私とカートゥーンと鈴と。: オカルト・ホラー・コメディの風雲児。『おくびょうなカーレッジくん』 Courage the Cowardly Dog

オカルト・ホラー・コメディの風雲児。『おくびょうなカーレッジくん』 Courage the Cowardly Dog

おくびょうなカーレッジくん
Courage the Cowardly Dog
1999-2002 (米) 92/100
原案・監督 ジョン・R・ディルワース
企画 ロバート・ウィンスロップ(一期)、ウィニー・チャフェー (二期~四期)
音楽 ジョディ・グレイ、アンディ・エツィリン

 カートゥーン・ネットワーク(CN)のオリジナル作品は基本的に二種類に分割される。CN直結のアニメ(デクスターズラボ』,『パワーパフガールズ』,『ビリー&マンディ』等)と、中小規模の別会社と共同制作したアニメ(『エドエッドエディ』『KNDハチャメチャ大作戦』『アドベンチャー・タイム』等)がある。

 今回はその後者にあたる作品の一つの紹介。

 本作の製作総指揮を努めたジョン・R・ディルワース氏は1963年生まれ。22歳の頃にニューヨークの視覚芸術専門学校を卒業したものの、アニメーターとは無関係な広告会社に就職する。しかしその後も、彼は仕事の空き時間を利用して個人製作のアニメを続けていった。1991年には【Stretch Films】を設立し、ニコロデオンのテレビアニメ『タグ "Doug"』のオープニングやセサミ・ストリート、MTV等の放送局向けのコンテンツを制作していった。その後の1993年には彼の作風を決定づける短編が誕生する。それが『Dirdy Birdy』である。

 その二年後には、CNの新人発掘番組『ホワット・ア・カートゥーン』向けにある新作を提供した。それが『おくびょうなカーレッジくん』のパイロット版こと、『宇宙ニワトリの侵略』"Chicken From Outer Space"。なお、パイロット版に登場する宇宙ニワトリは、原作者が『ペンギンに気をつけろ』ペンギンに感化されてことで誕生したという。
 なお、このパイロット版は原作者の公式サイトで視聴可能。

公式本編


 本作で特徴的なのは4つ。

 自由奔放で情緒不安定な映像表現

 This manが思わず画面の隅から挨拶を交わしてきそうなほど不可解で予測不可能な怖さ。基本的には2Dの手描きアニメーションで展開されるが、背景美術は実写映像の静止画から抜粋したような現実感がある。主人公に襲いかかる魑魅魍魎もCGキャラクターだったり、作者本人だったり、コマ撮り、クレイ等...  多種多様な演出が披露される。そして、平和な状態の時は例外だが基本的にBGMに統一性がないのも特徴的。

 お伽噺で時折見られる恐ろしい表現を、包み隠さずに表現している。

 懸命に飼い主を護るカーレッジくんの勇姿

 小心者だとか臆病者なんて言葉は不適応だと感じるほど、彼の行動力は凄まじい。ミュリエルの膝で延々と座ることこそが彼の至福の時間。飼い犬を甘えさせるミュリエルを横目に亭主関白のユースタス。

 無頓着で周囲の驚異に気づかずに危険な目に合う老夫婦を、カーレッジ君が懸命に助けようとするカーレッジくん。彼を応援したくなるのも本作の魅力の一つ。力自慢で解決できるなら筋肉トレーニングで隆々としたマッチョな身体になったり、とんちで解決できるなら実力行使は行わない。そして、言葉を殆ど発しない(日本語版は例外)ワンちゃんとは思えないほど感情表現が豊か。...その大半はボディランゲージではあるが。



 視覚的・精神的恐怖のオンパレード

 ホラーコメディの海外アニメといえば、ドリフ大爆笑のようなお約束的展開が目白押しの『スクービードゥー』を連想する方も多いかもしれないが、こちらのホラー描写は本気で怖がらせようとしている。

 下品で気持ち悪いことを徹底的に問い詰めた『レンとスティンピー』でも、スパニッシュホラーと下品さが融合した『ビリーアンドマンディ』でも、衝撃的な場面はアニメの作風に沿う表現が一般的だった。ところが、『おくびょうなカーレッジくん』の場合、極端に残酷で猟奇的でなければ何でもアリである。

 肥えた豚の亭主が人肉料理を提供したり、二足歩行の猫がペットの蜘蛛のために人間の餌を探したり、人間に寄生する水虫に憑依されたり、バナナが支配する未来世界に飛ばされたりと.... 文面だけなら、子供に"辛うじて"読み聞かせられるような内容なのが素晴らしい。
 
 個人的トラウマ回はハムスターがミュリエル達を掃除機に詰めて実験室の鼠と同等の扱いをする話。【ジャービル博士の世界】のBGM①は"リアルタイム鑑賞時、三日三晩夢で流れてめちゃめちゃ怖かった覚えが...
⬇①


 昭和時代のカートゥーンを彷彿とさせる吹替の妙

 原語版のカーレッジ君はびっくりするほど無口だ。「ぎゃあああ!!!」だとか「あああああ!!」とかの「あう~ん」等の絶叫が聞こえてくるものの人間の言葉は殆ど話さない。ところが、日本語吹き替え版では、カーレッジ君が感情を"文字通り"爆発させるたびに、絶え間なく喋りまくる。怖いものが苦手な少年少女への配慮なのかは不明だが、グロテスクと捉えらえ兼ねない表現を、大袈裟なギャグとして受け取れらせるための演出の一つなのだろう。

 無料公開された初期のエピソードでは駄洒落や叫び声が少々物足りないが、回を重ねる毎にアドリブ色全開のセリフの量とキレが増していく。

 旧吹き替えの項でも言及した本来の魅力を損なうものでなく、より一層魅力的に仕上がっている。サブタイトルや劇中の会話に至るまで駄洒落で覆い尽くされた本編は、日本語話者の外国人にも勧めたくなる。

 そのため、日本語訳されたサブタイトルだけで満足してしまう話もあり、"とっぺんぱらりのぷう"と話の締めに口遊みたくなるほどローカライズの癖が強い。そこが素晴らしい。

 大抵のCN作品は有料放送局の再放送を待つタイプが一般的であるが、幸いにも本作品はアルバトロスフィルムからDVDが発売されている。海外アニメの中では視聴ハードルが比較的に低いのでおすすめ。

①国内盤 ②オンライン配信 ③北米盤

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