私とカートゥーンと鈴と。: ビーバス・アンド・バットヘッド Beavis and Butthead

ビーバス・アンド・バットヘッド Beavis and Butthead

ビーバスアンドバットヘッド Beavis and Butthead
原案・監督・主演・テーマ曲作曲 マイク・ジャッジ
1993-1997,2011年 8シーズン 全222話 米国 (TV14)

本編一部



 アメリカ文化が爆発的に普及し他国に根深く侵食することがあろうとも、美的感覚や個人の趣向が劇的に変化することはそう滅多にない。いくら米国で大ヒットと宣伝しても日本で売れる保証はどこにもない。90年代のMTVを全面的に支えたと豪語しても過言ではない彼らが、日本で売れなかったのも当たり前だと言える。そんな彼らの名前はビーバス・アンド・バットヘッド。

 ハイランド高校に一応通学する14歳の馬鹿二人組。馬鹿と言ってもどこかに愛嬌があったり、特出する才能を持ち合わせてはいない。生粋の馬鹿である。暇さえあれば自宅警備員顔負けのカウチポテトぶりを発揮する。ネット普及以前のなら彼らはその殿堂に居座っていただろう。自分の名前の綴りも書けず。ちょいワルに憧れるも周囲からは相手にされず。おまけにその事実に触れるどころか、彼らは気付かないのだから恐ろしい。

 周囲の人間も正直偏屈な奴等でオールマイティな真人間はまずいない。善良な教育者だがヒッピーのオーラ全開の先生に、体育会系の元軍人のコーチ。後に外伝作品の主役に昇格する冷静沈着なダリア、彼らの騒動に巻き込まれがちな不遇なご近所さんなど、棘だらけな登場人物ばかりだ。

 彼らの感情を全体に影響させたような商業作品とは思えないほど荒い絵。語彙力は壊滅的に乏しく、常に掠れた「ヘヘッ」という声が会話の三割を占める。大半の人がこの絵の敷居の高さと低俗のお手本のような言動に苛立ちを覚えるのがネックなところ。この部分を乗り切れれば多分ハマるかも。

 視聴者の大半は彼らと同年代の青年か20代だろうが、個人的にはこのような低俗さを敬遠する人ほど夢中になるのではないだろうか。馬鹿を遇らう人間ほど馬鹿の発想や行動は意外と関心を持ちやすいし、本作での馬鹿の極みは複雑に作用する事が多い。彼らは常識や倫理観や道徳心を完全に無視しつつも、極端に残酷で無秩序な状況には陥らせないからだ。悪巧みや悪戯の域も低次元で被害が出ても銀行強盗やテロ事件ほどではないし、教室内での行動も何故か既視感を覚えるものばかり。後に馬鹿の本質を徹底的に露出した『26世紀青年』"Idiocracy"(2006)を監督した人物だけあって、本編中の騒動は意外にも、学生時代の経験や普段の生活と重ねる出来事に遭遇しがちだ。

 そして本作の最大の醍醐味は彼らの鑑賞するミュージックビデオ。

 番組と番組の休憩にミュージックビデオが挿入されるのだが、彼らの戯言は衝撃的だ。硬派なロックと女性の乳房以外興味のない彼らの発言は非常に雑。YouTuberの底辺でもこれよりは建設的意見を述べると断言できるほどシンプルだ。発言の全てが彼らの本能に基づく直感的意見で、躊躇する素振りがどこにも見られないのが素晴らしい。そして、アーティストの知名度や功績を悉く無視するその度胸と無謀さも笑いを誘う一端を担っている。

 日本国内では残念ながらMVの批評が収録された媒体は"厳密には"ない。(PS版のゲームに収録されたものの、原作崩壊待った無しの吹替版の為数えない)本編のみが収録されたDVDのみ発売中。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事