私とカートゥーンと鈴と。: シンドバッド 7つの海の伝説 Sinbad: Legend of the Seven Seas

シンドバッド 7つの海の伝説 Sinbad: Legend of the Seven Seas

シンドバッド 7つの海の伝説
Sinbad: Legend of the Seven Seas
2003 (米)
監督 ティム・ジョンソン
脚本 ジョン・ローガン
製作 ミレーユ・ソリア、ジェフリー・カッツェンバーグ
出演者 ブラッド・ピット、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
製作会社 ドリームワークス・アニメーション

あらすじ

  •  7つの海を支配すると囁かれる“魔法の書”。その書物が世界を混沌に陥れるカオスの女神・エリスに奪われてしまう。窃盗の罪を着せられた青年シンドバッドは、10日間の猶予を与えられる。もし期間内に魔法の書を奪還できなければ、彼の身代わりとなった王子プロテウスが処刑される。シンドバッドとその仲間はエリスの住む島へと繰り出すのだが....
予告編


 聖書の伝承に黄金郷、西部開拓時代を描いてきたドリームワークスが次に手掛けたのがシンドバッドの冒険談。『スピリット』で実現させた2Dと3Dの合成術を更に発展させたのが本作『シンドバッド 7つの海の伝説』である。

 原作は『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』の中の『船乗りシンドバードの物語』(第290夜 - 第315夜)の交易網を舞台に活躍したイスラム商人の冒険談。シンドバッドの名前はアラビア語で「インドの風」を意味する。なお、厳密にはアラビア語の原書には登場しない。"靴屋と王女の話"と同様にフランス語の写本から普及した作品として認知されている。

 90年代後期から00年代前期の長編アニメーションは、何かと古典的というか舞台を無理に壮大にした冒険活劇が多い。CGアニメーションがコメディ色の濃い作品(『アイス・エイジ』、『モンスターズ・インク』、『シュレック』)を公開する一方、アニメーション部門はどの企業も画一主義に囚われ続けた印象がある。『バクテリアウォーズ』や『エイトクレイジーナイツ』、『サウスパーク 無修正映画版』のような頭を空にして鑑賞する手描きアニメは少なかった。

 結論から言うと、この作品は素晴らしい部分が特出する余り、肝心の内容が疎かになったアニメーションである。

 水と煙の表現

 実質的にドリームワークス最後の手描きアニメーションとなった本作。敢えてアニメーションで一番困難とされる描写に、果敢に挑む姿勢とその成果には圧倒される。『プリンス・オブ・エジプト』では終盤のエクソダスの場面で海水を神秘的に魅せる特殊効果が成されていたが、こちらでは本編の大部分を"水"で占めている。

 『シンドバッド 7つの海の伝説』の海の場面では水が絶えず揺れ動いているが、水は、アニメで本物らしく動かすのが最も難しい部類に入る。波、航跡、霧、しぶきの見かけや相互に干渉する様子を観客に違和感なく見せるために本作では海全体をレンダリングし、それをうねらせる方が効率的だと考えたのだ。

 結果的に現実と見紛うほどの水しぶきと荒波が披露されたが、これではファンタジー映画に必要不可欠な"非現実性"を損なう演出とも捉えかねない。というのも、『崖の上のポニョ』の如く、生命力に満ち溢れた水面を堪能できるというよりは、当時の最新技術をひけらかしただけに映るからだ。

 対照的にカオスの女神は文句なしに素晴らしい。煙と共に姿を現し、妖艶な雰囲気を醸し切ると姿を消すファム・ファタール。周囲のスモーカーの吐く煙の如く、否応なしに纏わりつく姿は妖艶な雰囲気に満ちていた。開発段階の不格好なCG技術で恐怖感を与えることはなかった。自身を巨大化させて威圧的になったり、人間視点で対等に会話して感情を揺さぶるという具合に、アニメーションの力だけで怯えさせているのが良い。ディズニー映画『アラジン』のジーニーのように生身の人間と変わらないスキンシップを取るのではなく、煙の形態を常に視聴者に意識させつつ喜怒哀楽を体現しているのが何とも言えない。

 掴みどころがない主人公

 『エルドラド 黄金の都』も同様だが、主人公に魅力を感じられないのが惜しい。映像に注力するあまり、本編に空虚なムードが立ち塞がる。俳優有りきの脚本と演出で大衆を魅了するドリームワークスにしては、どこか詰めが甘い印象を受けた。あらすじを要約すれば、シンドバッド版『走れメロス』なのだがどこか腑に落ちない。

 魔法の書に翻弄された人間と神との対立や名誉挽回の為に一念発起する主人公を見せたかったのか。それとも、ディズニーランドの【カリブの海賊】用のアトラクション型の体感映像を見せたかったのかよく解らなかった。推敲し足りない脚本の穴埋めとばかりに、血湧き肉躍る映像を捩じ込んだ印象が強い。

 作画崩壊だとか、戦艦やロボットの動きに感動するアニメファンにはお勧めの一作。

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