私とカートゥーンと鈴と。: どんな際物にも"例外"は付き物。『OH! スーパーミルクちゃん!』

どんな際物にも"例外"は付き物。『OH! スーパーミルクちゃん!』

 ※基本的に純国産のアニメーションは紹介する予定はありませんでした。しかし、【アダルトスイム】の特徴を解説するには、必要不可欠なため、特例として加えました。
...なーんつってな。


 【アダルトスイム】は以前から申し上げているように、海外産の大人向けカートゥーンと日本の深夜アニメ、少年向けアニメを無修正&無編集で放映する番組枠だと解説した。ただ、実は過去に一回だけ日本の"ANIME"海外産の大人向けカートゥーンとして放映されたアニメがあった。それこそが、今回紹介する『OH! スーパーミルクちゃん!』もとい『The Super Milk Chan Show』である。

日本版公式カバーアート
北米版カバーアート

 日本国内ではフジテレビ系列を始め、スペースシャワーTV、WOWOW等の有料放送局を経てシリーズ化された経歴を持つ、知る人ぞ知る超絶キュート&シュール&ブラックアニメ。右も左も分からない純粋無垢な当時11歳の女子小学生に、"舞台裏でも言わせたらマズい単語を何百回と言わせた" 罪深きアニメ。チョーさんの演じる大統領や、倦怠期真っ盛りのアリンコ夫婦、発明品をボロクソにこき下ろすアイパッチ博士等、個性の強すぎる面子が勢揃い。 ローカル局の裏番組を彷彿とさせるチープなミニコーナーなど、どす黒い毒電波が凝縮されたような危険なアニメだった。

 キャラクターの大衆性と内容の過激さの落差から察すると、時たま元祖『ポプテピピック』なんて意見も聞くが、実際には方向性も視聴者の層もかなり異なるので注意。

 90年代辺りのアメリカであれば、国産よりも採算が見込める安い商品としてアニメの放映権を購入し、子供向けの限界線から外れた要素を適当に削ぎ落とせば問題なかった。だが、『Oh! スーパーミルクちゃん』に限って言えば、その方法はまず不可能だ。4KiDsエンタテインメントやキッズWB、FOXキッズの愚行とも称される原作レイプの編集行為をいくら行おうと、このアニメの魅力がより増すことなどまずあり得ない。

 日本文化に根付いたマイナーなネタを片っ端から投入したアニメで、それを行使すれば間違いなく評判も興行も悪くなるだけだ。最近でも、DC×鷹の爪団という禁じ手をワーナー・ブラザーズとDLEとの合作で完成させている。ただ、海外展開の動向が"先行き不透明"となのは、正直言って迷走しすぎている。タイム・ワーナーの系列であるが故に、このミルクちゃんの北米版には全く期待していなかった。

 ところが何の奇跡が起きたのか、はたまたアイパッチ博士の発明品の効果からか、『The Super Milk Chan Show』は見事日本語版の魅力を継承することに成功していた。

北米放映当時のCM①②③

 特筆すべきは、本家の魅力を継承した"高品質なローカライズ"にある。シュールで雰囲気を醸したアニメーションは日本では所謂"脱力系"、"日常系"に属される。ただでさえ
都合良く稼げる商品として輸入してきたアニメの演技が杜撰なのに、“HENTAI”と揶揄される危険性の高いそれらを、精巧に翻訳するのは困難を極めていた。

 日本のドラマ・アニメ・映画では話題作りの一環で他業種の方を採用する傾向が強く、それを批判する方が大勢いる。逆に、アメリカ合衆国では映画と相対的にアニメーションの価値を軽視されていた。国産のアニメでさえ7,80年代の作品は聞くに耐えないものばかり。その影響は現代でも、大金を投じるには余りにリスキーな"ANIME"に強く表れている。

 大半の英語吹き替え版のテレビアニメはリスニング教材の英会話が有名俳優の名演技だと錯覚するほど、陳腐で耳障りだ。AKIRAやドラゴンボール等の支持された作品でさえ、初公開時の演技の精度は担当班に「このアニメの吹替の責任者は誰だぁ。」と言われても仕方ないほど酷かった。海外在住のオタク"Otaku"や日本文化に狂信的なウィーブー"Weeaboo"が字幕版と吹替版で熾烈な戦いを繰り広げているのも、これで納得がいくだろう。


 『The Super milk chan show』には英語翻訳(Adult swim)版①とアメリカ独自仕様(Anime Network)版②の二種類存在する。アダルトスイム版では原作の台詞の一つ一つを丁寧に翻訳しているものの、アメリカ人には到底理解不可能な日本の俳優・政治家・サブカルネタをそのまま投入している。英語圏の観客から言えば、そのネタの際どさは理解しづらかったはずだ。ただ実際には、日本発のおどろおどろしいユーモアが炸裂した"何か"としてカルト的な人気を築けたらしい。

 そして、Anime Network版では、実車の画像から『きのこバター炒め』に至る"非アニメ"要素を全て別のものに置き換えている。AN版②には実写の寸劇の突発的な雰囲気を再現するために、"実写映像を新規に別撮りする"という荒業を成し遂げている。

 主人公のミルクちゃんを務めるのはヒラリー・ハーグ『フルメタル・パニック』テレサ・テスタロッサ役、『ガールズ&パンツァー』カチューシャ役が代表的だ。アメリカのANIMEの大半は2,3回の収録で済ませようとするほど、演出を磨こうとする努力が無く、俳優の演技が堪能なものであっても、経済的余裕がないため結果的に酷い演技となるのだ。ただし、ミルクちゃんの場合、日本語版で演技経験の浅い小学生が声を当てていたこともあり、一応"アリ"な演技となっている。

 アイパッチ博士の発明品、テツコはバージョンごとに声優が異なる。Anime Network版では、当時まだ新人のモニカ・ライヤルが演じている。彼女は高校・大学で演劇を卒業し、映画の研究と演技経験を学んだ彼女の演技は、"ANIME"吹替を担当する声優の中ではかなり自然。脚本家・プロデューサーとしての経歴に注目されやすい彼女だが、実写映像での彼女のはっちゃけぶりは一見の価値あり。

 逆に、アダルトスイム版でのテツコ役はマーシー・バナーが演じている。英語版『火垂るの墓』の西宮のおばさん役での出演経験があるものの、日本版にあった可愛げが薄れて、澄み切った機械音から合成したような安直さが目立つのが残念。

 他のキャラクターの説明は割愛。

 個人的には、演技として成立しているAnime Network版よりも台詞の正確さを重視したAdult swim版がお勧め。堪能な演技よりも、深夜帯で脳内の細胞が麻痺するような映像を楽しむ分には、曖昧な演技の方がカオスになる傾向があるからだ。また、anime network版はオンライン配信もDVD販売もないため、実質的に視聴不可だからだ。

 有料放送での電波系のアニメは本作品以後、大量に米国への輸入がなされたものの、ここまで編集された作品は後にも先にもない。現在のAnimeの発展ぶりを見ると、またこんなカオスな奴を見てみたいと思う今日はこの頃。

(Adult swim版)

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