私とカートゥーンと鈴と。: ビジネスマンの強〜い味方、ディルバート。 Dilbert

ビジネスマンの強〜い味方、ディルバート。 Dilbert

ディルバート Dilbert
1999-2000 (米) (TVPG) 70/100
今日も仕事はしないけど、給料は貰うよ。

原作 『ディルバート』著 スコット・アダムス
製作 スコット・アダムス
   ラリー・チャールズ
監督 リック・デル・カルメン
   ジェームス・ハル
テーマ曲作曲 ダニー・エルフマン
製作総指揮 スコット・アダムス


 今から20年ほど前にちょっとしたブームを巻き起こしたビジネス書籍があった。その名は”Dilbert”『ディルバート』。経済学者兼イラストレーターのスコット・アダムス氏が連載するコマ割り漫画で、今もなお連載している人気漫画だ。

 優秀だけど同僚に恵まれないシステムエンジニア(SE)の職場を、不条理に、辛辣に、そして"滑稽に"描いた職場風景はSEを中心とした会社員/オフィスワーカーに大いに受け入れられたという。日本国内では、Macの特集雑誌に英文と訳文を添えた状態、いわば漫画版ピーナッツに近い形態で連載されていた。

 現在でも『MediaIT』のコラムの一環として細々と新作が更新されているが、リアルタイムで購読していた90年代後半~'00年代前半の日本のディルバート愛好家の中でアニメ版の存在を把握していたのはどれほどいたのだろうか?

 ディルバートの漫画は上記に記載した通り、一つの出来事に冷静なツッコミが入ったような漫画の集まりで、アニメ化には適さない。丸みのあるシンプルなデザイン自体は映像化に打って付けで、ドッグバートやキャットバードといった現実離れしたキャラクターも多い。しかし、購読者は若くても精々高校・大学生で、メインはアニメには毛ほども興味のない30代辺りの社会人がほとんどだった。

 淡々としたユーモラスな笑いを30分のアニメで継続させるのは容易ではない。大人向けカートゥーンとしても完成作品を見るまでは、これをどうやってシットコムとして成立させたのか全く予想できなかった。

オープニング


 電話回線を軸にインターネット接続を行う、いわば"ダイアルアップ"が主流の職場ではあるものの、ディルバートで掲げられる問題提起は2018年の現代でも十分通用する。いくら情報端末が発展しようと、社会に変革が齎されようと、会社の最終損益が膨れ上がろうと、生身の人間が職場に屯している限り、"ビジネス"のあり方が劇的に変わらないことをディルバートとその仲間達が教えてくれる。

 感情に流されず、威圧的な指導で相手を困惑させず、上司のあてつけをスルリと避けるディルバート。冷静沈着な陰の帝王とも呼べる超人的頭脳を兼ね備えたドッグバート。手柄を立てずとも、実績を挙げずに問題を起こさなければ、無能でいることな可能なことを教えてくれる無能なボス。その他個性豊かな面子が、ビジネスワークの不完全な部分を紹介してくれる。

 原作漫画では経済学者とイラストレーターを兼任するクリエイターのスコット・アダムスの論評というイメージが強かった。実際、経験していないと笑いに直結しないことが殆どで、書類整理に明け暮れる年配者の方々には好評でも、フリーランスや学生には"どこが面白いか"を説明しても理解を得ることが難しかった。

 アニメ版は、『サザエさん』のように原作の4コマを話題に共通するように再構成した形である。オープニングの映像は当時最先端のトゥーンレンダリングで躍動感溢れる映像に仕上がっているものの、本編では昔ながらの伝統的なセルアニメなので注意。特に当時では、『ザ・シンプソンズ』の製作総指揮ことマット・グレーニング氏の『フューチュラマ』のように、3DCGを用いた豪華絢爛な映像を差し込むことで、視聴者の期待感を煽るオープニングが増加傾向にあった。(まあ、本作とフューチュラマは期待を裏切らない作品ですが...)

 原作との大きな違いは、主要人物の会社に対する貢献度だ。【追加された仕事を押し付けられたとしても、給与に反映されないなら仕事をしない】という具合に、原作漫画では下っ端従業員の本音を中心に描いていた。トップページの画像はそれを象徴したメッセージといえる。しかし、アニメ版ではその怠惰な行動が嘘かと疑うほど、会社に"目に見える形"で多大に貢献している。現実社会では起きるはずのない大災害をオフィスで描く故の弊害と思えば、その違和感も消えていくだろう。

 例によって日本語字幕版は存在しない。しかし、英語圏の作品の中では比較的聞き取りやすく、視覚的な笑いも盛り沢山で英語が余り堪能でない方でも十分楽しめるはずだ。お勧めの回は、世界中で混乱を招いた2000年問題を取り上げた第一期第十話の『Y2K』。未曾有の危機に困惑し、問題解決に奔走する社員と、何が起きたのかを知ろうともしない浮かれ気分の上司、そして内容からは予想だにしない終盤の臨場溢れるアニメーションは見応え抜群。

 原作に興味のない一般層でも楽しめる、SEが主役のコメディアニメ。

 原作の邦訳版はこちらから。←SNSやパワーポイント崇拝者など、日々変化する職場事情にも対応した最新版。

 原作再現に拘る方はこちらをどうぞ。(2010年版) ただし、淡々と漫画の情報を語るだけで"映像化"による付加価値は無きに等しいので注意。

①原作本 ②邦訳版 ③アニメ版

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