私とカートゥーンと鈴と。: ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ! the Wrong Trousers

ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ! the Wrong Trousers

ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!
Wallace and Gromit the Wrong Trousers
(英) 1993 99/100 一秒の空きもないサスペンス。

 '94広島国際アニメーションフェスティバル。秀作傑作が勢揃いする2年に一度の映画祭で、ある短編が映画祭の冷め切った空気を打破するほどのスタンディングオベーションを浴びたという。それは、後にアードマン・アニメーションズとニック・パークの国際的地位を高める作品になっていった。

 今回はそんな作品。 

 発明家のウォレスと忠犬のグルミット。主人と飼い犬というよりは、立場が対等な二人組と説明した方がわかりやすい。クレイアニメにかけては世界一の制作規模を誇るアードマン・スタジオが手がける『ウォレスとグルミット』シリーズ。本作はシリーズ第二作目である。彼らの説明はこちらで。

本編一部(一部ネタバレあり)


あらすじ

  •  今日は記念すべきグルミットの誕生日。プレゼントは手綱と首輪、そしてNASA開発のテクノ・ズボン。ところがそんなお高い買い物が災いし、家計は火の車。ウォレスは仕方なく下宿人を迎えることとなり、やってきたのは一頭のペンギン。ゴマすり続きの彼の行動にウォレスは気に入るが、グルミットは不満げで...
 前作『チーズ・ホリデー』では、日帰り旅行を壮大に描いただけで宿敵と呼ぶに相応しい悪役は存在しなかったが、本作には大変印象的な"ペンギン"が登場する。それが、このフェザーズ・マッグロウだ。


 首を極端に傾げることも、表情を変えることも、グルミットと同様に声すら出さない、可愛いというより気味の悪いこの ニワトリペンギン。その正体は指名手配中の大泥棒。赤いとさかに見立てたゴム手袋に騙された警察は、彼をニワトリと勘違いしている。ヒッチコック映画に登場する"下宿人"を彷彿とさせる小柄な姿は、見た目以上に凄然としている。そして、彼の存在によってフィルムノワール調の陰気な空気により磨きがかかっている。

 完全犯罪を得意としていそうな極悪非道のペンギン君だが、可愛い一面も見られる。作品の中盤でマッグロウが宝石を盗み出そうとする場面。赤外線センサーで厳重に保管された宝石をウォレスの遠隔操作によって盗む計画は、賢そうで実はかなり無茶苦茶でお間抜けだ。グルミットの愛読書を徹夜漬けで熟読して、科学的な知識を蓄えてテクノズボンを魔改造する姿からは、邪悪さがにじみ出ている。しかし、宝石強盗に四苦八苦するその姿は、顔色一つ変えないくせに大量の汗を吹き出させていて、かなり人間味がある。特に、警報が鳴り出した後に窓から脱出している場面を見ると、何と回りくどいことをしているのだと思うはずだ。

 本作で驚愕すべき点は、クレイアニメだという事実を一切感じさせないこと。人間が細工した手の指紋の形跡、固定されたカメラワーク、芸術・哲学的な筋書きに傾倒しがちなストーリー、その全ての要素が真逆で常識外れだった。粘土の質感とは思えないほどお淑やかで活発に行動するウォレスとグルミットの姿は、今のご時世ならCGアニメと間違われてもおかしくはないだろう。




 物語の粗を敢えて突くなら、テクノズボンそのものに問題があるだろう。ウォレスの発明の才は、暇つぶしにガラクタをかき集めている爺婆の玩具とは全く異なり、かなり実用的で本格的なカラクリが多い。日帰り旅行で二人乗りのロケットを製造できる行動力と知識があるのに、わざわざNASAから散歩グッズを購入する必要はないはずだ。が、大した欠点でもないのでそこには深く触れないでおこう。


 フェザーズ・マッグロウとグルミットが列車の模型の上で繰り広げるハラハラ・ドキドキの追跡劇は是非その目でご覧いただきたい。できれば、動画サイトのクリップを見ずに、本編を通して見てもらいたい。私は今もなお記憶を消してでも、あの興奮を味わいたくなる時があるのだから。



なお、本作のペンギン君は続編の『危機一髪!』、『ベーカリー街の悪夢』、スマホ用ゲームにちょこっと登場するので、気になった方は確認してみよう。

  

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