私とカートゥーンと鈴と。: 夢と魔法と狂気の世界。『アンとアンディーの大冒険』

夢と魔法と狂気の世界。『アンとアンディーの大冒険』

アンとアンディーの大冒険
Raggedy Ann& Andy A Musical Adventure
1977(米) 60/100
監督 リチャード・ウィリアムズ
製作総指揮 リチャード・ホーナー
      スタンリー・シルズ
脚本 パトリシア・サックレイ
   マックス・ウィルク
原作・原案 ジョニー・グルュール
主演 クレアウィリアムズ
    ディディ・コネ
    マーク・ベイカー
音楽 ジョー・ラポソ
撮影 ディック・ミンガロネ(実写部分)
    アル・レジェク(アニメーション部分)
編集 ハリーチャン
    リー・ケント
    ケン・マクイルワイン
    マックスウェルセリグマン

 『ピンクの豹』のオープニングアニメやアラビアンナイト』、『ロジャーラビット』の作画監督・監督を務めたアニメーター、リチャード・ウィリアムズ氏の劇場用長編アニメ第一作。

予告篇


あらすじ

  •  可愛いマーチェラの持つ"Raggedy(もじゃもじゃ)"ラガディ・アンとその仲間達は、彼女宛の誕生日プレゼントに興味津々。中身を覗くとそこには美しいフランス人形のバベットがいた。ところが、彼女はマーチェラの家やラガディに不満げで、故郷のパリに帰りたいと言い出す。その様子を垣間見た海賊の船長はバベットに一目惚れし、アンを騙して彼女を誘拐してしまう。そして、アンとアンディは彼女の跡を追って窓から飛び出していき...


 6,70年代の長編アニメーションはテレビ用・劇場用に関係なく衰退期に差し掛かっていた。それ故に小中規模の映画作品でない一般向けの映画において、制作側が全年齢向けでないアニメーションに挑むことは不可能に等しかった。少しでも過激と思われれば、公開前に経営・出資者から無慈悲な推敲を受ける羽目になるからである。

 その影響からか、大手でない会社のその時代の長編アニメーションは何かと奇天烈でおどろおどろしい。G指定だから失礼な言葉も銃も血もないが、鑑賞後に受ける衝撃は蜂の巣にされた死体を見る時よりも強烈だ。

 人形の持ち主のマーチェラが登場する場面では実写映像になり、持ち主が部屋を出るとアニメへと変わり人形たちが動き出す。実物を置いた場面からそのままアニメーションにシークエンスが移動する場面は大変自然に描かれている。『宇宙戦艦ヤマト』『ビアンカの大冒険』が公開された1977年という時代背景を考慮すると、ここを見るだけでも大変丁寧な仕事が施されたのだと実感できる。ただ、アニメ内でのアンとアンディが五頭身なのに対し、実際のぬいぐるみが三頭身だったは少し残念。

 同じくぬいぐるみから始まるアニメのディズニー版『くまのプーさん』では、少年の想像の世界の中にぬいぐるみと少年がいる設定だが、こちらでは人間と玩具の世界は完全に隔離されている。玩具が大活躍すると聞くと『トイ・ストーリー』のような冒険劇が有名だ。しかし、本作は基本的に音楽を中心とした"ミュージカルアドベンチャー"であり、臨場感のある物語を期待するものではない。



 本作で注目すべきは、セサミストリートの音楽を手掛けたジョー・ラソポの音楽と、リチャード・ウィリアムズが得意とする奇妙奇天烈な世界観にある。

 ミュージカルアニメーションと題名に付けるだけあって、3分に一度は誰かが歌い出す。このあたりは正直ミュージカルに耐性がない方には辛い部分があるが、情緒不安定で暴走気味の映像を落ち着かせるもののあり、害だと感じるものはないので安心。

 箱庭で撮影したと勘違いするほど立体的なカメラワークも去ることながら、それを彩るボロ布人形の冒険劇はまさに驚異的。海賊にフランス人形が誘拐される前は比較的落ち着いており、登場するたびに歌い出すブリキ人形の二人組を除けば序盤は無難な子供向けだ。しかし、持ち主の子ども部屋からアンが飛び出した後からは、何が登場しても不思議ではない混沌の場と化す。

本編の抜粋②




 冒頭五分で登場する歌い踊る二体のブリキ人形に、主人公たちを手助けするラクダが織り成す幻覚に近いミュージカルシーン、地底に住むドロドロのグリーディの登場シーンなど...  数え上げたらキリがないほど不気味な場面が存在する。一度見たら子供達だけなく大人でもトラウマ体験を植え付けそう映像なのだが、その分怖いもの見たさで目が離せなくなるだろう。


 それに対し、脚本自体は寄り道なしの王道で意外性はない。新入りの玩具を救うための旅で、自分の存在を再認識し、誘拐犯の海賊をやっつけるというシンプルな筋書きとなっている。"自分が何者か"を問いかける部分においては『トイストーリー』が伝えたいメッセージと重複するものの、涙腺が弱い方なら思わず涙を流してしまうかも。まあ、作画からの膨大な情報量で脳が麻痺しそうなのに、どんでん返しのある内容じゃあ、子供達がついていけないよね。

 よく薬物中毒者は"大量のドラッグよりも快感の絶頂を味わえるものが、この世には沢山ある"と言うが、この映画の製作者はそういったものを間違いなく服用しているはず。もししてないなら、どうやってこんなドラッキーなアニメーションをどう実現できたのか尋ねてみたいものだ。

本作に登場する人形が気になる方はこちらから http://www.annandy.net/wp/

海外版VHS・DVDあり 日本語字幕・吹替は共に視聴不可。
  

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