私とカートゥーンと鈴と。: トムとジェリーの大冒険 Tom and Jerry : the Movie

トムとジェリーの大冒険 Tom and Jerry : the Movie

トムとジェリーの大冒険 Tom and Jerry : the Movie
1991 (米)  8/100
監督 フィル・ローマン
原作 ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラ『トムとジェリー』
出演者 リチャード・カインド、デイナ・ヒル、アンディ・マカフィー、シャーロット・レイ、トニー・ジェイ、エド・ギルバート、デイビット・ランダー、ヘンリー・ギブソン、リップ・テイラー
音楽 ヘンリー・マンシーニ
制作会社 ターナー・ピクチャーズ、フィルムローマン
配給 ミラマックス

予告編


 タイム・ワーナー設立以前のターナーグループが製作したアニメーションは地雷率がすこぶる高い。というのも、メディア界の重鎮テッド・ターナーが不必要にアニメ製作に関与してきたからだ。『フェリックス・ザ・キャット 魔法の島』『ローバー・デンジャーフィールド』同様に経営者側がアニメを軽視した形跡が伺える本作は、日本語吹き替え版の存在を含めても擁護しようがないほど既視感の強い駄作である。

 幼稚園児や小学校低学年の頃であれば、可愛らしい猫とネズミが登場する笑いと涙と感動の一大巨編と捉えることもあったが、今はとなってはそんな幻想に浸れるほどの作品愛は存在しない。そもそも、劇場用の短編アニメとして活躍していた古典的キャラクターを長編映画として再登場させる試みそのものが無茶苦茶なのだ。

 トムとジェリーというコンビは日常を反映させた7分半のドタバタ喜劇に特化しているだけで、長編・中編には向かない。ギャグの応酬を基本とする短編だから魅力的に映るのだ。キャラクターイメージだけが先行して製作された7,80年代のテレビアニメですら、テレビ画面に齧りつく子供たちを騙すことができなかった。それなのに、同じことをやっても失敗するだけ。

 物語も至極単純で深みも独創性も皆無に等しい。



 インディ・ジョーンズのシングルファザーを待ち焦がれる孤児のロビン・スターリン。彼女の遺産金目当てに執念深く付きまとうフィグおばさんと弁護士。飼い主を失ったトムとジェリーが出逢う大型犬パグジーとノミ、犬のギャング団。パグジーを捕獲するアップルチークとその手下。フィグおばさんが飼うスケボー犬。その他諸々....数多くの登場人物・キャラクターがいるものの彼らの関連性は薄く、物語の尺を限界まで引き伸ばす為に、捨て駒を追加投入しただけで、誰一人感情移入できない。

 また、全体的に既視感が強く、設定を意図的に模倣した節が多数見られる。『ビアンカの大冒険』のメデューサと『リトル・マーメイド』のアースラを足して2で割ったようなフィグおばさん。児童誘拐&監禁とその救助方法の設定は完全に『ビアンカの大冒険』から引用したとしか思えない。また、焼け石に水をかけるかの如く、本家とは全く関係のないインディ・ジョーンズを登場させるのはあまりに哀れ。良い要素を寄せ集めても良いものが完成するわけではない。

 制作陣がやったのは、スーパーマーケットに陳列する栄養剤全て投入して、それを一人で一気飲みして下痢を引き起こしたことと同じだ。

こんな悲惨な状態の映画に参加したヘンリー・マンシーニ氏はどんな境遇だったのだろう。『ピンクの豹』、『ティファニーで朝食を』『料理長殿、ご用心。』等の名作の音楽担当をなされた方の遺作がこれでは報われない。しかも、徹底的に尺を引き伸ばすための材料として使用されたため、折角の名曲も無残な姿となって演奏される。曲単体はそれほど悪くないものの、頻繁に使用されるせいで聞くに堪えない。

日本語吹き替え版なら上記の弱点を払拭できるかと思いきや、そんなことはなかった....

 堀綾子さんはテレビアニメでも活躍していたから分かるが、トムの声は正直慣れない。
堀綾子さんを採用するなら、肝付兼太さんがいなきゃ吹替の意味がない。そのうえ、何の変哲も無い凡作に更に泥を塗る形で芸能人起用をかぶせてくるのは、もはや拷問である。小林幸子さんのおばさんの演技も迫力がなくぎこちなさが目立つ。なお、私は声優業を担った俳優や芸能人を責めているわけではなく、配給元の松竹を非難しただけなので履き違えないように。

 ほんと、なんで『ロジャー・ラビット』に出演させなかったんだよ....

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事