私とカートゥーンと鈴と。: CNの始まりを告げたワンちゃん達 2 Stupid Dogs

CNの始まりを告げたワンちゃん達 2 Stupid Dogs

トゥーストゥーピッドドッグス 2 Stupid Dogs
(米)1993-1995 50/100
原作 ドノヴァン・クック
監督 ドノヴァン・クック
構成 マーク・サラセニ
キャラクターデザイン ボブ・オノラート
音楽 ヴォーン・ジョンソン
製作 ハンナ・バーベラ・プロダクション

 『アドベンチャー・タイム』、『スティーブン・ユニバース』等今もなお、国内外に絶大な支持を持つアニメ専門局カートゥーンネットワーク(以下CN)。今回は、その始まりを告げる記念碑的作品の紹介。

 ハンナ・バーベラ・プロダクション(以下HB)はアメリカン・アニメーションの黄金時代を担った名匠ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラの二人が設立したスタジオで、米国におけるテレビアニメーションの先駆者的存在だ。経費削減の目的で導入されたリミテッド方式の恩恵を受けて、珍犬ハックルやクマゴロー、原始家族といった作品で一定の成功を収めていた。ところが、テレビの規制や保護者から避けるための過剰な配慮や、変わり映えしない物語によって"テレビアニメ"としてのアニメーションの質は低下する一方だった。

 特に、1980年代で人気を得ていたテレビアニメは既存のIPを再利用した作品か、日本や欧州の影響を受けた作品が殆どだった。HBでも新規作で支持を得ていたのは、バンドデシネ原作の『森のスマーフ』『スノークス』"Snorks"ぐらいで、準米国産は悲惨な状態だった。

 しかし1990年前後、ケーブルテレビ局の台頭やアニメの制作陣が多文化(主に日本)の影響を受けたことで、アニメーション業界は再び黄金期の如く活気づくこととなる。『ロジャー・ラビット』でカートゥーンに魅力に取り憑かれたスピンバーグは、その延長線となるテレビアニメ『タイニートゥーン』や『アニマニアックス』を製作し、ティム・バートン監督のバットマンの影響を受けつつ若いスタッフを多く起用した『バットマン』"Batman The Animated Series"を製作する。CNのライバル局の一つ、ニコロデオンでも米国当時既に有り触れていた日常ものを洗練させた『ダグ』に、子供向けの限界線をゆく傍若無人のカートゥーン『レンとスティンピー』など、親近感の湧く設定に斬新なアプローチを施した名作・秀作を輩出していた。

 そしてHBは、その流行の中で米国が歩んだテレビアニメの歴史を継承した事を示すカートゥーンを輩出することなった。彼らは1991年にターナー・ブローキャスティング・システム(TBS)に、1995年にワーナー・ブラザース有するタイム・ワーナーに吸収されることとなった。つまり彼らは、バッグス・バニーに代表されるルーニー・テューンズとアニメ専門局・CNの両方を自由に扱う権限を得たも同然の状態だった。

 繰り返される動作や背景、珍妙で滑稽な動作、徹底されたキャラクターデザインで相手を笑わせるノウハウに長けたHB出身の年配者と、カルアーツ等の芸術大学から卒業したての若手スタッフの手で生み出されたのが本作『トゥーストゥーピッドドッグズ』である。

オープニング





 小柄でお喋りなリトルと大柄で無口のビッグの二頭の日常パート①と、60年代のテレビアニメのリメイク作品『超秘密探偵クルクル』②パート、そして女々しい狼や方向音痴の赤ずきん、そして目元までヒゲの剃り跡のあるおじさん等の脇役と主人公達の絡みを描いたパート③の3部構成となっている。

 過去作品のリメイクと聞くと、新作の視聴者を増やすための阿漕で露骨な手段だと思われるだろう。7,80年代のディズニー低迷期に、ディズニー映画の新作と古典的名作を抱き合わせで同時上映したように。しかし、片方に傾倒するほど作品への努力や質が極端なことはないのでご安心を。

 二匹の動物コンビのドタバタ劇、デフォルメされた動物、お馬鹿な仕草、という要素が特徴的で余計だと感じる場面は殆どない。本編での背景を覗いても、肖像画や印象派の美術館で飾られるような綺羅びやかものではなく、キャラクターデザインに相応しいシンプルで馴染みやすい。米国産とはいえ平面的で、下品さや表情の際どさで客を釣ることもないので海外アニメに慣れない方でも気分を害する事なく見れるだろう。

 起承転結こそ単純明快なものの、ジョークはパロディだらけで、その全てをキャラクターの造形を崩さずにとことんお馬鹿に見せている。例えば、第六話の③パートでは赤ずきんちゃんと3匹の熊をひたすら面白可笑しく見せている。但し、その可笑しさは子供心に反応するものが多く、皮肉や風刺のようなものを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。とはいえギャグを繰り出すテンポも良く、酷く退屈することはないはず。①ではその皮肉めいた要素を除けばあまり変わらない。

 ②の超秘密探偵クルクルは旧作と比較すると大きく方向性が変更されている。高性能な捜査キット悪党を懲らしめるという基本的な設定はそのままだが、クルクルから飛び出す武器や小道具を披露するのが見せ場だった旧作に対し、こちらはしっかりと彼の携わる事件そのものが見せ場になっている。また、新版は動物キャラのみで統一されているのもいい。

 制作陣には、クレイグ・マクラッケン(パワーパフガールズ、フォスターズ・ホーム)やゲンディ・タルタコフスキー(デクスターズラボ、サムライジャック)、デビッド・フィース(カウアンドチキン)やロブ・レンゼッティ(ミーナと伯爵、ジェニーはティーン☆ロボット)、ポール・ルーディッシュなど後のCNを支えるクリエイターが集結している。なお、監督のドノヴァン・クックはゲンディやロン・レンゼッティらと同様に、カートゥーンネットワークに入りたての新人である。ただ彼の場合、『ミッキーの王子と少年』製作後に退社し、その数年後にディズニーへと逆戻りしている。そのため、どちらかといえば彼の趣向はCNとはかけ離れている印象がある。

 過去作品の魅力を継承し、現代向けに改良を加えた秀作。

 なお、本作はカートゥーンネットワークを傘下に収める(TBS)系列での放映履歴があるだけで、実質的にはCN作品にはカウントされないハンナ・バーベラ作品である。

本編一部


 

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事