私とカートゥーンと鈴と。: 2つのスパイvsスパイ Old and New Spy vs Spy

2つのスパイvsスパイ Old and New Spy vs Spy

スパイvsスパイ Spy vs Spy
1995,2010-2013 (米)
 

    "SPYvsSPY"『スパイアンドスパイ』それは、東西冷戦化を端的に示したキャラクターである。日本ではとりわけファミコンソフトが有名で、馴染みのある方なら彼らをヘッケルとジャッケルと呼ぶだろう。しかし、それはゲーム会社が無関係のアニメのキャラクターから引用して独自に命名しただけである。つまり、彼らに名はない。

 共産主義の波に乗らずにアメリカへと亡命した漫画家・プロヒアス。2018年現在でも発行されている風刺漫画雑誌【MAD】で掲載され、漫画家を変更しながら今でも連載し続けている。

原作漫画の一例
登場するのは、基本的に白スパイと黒スパイのカラスのみ。西と東、アメリカとロシア、善と悪とも読み取れる彼らは、スパイであるという情報以外はない。ただお互いに情報を盗み取るために、罠を仕掛け、憎むべき敵として行動する。喜怒哀楽を示すためにクスクスと笑うことはあっても、会話は一切しない。彼らはカートゥーンの法則に則り、爆弾で吹き飛ばされ、高所から突き落とされ、巧妙な罠に引っかかり、塵屑に成り果てる。


 そして、何事もなく次の話で生き返り、また繰り返す。

 『トムとジェリー』やルーニー・テューンズの『ワイリーコヨーテとロードランナー』などのコンビは、大抵勝者と敗者が定まっている。トムが勝利することもなくはないが、『トムとジェリー』では基本的にトムの仕掛けた罠をジェリーが難なく切り抜けるという構図が完成されている。しかし、こちらの場合は、どちらが勝つかは完全なランダム。政治諷刺として見た場合に、作者が公平に茶化していることが読み取れる。また、ギリシャ神話で卑怯者のレッテルを貼られた代表的な動物、カラスを用いているのも特徴的だ。

 ウブな青年・女性には一話完結のギャグ漫画として、政治やゴシップに飢えた年配者には諜報員の活動を徹底的にコミカルにした笑いのネタとして、本作は支持されてきた。

 そんな本作は何度か映像化がなされている。一つ目は、本作が掲載されたMADを題材にしたコメディドラマ、【マッドTV】のミニコーナー。二つ目は、マウンテンデューのきぐるみを使用した実写CM。三つ目はテレビアニメの【MAD】内の寸劇として。

 今回はそんなスパイvsスパイの映像化作品の比較をしていく。




旧版
FOXで放映 MADTVシーズン1~3(1995~1997)

 NBCの看板番組【サタデーナイトクラブ】に対抗すべく製作されたコメディ番組【マッドTV!】。1995年から2009年までに14シーズンに渡って放映された本作では、実写の寸劇やライブコント、短編アニメ、ミュージッククリップなどで構成されていた。その内のミニコーナーの一つがSPYvsSPYだ。類似の形態を持つアニメとしてはFOXの【トレイシー・ウルマン・ショー】内の『ザ・シンプ ソンズ・ショート』や、TBSの深夜番組【ぎみあぶれいく】『笑ゥせぇるすまん』がある。 なお、こちらの方は日本のFOXでも2005年辺りまでは放映されていた。

 50,60年代のカートゥーンを彷彿とさせるブレや古臭さを残しており、まさに白黒版『トムとジェリー』といえる。アニメ自体はリミテッド方式なのだが、時折フルと見紛うほど滑らかに彼らが動くこともある。新版と比べて原作雑誌の雰囲気はあまり感じられないものの、痛快で滑稽でシンプルだ。番組内のミニコーナーとしての存在は新作と変わり無いが、その放映時間や重要度は桁違いである。与えられた放映時間は新版と比較しても二倍近く長い。スタジオ内にいる観客にもアニメを鑑賞させるライブショーの形式を採用したため、新版とは異なり良くも悪くも冒険的でないのもプラス。老若男女がお茶の間で楽しむという点では、こちらを勧めたい。 



新版
カートゥーン・ネットワークで放映 MAD(2010~2013)
  【マッドTV!】の終了に伴い、原作雑誌を出版する親会社のタイムワーナーが所有するテレビ局、カートゥーン・ネットワークで再出発する形となった。トークショーとしての雰囲気を重点に置いた旧版に対し、こちらは原作雑誌のユーモアをCGや手描き、コマ撮り、クレイ、カットアウトな
ど様々な表現技法を用いて徹底的に再現している。

 旧版のMADTV!の実写コントで顕著だったおバカな雰囲気と、ひたすら"MAD"なイラストを掲載し続ける本家の雑誌の雰囲気をアニメで再現したのがアニメ版【MAD】だ。但し、番組全体では、時事的な題材に触れ過ぎた影響で劣化版『ロボット・チキン』と本国アメリカで非難轟々であったり、MADの毒気が消え失せた幼児向けと批判されることの多かった。そんな中でも"唯一"原作から逸脱していないと感じさせるのがこの新版だ。
   如何なるポップカルチャーにも対応できるポテンシャルを持った番組としては、旧作よりも魅力的である。話数が増えていく毎に、映像はシャープに、ギャグはより複雑に、そして洗練されており、メインディッシュの箸休めとして最高の出来栄え。劇中のBGMは旧版よりも単純化され、彼らの行動はハッキリとした癖を残しながら、張り詰めた緊張感をより増加させている。

  但し、初期のシーズンでは”アニメイト“のいき過ぎた簡略化が災いし、旧版・後期シーズンと比べると明らかに劣る。動きの単純さが旧版と比べて目立ち、手抜きのFLASHだと錯覚するほどチープな印象を受け易かった。また、原作雑誌マッドに馴染みがない方には、その無秩序でシュール過ぎる世界観に嫌悪感を示すかもしれない。逆にその"無秩序"な作風が本作の魅力の一つでもあるのだが。




 マッド誌に親しみがある、小・中学生でも楽しめるおかしなギャグが観たい方には新版。ファミコン版のゲームに遊び呆けた、キャラクターが好き、セルアニメ通の方には旧版がお勧めだ。
旧版収録← 新版一部収録→
 

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