私とカートゥーンと鈴と。: 古典的恐怖を現代向けにアレンジ。『トゥーンシルバニア』 Toonsylvania

古典的恐怖を現代向けにアレンジ。『トゥーンシルバニア』 Toonsylvania

スティーブン・スピルバーグのトゥーンシルバニア Toonsylvania
(米) 1998-99 60/100
原案 ビル・コップ、クリス・オオツキ
製作総指揮 ビル・コップ、リッチ・アーロン、スティーブン・スピルバーグ
企画 ジェフ・デ・グランディス
監督 ジェフ・デ・グレンティス、リッチ・アロンズ、デイブ・マーシャル、チャーリー・ビーン
テーマ音楽作曲家 ジュリー・バーンスタイン、スティーブン・バーンスタイン、ポール・ラグ
作曲者 マイケル・タベラ、ヨハネ・パウロ・ギブン、他多数。

 シュレックやマダガスカル、ヒックとドラゴン等を抱えるドリームワークスは、米国の大手スタジオの中でも比較的新しい企業だ。それゆえ、設立当初から映画製作に留まらず様々な展開をしてきた。実写映画で『スモール・ソルジャーズ』を手掛けたかと思えば、4tの粘土で創造された世界を旅するインタラクティブゲーム『クレイマン・クレイマン』なんてのも手掛けている。

 監督業よりも製作総指揮として映像文化に介入してきたスティーブン・スピルバーグ。その勢いが停滞してきたことを伺わせたのが、今回紹介する『スティーブン・スピルバーグのトゥーンシルバニア』である。

オープニング


 かつては、『タイニートゥーン』や『アニマニアックス』で一世を風靡したスティーブン・スピルバーグだが、その勢いに陰りが見え始めたのがこの頃。映画製作の拠点として設立したアンブリンを一時的に離れて、ベンチャー企業のドリームワークスで新作を発表したのはいいが、本作ではその過度なハードスケジュールで確実に悪い影響が出ていた。
 
 子供向けアニメの範疇だから米国における最低限の"タブー"は厳守されている。ただ、その境界線に疑問視してしまうほど、この映画のユーモアには寒気がする。グロテスクな存在や悪霊や蘇生した死人が大勢登場しても、それが気がひける原因にはならない。ただこのアニメ、ネタの引き摺り方が凄く"悪趣味"

 オブロングス』に耐えきれる奴が何言ってるの!?」と思う方もいるかもしれない。それでも、このアニメのユーモアには少し吐き気を催してしまうのだ。

 本作では基本的に怪奇現象や化物の怖さでなく、彼ら特有の所業の怖さをコメディにしている。構成は、フランケンシュタインとマッドサイエンティストとその下僕の三人組が活躍する話①と、強烈なインパクトで屍をコミカルに描いたゾンビ一家の話②、そしてワガママで可愛げのない少女メリッサ・スクリーチのお伽噺③の三編。

 お化けや死神、骸骨に人造人間が登場しても、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』や『ゲゲゲの鬼太郎』のように本来接点のなさそうな出来事で物語を展開されるのなら、こういったことはない。 こちらでは、怪物が怪物と呼ばれる原因となる行動に焦点を当てて、その一連をコメディとして描くことで、終始不気味な雰囲気が漂わせている。

 ゾンビ一家の話に至っては、不謹慎なネタや生理的嫌悪感への耐性がないともうどうしようもない。フェイマススタジオ版のキャスパーでも「仲良しの仔犬が死んでも、僕と同じ幽霊になれたから一安心」といった複雑な気持ちになる締めはあったが、こちらの場合はそういった展開がてんこ盛りだ。

 変化球としては興味深いけれど、観ていると思わず鳥肌が立ってしまう。お化け屋敷に迷い込んだ緊張感の中で驚かされるというより、台所で家事に勤しんでいたらゴキブリに気づいて、それを素足で踏んでしまったような感覚 だ。

 ホラー映画に古典的スランプスティックを織り交ぜて、現代向けに改良することには成功しているものの、どうにもスッキリと笑えない。まあ、猟奇的な趣向をうまくオブラートに包んで、全年齢向けのアニメにしたことだけでも素晴らしいよね。中々見ないし。

 日本語吹替版では上記の悪趣味な内容をなんとか噛み砕いて表現することに成功している。80年代のシットコムを彷彿とさせる吹替。コメディ寄りの玄田哲章さんや大友龍三郎さん演じるフィルの腹の奥に突き刺さるドスの効いた声のお蔭で、気軽に鑑賞できるのが嬉しい。

北米版VHSのみ。DVD・オンライン配信日米共に無。
 

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