私とカートゥーンと鈴と。: Ce magnifique gâteau! マグニフィセント・ケーキ!

Ce magnifique gâteau! マグニフィセント・ケーキ!

Ce magnifique gâteau!
マグニフィセント ケーキ!
2018 (白・仏合作) 44分 80/100
使用言語 オランダ語・フランス語・アカ語(一部のピグミー族の母国語)・マリンケ語、etc...
制作会社 Beast Animation (BE), Vivement Lundi ! (FR), Pedri Animation (NL).
監督 マーク・ジェイムス・ロエルズ&エマ・ドゥ・スワーフ



 アニメーションに限らず、映像業界の歴史における黄色・褐色・黒色人種の描写はステレオタイプから始まってきた。登場人物の性格を位置づけるデザインだろうと、それらしい造形を保とうと、機械の歯車の如く人間を侮辱した形跡が残る描写をした時点で、言い逃れはできない。どんな人種であろうと偏見や差別は付き物。アイヌ民族や琉球人の存在を無視して、一概に単一民族国家と自負する日本国も例外ではない。

 近代以前の文学作品を読めば読むほど時代錯誤の差別描写は腐るほど登場するH・バンナーマンの『ちびくろサンボ』、R.キプリングの『ジャングル・ブック』、M.トゥエインの『トム・ソーヤーの冒険』、R・ダールの『チョコレート工場の秘密』、エルジェの『タンタンのコンゴ探検』などはその代表例。サンボに関しては、現在では絵本の中の小洒落たユーモアとして納得させたものの、残りの4つは怪しさ満点。それ故に、現代に近づけば近づくほどポリティカル・コレクトネスの概念が広がるのも当然なのだが、意外にもディズニーだけは退廃的な思想を持ち合わせていた。愚痴をこぼすと話が止まらないので詳しくはこちらをどうぞ。

 題名の"Ce magnifique gâteau!"は、分断されたケーキの如く、西洋諸国が土地を分断し支配した歴史を揶揄したことを示している。

 本作の舞台は世界史でも登場する暗黒大陸の代表国、ザイールとその周辺(現コンゴ民主共和国)である。ベルギーの植民地支配を受ける現地に暮らす五人にスポットを当て、そこに関わる全員をオムニバス形式で描いている。全体像から彼(女)が主役だと言及することはないものの、その地域を描写する方法として非常にうまく作用している。

 最近の大手のコマ撮りアニメに見られる複数の物体で勝負する圧倒される映像ではなく、本作は全体的に穏やかな音楽と微かに動く人形で物語を語る作品である。しかし、負の歴史の重圧感を回避すべく積極的に採用されたブラックユーモアの影響で、日本人には馴染みにくいものだった。

 まず、アフリカ大陸における植民地支配云々は国内の義務教育の範疇でなく、余程興味のある方でない限り記憶にも残らないであろう。捕虜はともかく、奴隷に関する言及は精々、エイブラハム・リンカーン大統領の南北戦争や黒人奴隷開放がクローズアップされるだけだ。それ故に、表現規制を食らうのが決して不思議ではない描写がてんこ盛りであっても、その部分に感銘を受けるのは相当な物好きか、受験戦争に明け暮れた世界史選択の文系や教育関係の方ぐらいだろう。

 ピグミー族の言語の極限まで追求した会話や、首にロープを巻き付けて白人をカゴを用いて担ぐ場面、赤いたらこ唇のない黒人、血液こそ微々たる量でも絵面では破壊力満点の奴隷の死亡シーンなど、悲劇を正確に描写しつつユーモアでその刺激を緩和していたのが素晴らしかった。題材から想像するドキュメンタリー風味の映像でなく、しっかりと娯楽として印象づけ、過激な部分を敢えて"現実的"に映すことで歴史問題に関心を持ってもらう試みにも成功している。

 コマ撮りの表現もウール素材で肉付けされた人形達を巧みに操り、目が極端に小さくても身振り手振りと会話で観るものを飽きさせない。

 音や会話だけで事実を黙認するような誤魔化しが一切ない。そう深く感じた一作。

 

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