私とカートゥーンと鈴と。: 元大統領に中指おっ立てた問題作。『ブーンドックス』 Boondocks

元大統領に中指おっ立てた問題作。『ブーンドックス』 Boondocks

ブーンドックス Boondocks
(TV-MA) 2005-2008, 2010-2014 (米)
製作総指揮 アーロン・マッグルーダー、レジナルド・ハドリン、ロドニー・バーンズ(共同)
製作 デニス・コーワン、カール・ジョーンズ、ブライアン・コーワン
監督 アンソニー・ベル
脚本 アーロン・マッグルーダー、ロドニー・バーンズ
声優 レジーナ・キング (ヒューイ/ライリー)、ジョン・ウィザースプーン (ロバート・フリーマン)、エドワード・アスナー (エド・ワンクラー)

 アダルトスイム(AS)で放映されたアニメーションは基本的に"大人"向けである。まあ、厳密には【成人レベルの表現への耐性を持つ人間】向けだが。生真面目に日常生活を謳歌する者や、礼儀作法を厳守する頑固者、穢らわしい物を徹底的に排除する者には、アダルトスイム作品は"絶対"好みには合わない。

そんなAS作品日本進出は非常に稀である。『ホームムービーズ』や『ロボットチキン』のように衛星放送で観賞できることですら、高待遇だと錯覚するほどに。仮に日本進出を達成しても、モト冬樹さん主演の『アクア・ティーン・ハンガー・フォース』のような悲惨な状態になることもある。

 正直言って無理もない。"深夜帯"で"刺激のある"アニメの需要は日本とアメリカでは余りにも差が大きいのだから。草木の成長する瞬間の喜びをなぞられた言葉から派生した"萌え"。その文化が浸透した日本の深夜アニメは、現実に沿いつつ現実味のない愛らしいキャラクターの日常風景を映したものが大半を占めている。勿論、原作ありきの硬派で重厚なアクションアニメも揃っているものの、"萌え"の影響を一切排除したアニメーションに巡り合うのは至難の業だ。

 それに対して、アメリカに代表される欧米欧州圏の深夜帯のアニメーションは、子供には到底見せられない過度な演出や脚本を武器に、物語を進行させることが多い。つまるところ、AS作品はそれらの要素から成立した作品群が連なる非常にニッチな市場であり、日本での放映は絶望的なのだ。幸いにも、今回紹介するアニメ版『ブーンドックス』は開局したてのアニマックスで放映されており、翻訳も演技も秀逸だ。

 原作は漫画家で黒人のアーロン・マッグルーダーが1999年から連載を始めた新聞漫画。日本では映画批評家の町山智浩氏による邦訳版が出版されており、日本でも一時期話題となった。アメリカ国内で少数派として扱われる黒人達の本音を包み隠さず、オブラートには決して包まずに発言する異端児。原作がどれほど不謹慎なのかはこちらを参考にしてください。

  日本国内ではシーズン1,2のみ放映。それ以降のシーズン3~5は日本未上陸。

オープニング


あらすじ

  •  ロバート・フリーマンは自分がやんちゃな二人の孫の法定後見人に決められると、シカゴの南に住む家族の元を離れ、安全で静かな“僻地"(boondocks)であるウッドクレストへと引っ越した。彼はそこで孫たちを完全に無視し、25年ほどの余生を平和に過ごしたいと望んだのだ。
     しかし、過激的な10歳のヒューイと不適応児の8歳の弟ライリーは新しい環境を喜ぶはずもない。兄弟はお互いにケンカをしたり、近所の人たちを刺激する行動をとったりと問題が絶えないのだった...

 不謹慎な内容の攻撃性で大衆を魅了した『ファミリーガイ』はFOXテレビ出身であったが、こちらは純AS作品。日本の漫画・アニメ文化が大好きな作家が執筆したこともあり、『ブーンドックス』はデザインだけで判断すると日本か韓国辺りの作品かと勘違いするかも。又、この日本人受けを狙いやすいデザインのお陰で台詞の一つ一つがより鮮明に記憶に残るのだ。

 黒人少年のヒューイ(10歳)とライリー(8歳)。彼らは率直かつ辛辣に発言することが多い。しかも、その内容は人種的偏見に満ち溢れている。しかし、彼らが発言する指摘自体は今でも通用する。ただ、事前知識ありきのアニメではないものの、本作には黒人社会への認識が甘いと本編の途中で見飽きてしまうだろう。

 というのも過激なネタで攻めると、いくら新鮮味があろうともその展開の流れに勘づいて、視聴を断念する傾向があるからだ。ポリティカル・コレクトネスなんて概念に躊躇することなく会話する威勢の良さには圧倒されるものの、その耐性が付くと途端に退屈になるのだ。例えば、ニガーという黒人を指す差別用語をしょっちゅう引用したところで、何百回と聴けば流石に飽きる。

 とは言うものの、黒人関連の社会問題が対岸の火事である地域の人間からすれば、アメリカンコミックと漫画の中間的デザインのANIME絵で展開されるニグロとアングロサクソンの大乱闘と、日本愛が全開の映画や漫画のパロディだけでもう大満足。アニマックス放映版では、正確に翻訳しても意図が伝達しにくいと判断された部分に柔軟な字幕や吹替がなされていたものの、原作から逸脱した一話30分のストーリーや前述のアニメ絵のお蔭で、気軽に鑑賞できるのも嬉しいところ。

 日本語吹き替え版はアニマックスで数回放映歴があるものの、再放送は望み薄。英語版は有料配信、またはディスク媒体で鑑賞可能。

  

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