私とカートゥーンと鈴と。: シンプソンズのゲストアニメーター Extraordinary Couch gags

シンプソンズのゲストアニメーター Extraordinary Couch gags

シンプソンズのゲストアニメーター8選
Extraordinary Eight Couch gags
※アニメキャラとのカメオ出演(リックアンドモーティ、ロボットチキン等)は除外。リンク先はyoutubeで統一。

 アメリカ国内で約三十年という最長継続放映記録を持つ歴史的アニメ、『ザ・シンプソンズ』。アメリカの大衆文化に多大なる影響力を持つシンプソンズでは、時たまアニメーターがゲストとして製作に参加することがある。そして、彼らが手掛けたカウチギャグの大半は、アニメ本編よりも興味深い至高の前座として不定期に放映されることがある。

 今回はその一部の紹介。

バンクシー Banksy

 最近では日本国内に出没した可能性が示唆されているアーティストで、政治風活動家のバンクシー。彼が監修したカウチギャグは究極の自虐行為。

 いつもの通りシンプソン一家がカウチに座り込む場面...かと思いきや、実は只の原画の一枚に過ぎなかった。シンプソンズの裏側では、奴隷かそれ以下の待遇で強制労働に駆り出された従業員が大勢いたのだった...

 アメリカで一年間の脚本・企画、韓国で三年間にも及ぶ作画作業を強いられるシンプソンズの製作工程。その悲惨さを風刺するのも凄まじいが、それを本家で公開し、許容されているのは素晴らしい。アメリカ合衆国が"自由の国"と呼ばれる所以はここにあるのだろう。

 中国での過酷な児童労働やキャラクター・グッズの想像を絶する生産過程。それを取り仕切る20世紀フォックス.... 直接的な社会風刺の濃さとそれを笑いに昇格させたバンクシーの技量に驚愕する一作。

 というか、商業取引を徹底的に拒むことで有名なバンクシー氏とどう連絡を取ってこんなコラボを実現できたのだろう?

ジョン・クリクファルシ John Kricfalusi

『レンとスティンピー』という衝撃作で鮮烈な脚光を浴びた彼のカウチギャグ。曲線美を強調した影響で不気味に映る作風は今もなお健在。静止画でも強調された歪みのあるキャラクター達だが、一つ一つの動作が忙しない。彼が担当した二つのカウチギャグは題材こそ異なるものの、両方共同様の魅力を持つ。特に、フランク・グランムズとその仲間の亡霊たちの暴走ぶりは、児童合唱団とナレーションによる寓話的な歌によって、奇抜な作風に慄くことなく気軽に鑑賞できるのがいい。

 哲学的メッセージや社会風刺を前提とした過激なジョーク。いわば、先行してカウチギャグを製作したバンクシー氏のようなカウチギャグにすることも、彼には可能であった。しかし、敢えて視覚的に訴える内容にしたのは、あくまでも"シンプソンズ"の本質を捉えつつ、その要素を材料に再構成する為であったという。

ビル・プリンプトン Bill Plympton

 シンプソンズの原作者であるマット・グレーニングと互いに尊敬し合うクリエイター、ビル・プリンプトン。彼が担当したのは6作品。その中から、個人的にお気に入りのカウチギャグを選出。相変わらず風変わりで常識外れのカウチギャグが続くが、カウチギャグでの物語のみに言及すれば彼の作品が一番感情的になれるであろう。

 カウチとホーマーの恋物語や、マギーの銃乱射オチが印象的なフィルム・ノワール、テレビ番組と連動するリビングルーム、テレビとカウチの儚い運命、家族全員でお絵描き、ホーマーのソロ歌唱と身体分裂など様々な内容があるが、一貫して恋愛や友情など心情に絡めようとする傾向があるように伺える。

ギレルモ・デル・トロ Guillermo del Toro

 現実社会の闇の部分をモデルに幻想的な世界を構築する鬼才、ギレルモ・デル・トロ。『ヘルボーイ』や『ブレイド2』、『シェイプ・オブ・ウォーター』等の映画を手掛けた彼のカウチギャグは、映画マニアなら思わずニヤリと笑ってしまうだろう。

 彼を虜にし、創作意欲を刺激した映画が勢揃い。全ての要素に感銘を受けたら胸焼けを起こしそうなほど、ネタの密度が高い。監督自身の過去作や、白黒映画の時代を象徴するユニバーサル社の怪物たち、シャイニング、ヒッチコック、歴代四人のオペラ座の怪人、シンプソンズ・フューチュラマ等の本作のネタ、その他諸々... 一度観ただけでは到底拾いきれないので、必然的に何度も鑑賞してしまうのが良い。

ドン・ハーツフェルト Don Hertzfeldt

 限られた時間で概念的なイメージを余すことなく曝け出すクリエイター、ドン・ハーツフェルト氏。理解すればするほど頭痛薬を欲したくなる彼の作風が反映されたカウチギャグ。

 4次元操作を可能にするリモコン。2014年現在のホーマーはそれを手にし、87年頃のオリジナルのホーマーと一体化を試みるのだが...

 家族愛を強調させるラブストーリーか、はたまた作家性全開の形容し難い何かか。彼の監督作を鑑賞すればこれも平常運転だと頷ける。しかし、投稿主はドン・ハーツフェルト氏の創作物に初めて触れたのが本作だったので、終始混乱した。

 遥か遠くの未来世界でのホーマーが過去の自分を懐古的に見つめて、その彼の"現在"に対して失望する姿は彼の監督作のオマージュとも読み取れる。仮にシンプソンズがその時代まで継続すれば、このカウチギャグで展開された未来予想も現実になるかも...?

スティーブ・カッツ Steve Cutts
『ダラダライダー』"L-Z Rider"
人類の大量生産・大量消費社会を風刺した短編"MAN"をきっかけにインターネット上で爆発的な人気を博したクリエイター、スティーブ・カッツ氏。相棒のカウチと共にコンビで活躍す刑事ホーマー・シンプソン。その刑事に追われ執念深く彼を恨むマフィアの首領ことネッド・フランダース。その対峙を80年代風の"イカした"演出で描いたのがこのカウチギャグだ。

 唐突なワイヤーフレームや絶え間なく続く爆発、『リーサル・ウェポン』や『西部警察』、『ビバリーヒルズ・コップ』を彷彿とさせる刑事モノ。そして忘れきゃあいけない、ホーマーとネッド。カッツ氏の殺伐したシンプルなカートゥーン絵で展開されるドラマは、素直に"ダサい"を通り越してカッコいいと感じさせるだろう。

 なお、こちらのカウチギャグは単体としてもアメリカ国内で非常に好評であったらしく、これが放映された回はシーズン27で最高視聴率を叩き出したという。

シルヴァン・ショメ Sylvain Chomet

 過度なデフォルメと詳細な描写と米国風刺で脚光を浴びたアニメ、『ベルヴィル・ランデブー』や、落ち目で初老の手品師と言葉を話せない女性との奇妙な関係を描いた『イリュージョニスト』。その作者であるシルヴァン・ショメ氏のカウチギャグ。『ベルヴィル~』の婆さん三姉妹の個室を彷彿とさせる陰湿な部屋。そこでのシンプソン一家の日常は、"フランス的食材"を除外すればいつも通りだ。KFCもどきのバケツや部屋の隅から無我夢中でカタツムリを頬張るホーマーや、より一層不気味になったマージの慌てぶりは必見。

エリック・ゴールドバーグ Eric Goldberg
フリーとしてディズニーやワーナー等の第一線の現場を渡り歩いたアニメーター、エリック・ゴールドバーグのカウチギャグ。

 30年代の古典的カートゥーンとシンデレラ、白雪姫とジャングルブックとファンタジアという意図的なディズニーオマージュが堪能できる。床と気体を除く全ての物体がせわしなく、慌ただしく、しなやかに動くモノクロの画面。あらゆる面で超越した赤ん坊のマギーも違和感なく馴染んでいる。

 番組開始からお構いなしに他社のパロディをこなしてきたシンプソンズ。これがどう著作権に触れるのか忘れてしまうほど、アニメーションは本家並のクォリティとなっている。所々でディズニー側の演出に対してツッコミを差し込んでいる辺りは、流石元職員といったところか。

マイケル・ソチャ Michał Socha

 ポーランド出身の映画監督、マイケル・ソチャ氏。彼が担当したカウチギャグは二編。一方は某北欧発の家具店を彷彿とさせる内容で、もう一方は監督の過去作のオマージュとなっている。

 新型のカウチを求めて電話注文。その後、材料は届いたが組み立てるのは一苦労。ホーマーのいつもの悪い癖で酒とドーナツに溺れるだけで、その作業は遅々として進まない。その策として思いついたのは...?

 万国共通で"あの店"がそういう認識なのだと痛感でき、シンプソンズの習慣に従ってホーマーの窃盗癖が炸裂するのは非常に興味深い。

 リビングへの扉を開けたはずが、何故か自分自身に吸い込まれたホーマー。脳内に吸い込まれたシンプソン一家の行方やいかに...

 ホーマーの脳内を散策するカウチギャグ。CGと2Dの合成に彼の過去作『Chick』で採用したカシスの濃い赤色と黒のモノトーンは芸術的。ビールとドーナツが散らばる胃腸や、医学的なようで出鱈目な眼球の描写は、『ミクロの決死圏』や『インサイド・ヘッド』で体験した空間と同様に神秘的だった。本稿で紹介したカウチギャグの中では作風が一番原作に近く、個人的には本編との落差が一番少ないと感じた。

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