私とカートゥーンと鈴と。: ガーフィールドと仲間たち Garfield and Friends

ガーフィールドと仲間たち Garfield and Friends

ガーフィールドと仲間たち
Garfield and Friends
1988-1994 88/100 (米)
原作 ジム・デイビス
製作総指揮 ジム・デイビス、リー・メンデルソン、フィル・ローマン
脚本 マーク・エヴァニエ、シャーマン・ディヴォーノ
監督 ジェフ・ホール、トム・レイ、デイヴ・ブレイン、ヴィンセント・デイヴィスロン・マイリック
出演 ロレンツォ・ミュージック、グレッグ・バーガー、ソーム・ヒュージ、デジレ・ゴエット
音楽 エド・ボガース、デジレ・ゴエット
シーズン7 121話

 日本人の好む猫の個性とは何だろうか。可愛さや落ち着き、上品さといったところか。怠惰を全面に押し出すことはまずないだろう。仮にそんな猫が存在しても、癒やしを求めるだけで、結局"可愛い"という特徴に置き換えるだけだ。だから、日本の猫には"可愛い"が付き纏う。勿論、私がハローキティや『魔女の宅急便』のジジやドラえもんに癒やしを要求しないわけじゃない。ただ単純に、それ以外の個性を全面に押し出したキャラクターが話題にならないことを疑問を抱いているだけだ。こんなにも人間側に都合の良い"擬人化"は単純に好かないのだ。

 アメリカ国内で最も知名度の猫は、日本人の理想とは正反対の"怠惰"の感情に溢れた奴だ。ガーフィールドという猫はアメリカ人が抱く一般的なステレオタイプを如実に反映させた捻くれ者の猫である。

オープニング


 『トムとジェリー』のトムは愛嬌のある奴だが、猫に対するアメリカ的性格が反映されているとは言いづらい。アングラ系の『フリッツ・ザ・キャット』は社会風刺色が濃すぎて当てにならない。その点、猫のガーフィールドはアメリカ人の猫に対する"擬人化像"に一番近い。

 アメリカの新聞漫画は鋭い社会風刺が好まれる傾向にある。読売新聞の『コボちゃん』にも微量ではあるがブラックユーモアが存在する。それでもどす黒いものではなく小学生のちょっとしたボケから発展するだけで害はない。いしいひさいち氏の『山田くん』シリーズのような例外も存在したが、『サザエさん』ほどの人気を獲得出来なかった。

 それに対して、アメリカではコマ撮り漫画は風刺色がかなり強い。同じ新聞漫画出身の『ピーナッツ』や『ブーンドックス』でも対象年齢や購入層が異なろうとも、基本的には社会を映す鏡であり続けていることには変わりない。なお、冒険活劇やメロドラマやサスペンスといった社会の世相よりも物語を優先して語る作品に関しては、この傾向にはあまり合致しないので注意。

 原作漫画のガーフィールドは41種類の新聞で1978年に連載開始。新聞に掲載されるやいなや、アメリカ国内で大評判。現在では世界で2600以上の新聞に100カ国語以上で連載され、2億6000万人以上の読者を獲得している。単行本の発行部数は全世界では1億3000万部。

 この流れを受けて製作されたのが、今回紹介する『ガーフィールドと仲間たち』である。


 社会風刺の色合いが濃く、日本文化が理想とする"猫"像とは程遠いと判断された彼は、2019年の現在でも"日本では流行できないキャラクター"として認識されている。それは、作者のジム・デイヴィスも公認するほど。しかし、原作再現がなされたこのアニメ版は問題ないどころか、ガーフィールド慣れが辛いはずの日本人でも大満足できる作風となっている。

 ガーフィールドは怠惰で、大食漢で、イタズラ好きで、常に皮肉的な態度である。日本語吹き替え版が製作されたことのある本作も例外ではなく、玄田哲章/茶風林氏のシニカルで重みのある声色で見事に彼の性格を再現している。

 アニメーションの体裁としては本編3つに、ガーフィールドやピエロのビンキー、オープニングに登場していた牧場育ちの動物たちのミニコーナーで構成。S・スピルバーグの『アニマニアックス』に近い。

 原作漫画や実写映画では人と動物の垣根を超えて人語で会話していたが、こちらでは彼の意思疎通は動物間のみで飼い主と直接会話はできない。但し、猫は人間言葉を理解し、人間は猫の身振り手振りから自然に察する。特にアニメではガーフィールドが原作以上に露骨な振る舞いをかますことが一般的である。ぐうたらな性格なのに、それを証明する小道具が用意周到なのは滑稽だ。

 全体的にはガーフィールドと彼に翻弄される人間達の日常生活や、彼の現代社会に欠かせない何かを伝授する内容だ。彼を世話してくれる飼い主のジョンに対しては、ご主人様と仕えることはなく、奴隷を扱うような振る舞いで終始甘える。犬のオーディは口がきけないことを利用して終始馬鹿にする。うざ可愛いナーマルは終始邪険に扱う。ピエロと月曜日が到来すれば、直ぐ様追い出そうと一日中策を練る。こんな具合に彼の日常は繰り返される。

 このアニメが面白いのは、そのガーフィールドの哲学を堪能できること。アニメこそ健全な全年齢向けだが、万事解決のオチに落ち着くことはない。寧ろその先を想像しがちなバッドエンドが多い。ピエロを追い出そうとしてもドルーピーの如く追い詰められたり、便利グッズを紹介したら思わぬ場面で大活躍したり.... ハッキリと"終わり"と締めくくれる話がない分、そのメッセージ性も強調されていくのだ。

 大抵の子供向けテレビアニメは2,3シーズン(一年半継続)すれば良好だが、本作では6年近くも新作が放映された。子供のみならず保護者側の大人たちをも虜にした証明なのだろう。まじまじとテレビ画面を見つめることはなくとも、息子や娘が触れた娯楽が如何なるものか興味が湧くのは最早保護者の務め。原作漫画のファンであればほぼ確実に、そうでなくても嫌々鑑賞するほどの退屈な内容ではなかったのだろう。

 これ以後のガーフィールドは2004年に実写映画が公開されたり、フランス主導のCGアニメが放映された。上記のアニメ版と比較すると性格が温厚で腕白さが増している。しかし、原作の持つ刺激が薄くなり、子供たちに喜ばれるような無難なコメディアニメとなっていった。フランス製作のCGアニメである『ガーフィールドショー』(2008)では天変地異や奇怪なクリーチャーを登場させるような演出が目白押しだが、そんなものは彼に似合わない。

 『ドラえもん』や『サザエさん』と同様に、大衆受けするキャラクターほど毒気を保てないのは万国共通なのだと痛感できる作品。なお、日本語版DVDも存在する。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事