私とカートゥーンと鈴と。: 世界一元気なペンギン、ピングー。"Pingu"

世界一元気なペンギン、ピングー。"Pingu"

ピングー Pingu
(瑞西・英)1986~2000,2000-2006
原作 オットマー・グットマン
脚本 シルヴィオ・マッツォーラ
声優 カルロ・ボノミ (1990-2000)
   デイビッド・サン(2003-2006)
   マルセロ・マグニ(2003-2006)
製作国スイス(1990-2000)
   イギリス(2003-2006)

 まだDVDが一般的に普及する以前はVHSが主流で、ブラウン管テレビが寿命を迎えるまでは随分と世話になった。そんなVHSの中でも特に思い出深いアニメーションの一つが、『ピングー』だ。

 『ピングー』は1986年から2000年までの間、第1シリーズから第4シリーズが製作された作品だ。ユニークな世界観で活躍する可愛いペンギンの日常はスイス国内のみならず世界各国で放送され、絵本や玩具などの関連商品も多数生産された。

 日本では90年代前半にテレビ放映がなされた後、ソニー・ミュージック名義でVHSソフトが数本販売されていた。当時は、副題として"世界一元気なペンギン"と付け加えていた。個人的には素晴らしい副題だと思う。幼少期には、手作りの妙を存分に感じられるこの『ピングー』をテープが擦り切れるまで見返していた。

本編一部


 ピングーを彩る大事な要素の一つに、独自言語のピングー語がある。言葉に関する解説や翻訳は全く無いので、何を話しているかはさっぱりだ。しかし、彼らの身振り手振りで言いたいことは一通り理解できる。また、喜怒哀楽を共有できることで、国籍を問わずに楽しめるアニメーションとなっている。

 会話の内容が理解不能になる類似のアニメとしては『ウサビッチ』が代表的だ。あちらでも日本人の場合は"ピングー語"のような未知の言語として受け取れるが、実際には会話や背景に雰囲気を醸すためのロシア語が挿入されただけである。


 なお、ピングー語をいちから創り上げたのはイタリア人俳のカルロ・ボノミである。巻き舌を頻繁に使うイタリア語の発音から誕生したピングー達の会話は、初めの頃には新鮮に聞こえ、次第に病みつきなる。インターネット上で拡散されている大量の空耳字幕の画像が、SNSで頻繁に見かけるのもその兆候の現れだと言える。ただ最近、小・中学生あたりの子供でも"空耳字幕"で茶化し、本家の存在を完全に無視しているのを多々見かけるようになった。そういうネタは身内の隅でやるべきであって、Tw◯tterやInst◯gramで使用するものじゃない。



また、『ピングー』登場するキャラクターは皆個性的で、際どい発言も捻くれ者も存在しない、南極だけど"温かみ"のある世界観が特徴的だ。例えば、ピングーの友人のオットセイ・ロビは彼の陣地でも魚を横取りすることなく、彼が釣り上げた魚はちゃんと返してくれる。ピングーの妹・ピンガが産まれた時でも、やさぐれたピングーの姿に気づけば、両親は気配りを欠かさない。アイスホッケーの試合で戦った意地悪なライバルにも、最低限の敬意を払っている。どんな動物でも歓迎するピングーの世界は優しさに満ち溢れているのだ。

 コメディアニメにはトラブルが付き物。ピングーは花瓶をボールで壊してしまうことや、お決まりの叫び声を発して喧嘩をすることもある。でも、そのたびに反省して仲直りする。そして、類似のネタを決して使用することがない。二度とその過ちを侵さないのが素晴らしい。

 そして何よりも、クレイアニメーション(粘土アニメ)として、極めて自然に動くのが最高だった。

◯個人的にクレイアニメには2つの側面が表裏一体で露呈していると思う。一つは、手作り感に溢れて滑らかに動くような"優しさ"を持つもの。もう一つは、クレイアニメの存在感を活かした"屈強でおどろおどろしい"もの。クレイアニメはキャラクターのモデルに時間と労力を費やすほど、映像に滑らかさとしなやかさが備わっていく。逆に、明確なキャラクターモデルが形成されないままだと、無機質で、酷く不気味な状態となる。
◯以前書いた『ゴッグズ』や、女給仕が電動ノコギリで悪霊をぶった斬る痛快アクションアニメ『チェーンソーメイド』①はそのマイナス点を最大限に活かした傑作だが、造形が明確に整っていない分、かなり気持ち悪い。あのウォレスとグルミットの『チーズ・ホリデー』でさえ前半は今見ても少し恐怖を感じる。学生作品を除いた自主制作のクレイアニメで怖さを感じないものは大変貴重だ。





 それらを考慮した上でもう一度鑑賞すると、ピングーがより魅力的に映る。よちよち歩きで動いて、ラッパ口で叫んで、健気に笑うその姿は、まさにペンギンキャラの玉座み居座る”皇帝ペンギン"そのものだ。

 ところが、2001年に制作拠点の親会社が破産し、ピングーに関する全ての資産をイギリスのヒット・エンターテインメント社に売却されてしまう。その後、製作された第5シリーズ・第6シリーズ及びミニシリーズ『ザ・ピングーショー』は映像の質は格段に向上していた。しかし、ピングーとその周りの家族との触れ合いでなく、ピングーが繰り出す面白可笑しいギャグを全面に押し出されていた。しかも、旧来のピングー語とは似ても似つかない謎の声が追加されており、かつての面影が消えてしまっていた。

 更に悪いことに、再放送やビデオ販売の際に権利上の理由で、お気に入りだった過去の作品のBGMや劇中のセリフの殆どが変更されてしまった。そのため、いままでのバージョンの観賞は大変困難な状態になっている。倒産寸前に発売されたDVDの初期のシーズンが旧版のままなのは不幸中の幸いだった。

 昔ながらのピングーの新作を鑑賞したい思う今日この頃。
⬇旧版① ⬇新版②

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