私とカートゥーンと鈴と。: バットマン マスク・オブ・ファンタズム Batman: Mask of Phantasm

バットマン マスク・オブ・ファンタズム Batman: Mask of Phantasm

バットマン マスク・オブ・ファンタズム Batman Mask of Phantasm
1993 (米) 

製作総指揮 トム・ルーガー
監督 エリック・ラドムスキ、ブルース・W・ティム
脚本 アラン・バーネット、ポール・ディニ、マーティン・パスコ、マイケル・リーヴス
原作 『バットマン』 著 ボブ・ケイン
製作 アラン・バーネット、マイケル・E・ウスラン、ベンジャミン・メルニカー、ブルース・W・ティム
出演者 ケヴィン・コンロイ、ダナ・デラニー、マーク・ハミル、ハート・ボックナー、エイブ・ヴィゴダ、他多数
音楽 シャーリー・ウォーカー
編集 アル・ブレイテンバッハ
製作会社 ワーナー・ブラザース・アニメーション
 

あらすじ

  •  ゴッサムシティを暗躍する謎の怪人/ファンタズム。仮面とマントを身につけたその風貌から、市民はバットマンに批判が集中する。ブルース・ウェインはかつての恋人アンドレアとの再会を果たす。それをきっかけに、彼はバットマンとしての活躍に区切りをつけるかどうか苦悩する。バットマンとして、またはブルース・ウェインとして双方が重大な決断を迫られる最中、ギャング団の幹部はジョーカーに暗殺の依頼を申し込むが...
予告編


 "バットマン"と聞いた時、私が想像するのは、だみ声のクリスチャン・ベールでも、甲高い声の狂人を摩天楼の頂上から突き落とすバットマンでもない。山寺宏一氏のナレーションと玄田哲章氏の声が特徴的なアニメ版のバットマン"だ。

 『バットマン』もとい、"Batman the Animated Series"(1992-1995)【以下バットマンTAS】はその後のアメコミに衝撃を与えた歴史的作品であった。ティム・バートン監督の『バットマン』二部作を基調とデザイン。黒で覆い尽くした色調にゴシックとアールデコの混合した舞台設計。東京ムービー(TMS)の委託による大胆でキレの良い動き。犯罪映画に負けず劣らずの重苦しい物語。今見ても、新鮮に映る。

 実写映画のバットマン人気とテレビアニメの人気の相乗効果で、人気が絶頂期に差し掛る頃に公開されたのが、『バットマン マスク・オブ・ファンタズム』である。

 アニメ版バットマンの入門編に最適。

 一話25分で完結のテレビアニメと比較すると、冗長ではないかとか寧ろファン向けだとか囁かれてしまうかもしれない。ただ本作に関しては、バットマンのアニメに興味がある方々の方が夢中になるだろう。

 バットマンTASでは"ゴッサムシティの事件簿"という印象が強く、バットマンよりも悪役の活躍があるからこそ、彼自身が見栄えするような作品だった。本作の場合は、バットマンの誕生秘話が詳細に語られている。いわばエピソードゼロ。

 ブルース・ウェインの心の葛藤とバットマンの誕生を描いた過去。劇場版オリジナルの怪人/ファンタズムを巡る犯人探しを描いた現在。77分という本編の長さを最大限に活かした推理サスペンスが堪能できるのだ。

 バットマンは悪漢と対峙することが日常茶飯事。ブルース・ウェインはお飾りに過ぎない。しかし、過去編のバットマンはブルース・ウェインこそが本体であり、只の一人の人間に過ぎないことが如実に判るだろう。実際、ブルースが強盗事件に介入し、こそ泥を退治する場面では、後頭部の打撃やトラックからの転落など、必ずしも英雄が完璧超人ではないことを教えてくれるのだ。

 ブルース・ウェインはとある女性と恋仲となり結婚も秒読み段階。しかし、その幸せを阻害する蝙蝠達やある事件をきっかけに、彼は"バットマン"として生涯を終えることを決意する。目視できない驚異からの重圧感と、金銭や人間関係でも満たされない心が、私念と義務をなす"バットマン"なのだと丁寧に解説しているのだ。

 ブルースの誕生から現在まで見護る保護者的存在であり、さり気なく嫌味を囁くアルフレッド。愛想のいいおっちゃんと不審者の恐怖を両立したジョーカー。そして、孤独感と並々ならぬ安心感を備えたバットマン。彼らの吹替を担当した声優陣の声がもう最高。

 劇場用作品とは言うものの、直訳的でニュアンスを掴みづらい会話劇はない。従来のテレビ版と同様の味付けがなされているのが素晴らしい。特に青野武氏のジョーカーは最高のジョーカーだと確信できる。特に本編は生真面目な部分が大半で、ちょっとしたおちゃらけ具合を欲したくなるので、丁度いい。

 華美な衣装で好感をもたせて、不気味な表情と動作で相手を怯えさせるジャック・ニコルソン。100%変人奇人の極悪道化師のヒース・レジャー。英語版を担当したルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミル。どのジョーカーも甲乙付けがたいが、ぶっちぎりで青野さんのジョーカーがベストに映る。彼の演技はどう聞いてもアドリブにしか聞こえないから不思議だ。

 音楽担当はダニー・エルフマンではなく、後にアニメ版『スーパーマン』(1996-2000)を担当することとなるシャーリー・ウォーカー。オーケストラを積極的に採用したテレビアニメ版と同様の衝撃と興奮を与えてくれる。

 そして何よりも、題材の陰惨さが嘘かと思うほど"健全"なのだ。アメリカの表現規制を掻い潜り、全年齢で劇場公開できたのは最早奇跡としか言いようがない。臓器は見当たらず、血液も必要最低限。落下死やガラスの破片や銃撃を受けても、正気を失くした死体が発見されても、残虐行為を重く受け止めずにいられるのは、流石はベテランの仕事と言ったところか。

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