私とカートゥーンと鈴と。: アメリカ物語2/ファイベル西へ行く An American Tail: Fievel Goes West

アメリカ物語2/ファイベル西へ行く An American Tail: Fievel Goes West

アメリカ物語2/ファイベル西へ行く
An American Tail: Fievel Goes West

監督 フィル・ニベリンク、サイモン・ウェルズ
脚本 フリント・ディル
製作 スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ワッツ
製作総指揮 キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル、デヴィッド・カーシュナー
音楽 ジェームズ・ホーナー
編集 ニック・フレッチャー
1991年 アメリカ 74分

 「作画は素晴らしいのに、期待したほどじゃあない。」

 この感想に到達するアニメ映画は数あるが、70~90年代前半の欧米圏でこれに該当する率は途轍もない。

 続編商売を端から目論んだ映画でない限り、アメリカ国内のアニメ映画は一話完結型がほとんどである。一昔前では、人気の実写映画が前作を軽く超える潤沢な資金で製作されるのに対して、アニメーション映画となると決まってスケールダウンする。大手スタジオがCGアニメで埋め尽くされる前は、それが一般的だった。

 『アメリカ物語』はドン・ブルース監督のヒット作の一つ。猫の集団に住処を追いやられたネズミ一家が理想の地を求めてアメリカに移住する話で、主人公に待ち受ける過酷な運命と家族の再開に涙する感動作だった。製作総指揮のスピルバーグのテコ入れも違和感がなく、今見ても古びない秀作だ。

 今回紹介するのは、そんな作品の続編。

予告編


あらすじ

  •  猫の恐怖から逃れたかと思いきや、ロシアにいた頃と変わらずの生活を送るマウスクビッツ家。そんなある日、一家は集会で西部での夢のような生活に期待を寄せて、移住することを決断する。しかし、その集会は猫が仕組んだ罠だった...

 安住の地を追い求めて何千里も旅する設定自体は問題ないが、西部劇に変化するのは余りにも唐突だ。物語の接点こそ密接にあるものの、その描写には肩透かしを食らってしまった。子供に関心を持ってもらうために、舞台を極端に変えると『ブレイブ・リトルトースター 火星にいく』を想像するので嫌な予感しかしない。

 現実と虚構の境界線が曖昧。例えば、冒頭でミュージカル仕込の歌を歌唱中に、周辺住民から罵声と襲撃を受ける場面がある。この世界では現実世界の人間は動物に介入しないはずなのに、ネズミの声に過敏に反応しているのだ。"ネズミの声"は耳元で囁いて辛うじて聞こえてくるもの。『ドラえもん』のジャイアンのような騒音には遠く及ばないはず。前作の完成度を思うと、どうしても状況を把握する為のずぼらな演出に疑問を持ってしまう。

 また、登場キャラクター達に対して明確なビジョンを持っていたドン・ブルースの強みは本作に存在しない。例えば、両親を懸命に捜索する親子の活躍に上映時間の大半を費やしていた。しかし、こちらでは蒸気機関車から転げ落ちた主人公が親子と再開しても、涙を流すことも、喜ぶこともなく、「あんた、どこ行ってたの?」なんてノリで会話がすぐに終わるのだから唖然としてしまう。

 ただし、"古き良き子供向け漫画映画"という括りであれば、これ以上にない素晴らしい作品となる。

 アニメーション担当はアンブリメーション"Amblimation"。アンブリメーションとは、スピルバーグが本格的なアニメ製作を実現する為に設立し、ドリームワークスの設立と共に消滅したスタジオである。英国に制作拠点を設置していたものの、今回の場合は、元ディズニー社員の監督の続編ということもあり、作画云々でアメリカ国内の映画と区分できるほどの差はない。

 日本国内で発売されているDVDやVHSではこぢんまりとした印象を受けるが、HD画質で観ると全然違う。西部劇に登場する砂漠での場面の明暗や色使いは実に綺麗。太陽光を背景に動物たちが立ち竦む場面での臨場感は中々のもの。黄色や橙色が大半を占める映画ではあるものの、全体的には色鮮やかで殺風景な場面は全く無い。銃弾やピストルの代用品としてパチンコやネズミ取りを活用するなどの配慮がなされているものの、西部劇のお約束を踏襲しつつ、典型的なギャグ・コメディとして成立させているのも良い。

 妙ちきりんで阿呆らしいコメディシーンが多数を占め、その穴埋めとばかりにミュージカルが挿入される。子持ちの保護者が見せるにはこれ以上にない逸材だろう。悪役も子供向けの範疇に余裕で収まる悪行のみをこなしていく。バーレスクを仕切る親玉の猫(声 ジョン・クリーズ)も風貌こそそれらしいが、それだけだ。

 とんでもないどんでん返しなんてものない。その分、意味深なメッセージやええかっこしい教訓話が耳障りにならないのも良い。アンブリメーションの次回作となる『恐竜大行進』では、準備した設定が尽く意味不明なまま終了する残念な映画だった。こちらの続編の場合、頭を空にしても、全編注意深く鑑賞しても、それなりに納得のいくので安心。

 ロシア系移民の設定を巧妙に活かした前作ほどの深みは明らかにないものの、アメリカの伝統的な"子供向け映画"の典型例を鑑賞するにはうってつけのアニメ映画だ。

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