私とカートゥーンと鈴と。: W・アンダーソン節炸裂の総天然色絵巻物。『犬ヶ島』 The Dog of Isle

W・アンダーソン節炸裂の総天然色絵巻物。『犬ヶ島』 The Dog of Isle

犬ヶ島 The Dog of Isle
2017 (米) 85/100
監督・脚本 ウェス・アンダーソン
原案 ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン、野村訓市
製作 ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、スティーヴン・M・レイルズジェレミー・ドーソン
出演者 コーユー・ランキン、ブライアン・クランストン、リーヴ・シュレイバー、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、渡辺謙、野村訓市、F・マーリー・エイブラハム、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、グレタ・ガーウィグ、スカーレット・ヨハンソン
音楽 アレクサンドル・デスプラ
撮影 トリスタン・オリヴァー
編集 レイフ・フォスター、エドワード・バーシュ
配給 フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
製作国 アメリカ合衆国、ドイツ
言語 英語、日本語

予告編


 これは"ぎこちない"近未来の日本を堪能する映画であり、内容の矛盾や展開の不甲斐なさ、そしてステレオタイプ的な描写に茶々を入れる作品ではない。

あらすじ

  •  近未来の日本。大都市の一つ、メガ崎市では【ドック病】の蔓延していた。感染した犬たちを隔離する目的で小林市長は、全ての犬を“犬ヶ島”という名のごみ溜めへ追放することを決定した。そんなある日、12歳の少年が単独で小型飛行機とその島へと共に墜落した。彼の名はアタリ。市長の養子として愛犬・スポッツとともに育った孤児だ。彼は、そこで出会った勇敢で訳ありな五頭の犬たちスポッツの探索を始めたのだが...
伝染病の蔓延した犬が犇めく”猫“公方のパラレルワールド。病気持ちの犬が登場する長編アニメーションと聞くと一瞬“Plague Dog"『疫病犬と呼ばれてのような悲劇的な映画を想像しそうだが、そんなことはない。

 妙に捻くれているものにただならぬ好奇心があり、それを擽ぐらせるこの監督の作風に私は酔いしれやすい。 ウェスアンダーソン監督の代表作を映画好きの方に聞くとこぞって『グランド・ブタペスト・ホテル』と応えるものの、アニメ最優先の投稿主には遠い存在だった。『ファンタスティック・MrFOX』で監督の存在を知ったにわかファンではあるものの、厄介者や社会ののけ者を否定的にも肯定的にも描かない彼には惚れ惚れする。

 以前映画祭で気になった短編にて、「映像技術が先走りした作品は大嫌いだ」と書いた。しかし本作品に関しては、仮に突飛押しもない展開や結末があっても、"日本語が不自由だけど日本文化に陶酔した外国人が創り上げた"という実績だけで、もう文句が付け辛くなってしまう。

 個人的に、本作の平行世界の日本描写はどことなく江戸川乱歩作の『怪盗二十面相』と似ていると思う。【西洋の価値観やポップカルチャーに影響され、共有し、支配されたのが日本の現代社会】と当てはめれば、"西洋的"文化の影響を受けなかった近未来として㍋先市が映るからだ。

 『犬が島』の舞台の日本は、技術や常識だけなら日本の現代社会でも通用するようにデザインされている。留学生を含めた外国人の扱いや、流行り物や命令に"パブロフの犬"の如く従う一般大衆の描写は、それを痛感させるものだった。その描写に対比される形で、少年アタリとゴミ島に投棄された犬達は友情を育んでいる。

 ところが"近未来の日本"と仮定すると余りにも非現実的である。本作では絵巻物や和太鼓、神社の境内、寿司御膳等の室町~江戸時代中期を彷彿とさせる描写と、中日ドラゴンズ似せた野球チーム、焼き鳥、ハピースナップ、酒場、手術室、金髪碧眼の留学生、五右衛門風呂等の昭和レトロを彷彿とさせる描写が複雑に入り組んでいる。

 ファンタスティック.MrFOXではコマ撮りによって社会の除け者を描いていたが、この『犬が島』ではコマ撮り以上にぎこちない【日本文化の闇鍋】によってそれを描いていたのだ。


 自分を懸命に護ってくれた忠犬スポッツを探しに単独でごみ溜めに赴いた少年アタリの片言の日本語に最初は戸惑うものの、㍋先市市長の周囲にいる従業員や研究員の【極めて自然な】日本語には驚きを隠せない。特に手術場面の会話のシーンは必見。中日ドラゴンズ似せた野球チーム、焼き鳥、ハピースナップ、相撲、寿司、酒場、手術室、五右衛門風呂等 ...その他日本らしい小道具の描写にはただただ脱帽モノだった。

 犬を撲滅させまいと軍隊までも派遣させる市議会の役所人間の描写は、意図的に"古臭い伝統的な日本"を思いださせる演出の効果もあり、より憎たらしく、胡散臭い存在へと仕上げている。

 なお、日本語吹き替え版は言語的情報量の圧倒的過多に戸惑うはずだ。本作では【英語は犬たちと外国人・日本語は日本人】と区別している。劇場公開時、私は間違えて吹替版を最初に鑑賞してまったため、情報量の多さに困惑し、目眩がした。

  

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