私とカートゥーンと鈴と。: エディ・マーフィのPJ's The Pj's

エディ・マーフィのPJ's The Pj's

エディ・マーフィのPJ's
The PJ's

製作総指揮 エディ・マーフィ、ブライアン・クレイザー、ロン・ハワード、トニー・クランツ、スティーブ・トンプキンス
テーマ曲 ジョージ・クリントン、クインシー・ジョーンズ三世
音楽 マーク・ボニーラ
出演 エディ・マーフィ、ロレッタ・デヴァイン、ジェニファー・ルイス、マイケル・ポール・チャン
1999-2001 シーズン3全44話 TV-PG (米)

 最近ではマンションの経営者が事務や維持の困難で悲鳴を上げているようで、家賃収入で食いつないでいくのも一苦労の模様。そんな記事を読んで思い出したのが、今回紹介する『エディ・マーフィのThe PJ's』である。

オープニング


 題名にもなっている"PJ's"とは公営住宅"Projects"の省略形。本作は、一癖も二癖もある厄介なご近所さん達に挟まれて暮らす大家サーグット・スタップスの物語だ。"全てのに人間に平等な表現を""差別的発言は控えよ"といったポリティカル・コレクトネスが浸透する手前の1999年に製作されたこともあり、かなり踏み込んだ描写がてんこ盛りだ。だからと言って、退廃的でステレオタイプな表現があるわけではない。エディ・マーフィ製作総指揮の元で表現された、アメリカでも日の目を見ない黒人たちの独特な世界観が登場するだけである。

 エディ・マーフィは『ビバリーヒルズ・コップ』で一躍脚光を浴び、以後リメイク版『ドクター・ドリトル』、『シュレック』のドンキー役、『ナッティ・プロフェッサー:クランプ教授の場合』などに出演する人気俳優だった。ところが、黒人の同業者からはすこぶる評判が悪い。というのも、アメリカ国内では一定の経済的余裕や栄光を掴んだら、必然的に黒人の地位向上の為に貢献することが、暗黙の了解となっているからだ。

 スパイク・リーはそんな彼を何かと非難したが本作に関しては、「黒人への憎しみに溢れ、非常に屈辱的な番組だ。黒人への愛情が全く感じられない」(1)と批判した。それに対して番組関係者は「あくまで一部のアフリカ系アメリカ人であり、彼らを代表する者ではない。」、そしてエディ・マーフィ自身は「婉曲した表現を抜きに黒人を登場させて何が悪いのか?」と反論した。

 個人的にはそんな悪意に満ちた表現は見当たらないし、協調性ある主要人物たちには好感が持てた。PJ'sに暮らす住民は黒人だけではないし、"ブラックパワー万歳"と騒ぎ立てるジミーというキャラに関しては、黒人とは縁もゆかりも無い韓国人だ。また、低所得者層が暮らすボロボロのアパートという設定とはいえ、貧富の格差を笑いの種にするなんて安易なネタが頻繁に発生する訳ではない。そのような陰湿な設定が現実味を帯びて、世界観と登場人物と違和感なく連携させているのだ。

 タイタニックやグリンチなどのメジャー作品のパロディも非常に丁寧。架空の人物とはいえ黒人社会に密接に関与させて、活き活きと見せているのも素晴らしい。ニューヨークのブルックリン産まれのエディ・マーフィだからこそ描けた作品であろう。

 加えて、ストップモーションが採用されたのにも意義があると感じさせてくれる。製作は『KUBO 二本の弦の秘密』や『コララインとボタンの魔女』で有名なライカの前身であるウィル・ヴィントン・スタジオ。当時彼らが手掛けた代表的な作品というと、マーク・トゥエインの冒険やディズニーの『オズ』(ミュージカル映画じゃない方)などがある。

 彼らの顔つきは彫りの深く非常に独特。特に通常時の無愛想な顔は印象深い。そんな人形たちを週単位のTVアニメで安定して動かしていたのは職人技の賜物と言えるだろう。スライム状に形状を変化させることが許容された『ガンビー』や『モープ』、『レックス・ザ・ラント』、『ニャッキ』等のクレイアニメを例外とすれば、一話30分のテレビアニメでの全工程をコマ撮りで成し遂げただけでも表彰されるべきだ。ビールや酒の瓶に代表されるちょっとした小道具、抑揚の多い会話と人間の癖を忠実に反映させたリップシンクと人形の動作など、細かい仕草でも決してバラつくことがなかった。

 黒人社会の意外な面を垣間見れるストップモーションアニメーション。

 なお、本作は一定の人気は獲得したものの、ストップモーションアニメの製作費に見合うものではなかったようで、シーズン3で打ち切られている。日本ではスーパードラマTVでの放映歴が確認されているが、国内での視聴は困難だ。シーズン1の4話を"吹替版"で数回放映したのみで、2019年現在も再放送の予定はない。その癖、邦題で検索すると当時の紹介ページが文字化けなしで残っているのは謎である。仮に英語版でなんとか妥協しようにも、訛りの強いの黒人英語でためらうかもしれない。

(1) ワシントン・ポスト紙から引用

 

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