私とカートゥーンと鈴と。: ドン・ブルース凋落期の始まり。『子猫になった少年』 Rock a doodle

ドン・ブルース凋落期の始まり。『子猫になった少年』 Rock a doodle

子猫になった少年 Rock a doodle
1991 (米主導,英,愛合作) 15/100
監督 ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン、ダン・クエンスター
脚本 デヴィッド・N・ワイズ
原案 ドン・ブルース、ジョン・ポメロイ、デヴィッド・J・スタインバーグ、デヴィッド・N・ワイズ、T・J・クエンスター、ゲイリー・ゴールドマン
製作 ドン・ブルース、ロバート・エンリエット、ゲイリー・ゴールドマン、ジョン・ポメロイ
製作総指揮 サミュエル・ゴールドウィン・Jr、ジョン・クエステッド、モリス・サリヴァン
出演者 グレン・キャンベル
音楽 ロバート・フォーク

 ディズニー映画の一般的なイメージ。それは、無難で、子供向けで、可愛いものが画面狭しと積み込まれていること。それはディズニーに留まらず、アニメーション全体を指すこともあった。その世間での認識は常識へと変わり、長期間に渡り業界関係者に悪影響を及ぼしていた。

①1994年ラジー賞受賞作品

 例えば、1994年に公開されたドン・ブルース監督の『おやゆび姫 サンベリーナ』①の試写会では、親子連れの観客を中心とした構成で、反応は最悪だったという。ところが二度目の試写の際に、配給元のワーナー・ブラザースのロゴをディズニーのロゴへと変更したところ、絶賛の嵐だったという。つまり、90年代のアメリカの観客にとって映画で観るアニメーションとはディズニーのみを指し、一般大衆は内容の良し悪しに関わらず"ディズニー"のアニメを要求していることの表れだった。

 今回は、そんな"ディズニーっぽい"非ディズニー映画の紹介。

予告編


あらすじ

  •  ニワトリのシャンテクレアは、その美声と優れた歌声で太陽を登らせる者として農場の動物たちから人気を集めていた。ところが、他の動物たちが彼の歌声無しでも朝が来ることを知ると、彼を詐欺師呼ばわりした。その後、それからは雨が降る日が続き、太陽が苦手だったフクロウ侯爵一味が勢力を拡大していき...
どこで狂った、ドン・ブルース。

 歌う雄鶏にスポットライトが当たるアニメーション映画は、ディズニー社内で何十年にも渡って企画されていた。白雪姫や不思議の国のアリスと並んで長編映画の候補に上がることや、ロビンフッドの直接的な原作にあたる『狐物語』の番外編として企画会議に挙がることもあったが、いずれもお蔵入りとなっていた。

 ロビンフッドのナレーション役として登場する雄鶏の吟遊詩人はその名残とも言えよう。『王様の剣』でも当初は雄鶏中心で語られる予定であったが、人間中心で展開させた方がアニメーターの負荷が軽減されるといった理由で却下されたという。

 ディズニーの経営陣に嫌気が差して退職したドン・ブルースにとっては、ディズニーに出来ないことを我先に実践するつもりだったのかもしれない。しかし、『アメリカ物語』や『リトルフット』『天国から来たわんちゃん』等の秀作・名作とは違い、本作は他人の企画に一枚噛んだような状態で製作した影響で散々な出来に....

 基本的な物語は、太陽の召喚に欠かせない雄鶏を呼び戻して農場の平和を取り戻すというもの。ただし、無駄に複雑で、無駄に大袈裟で、無駄に豪華なので、終始困惑するだろう。『ロジャー・ラビット』の圧倒的成功を見たドン・ブルースは実写とアニメーションの融合を軸とした物語を製作するのは分かるが、これはない。冒頭部分では雄鶏の役目と歌唱力をフル・アニメーションで至極丁寧に紹介しているものの、余りにも陳腐。

 単純な物語を印象的に見せるために演出で時間をかけるなら申し分ない。こちらの場合、無駄な会話や動きで尺稼ぎしているだけ。爽快感は序盤の画面縮小をピークに薄れてゆき、物語への関心は中盤に差し掛かる頃にはほぼないだろう。『魔法の剣キャメロット』に相当するほどの不快感こそないものの、筋書きを語ろうとすれば7分程度に短縮可能なほど薄い。雄鶏が存在せずとも太陽が昇る場面、現実世界のハリケーンと悪役のフクロウとの因果関係、耳障りなへんてこミュージカルなど、どこをとっても碌でもない。

 悪役のフクロウも暗躍する邪悪な存在として登場させたのだろうが、歌の珍妙さと目的の不明瞭さでもうどうでもよくなる。可愛いらしい動物たちや少年も、それ相応の年齢でしか言えないような台詞しか発しない。そのため、作画枚数の多いアニメーションの恩恵から名場面が生まれることがあっても、ウィットに富んだ会話から名場面が生まれないのが惜しい。

 そもそも、実写映像が完全に無用の長物なのが残念でならない。少年が動物たちを通して過ごした恩恵がないのだ。動物たちの世界が少年の両親が読み聞かせたお伽噺なら、それこそ『南部の唄』『ファン・アンド・ファンシーフリー』の方が、子供達が少年の気持ちになって共感できる。動物の仲間たちと悪役絵本から抜け出して、現実世界の農場のハリケーンをエドモンドと共に阻止した方が、まだ納得がいったはず。

 『天国から来たわんちゃん』や『アメリカ物語』の過激さが恋しくなる一作。

 

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