアニメに近いキャラクターデザインが目立つ。しかし、その周りの背景美術や筋書きはいかにもなおフランスといった具合の映画だ。


 本作の監督、セルジュ・エリザルド氏が手掛けた作品で、日本国内の映画祭以外で公開されたアニメーションはまずないと思っていたのだが、意外にも一作あった。トゥーンディズニー(現在のディズニーXD)で番組と番組の間を埋める短編アニメだ。

 "1 minute in a museum"『美術館での一分間』と題されたそれは、美術財団とフランス国営放送からの依頼を受けて制作された由緒ある教育アニメで、芸術に疎いでも気軽に楽しめるだろう。因みに、ルーブル美術館公式アカウントで一話だけ日本語版が配信されているので、お暇な方は是非どうぞ。









『両替商とその妻』1514年発表 クエンティン・マサイス(ルーヴェン、1465‐1466年‐アントウェルペン、1530年)


 話を元に戻そう。

 淡く境界線のない水彩画の空や大地に広がるのは、人間の知らない未知の動物たちが暮らす南国の桃源郷。魑魅魍魎に近い造形のケモノたちが、時に協力し、啀み合いながらも、懸命に生きている。水彩画は背景に余白を残しつつ、温暖な気候と時折登場する抽象化された空想を大変見事に演出している。


 静止画だけを見ると、独特な作風と鼻のあたりの丸みが邪魔に感じるかもしれない。また、ユニコーン以外の登場のキャラの描き方が江戸時代の魑魅魍魎を思い起こすものと類似している。

 しかし、本作のユニコーンは処女の象徴であり、物語の陰で進む彼女の恋愛模様は青春を謳歌するイケイケな高校生のそれより数段甘酸っぱいものに仕上がっている(と思う)。ユニコーン"U"とモナの女子会のような会話と、"U"が一目惚れした猫・パラモアに告白する場面は必見だ。




 キャラクター達は悪役側を除けば、皆自由奔放ながら優雅に暮らしている。ここでいう"優雅"とは、時間に縛られることが常にあるホワイトカラーの望みを言い表したものである。アニメ版『銀河鉄道の夜』からリストラされたような猫・パラモアは、黒い帽子を被って弦楽器を軽やかに奏でるし、メインのお姫様も貴族らしい生活を嗜んでいる。なお、脚本そのものには目新しい展開ことはない。裏切られたようなどんでん返しや、突飛押しもないオチもない。可もなく不可もなしだ。

 健気で純粋なティーンエイジャーっぽいユニコーンを求める方に是非。

 なお、いい映画の題名とは、短く、簡潔でいて、内容に添ったものだという。だからといってただ短ければいいというものではない。なぜなら、最悪の場合その映画を発見することさえままならないからだ。youtubeに貼られた予告編のコメント欄には、皮肉交じりに"U"と検索したらこのページに辿り着いた」と書き込む方が多かった。それ故に、本作をインターネットで検索するのも一苦労。imdbや腐れトマトで情報を閲覧するにも、どれがそうか区別する手段もなかった。英語字幕付きの映像を発見したときには、それだけで私は疲れ果てていた。

 英語字幕版DVDあり。フランス語音声・字幕なしならオンライン配信あり。

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