私とカートゥーンと鈴と。: 斉藤由貴の星の王子さま Der kleine Prinz

斉藤由貴の星の王子さま Der kleine Prinz

斉藤由貴の星の王子さま
Der kleine Prinz
企画 ユルゲン・ミュラー
監督 テオ・ケルプ
原作 『星の王子さま』 著 サン=テグジュペリ
脚本 ノーベルト・ゴルッヒ
音楽 ヨハネス・ロロフ
制作スタジオ アレキサンドロウ&グラオエルトフィルム・AVプロ
1990年 ドイツ 60分 

 フランスの文学作品の中で最も世界中に支持者を持つものが何かと尋ねられたら、間違いなくサン=テグジュペリの『星の王子さま』と応えるだろう。

本編一部


 絵柄、内容ともに忠実に具現化したアニメーション

 『星の王子さま』の派生作品は数多く存在する。アニメーションに絞っても何種類も存在する。しかし、大抵の作品は原作者の意図を発展させたものや後日談であったり、特徴的であった素朴な挿絵を敢えて無視した絵柄が多かった。勿論、それらの試行錯誤は作品を咎めることはなく独自色を強める要素になるものの、結果的には原作とは別物になっていた。

 劇場未公開の映画を宣伝するために俳優やアイドルの名前を題名に挿入する事があるが、本作の場合は単純に差別化を図る為に仕方なく主演の名前を引用した印象が強い。私は芸能界の情報や話題のドラマに疎いので、"斉藤由貴"さんの起用がどういう層にネガティブイメージを与えるかは存じ上げない。

 本作の場合は彼女の採用が功を奏している。原作小説の挿絵の如く、淡く静寂した空間が広がる世界観に見事に同化しているのだ。まるで本物の子供に声を充てたピーナッツのアニメのように。彼女の声は優しく控えめな姿勢を取るような感じだ。一歩間違えれば棒読みとも捉えかねないボソボソした声質を、星の王子さまに違和感なく落とし込んでいる。

 朗読も主張しつつ、雰囲気をぶち壊さない程度に自然だ。ゆったりとしたテンポで物語は進んでおり、大胆な変更は見当たらない。テレビ用の中編アニメでかつ題材が題材であろうがゆえに、壮大な冒険談だとか手に汗握る武勇伝なんてものは勿論ない。肩透かしを食らうことなく安心して鑑賞できるだろう。

 絵柄に至っては冒頭の密林と茂みの背景を除けば、文句なしの出来栄えだ。異様に映る突飛押しもない現象もなく、原作未読者でない限りひどく嫌う理由は見当たらない。

 肩を楽にして観れるオススメの一本。

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事