私とカートゥーンと鈴と。: Another Day of Life アンゴラ内戦密着取材

Another Day of Life アンゴラ内戦密着取材

Another Day of Life 
監督 ラウル・デ・ラ・フエンテ、ダミアン・ネノー
企画 ヤレック・スワンコ、アミア・レミレス, オレ・ウェンドルフ・オスターガード
原作 "Another Day of Life" 著 リシャルト・カプシチンスキ
ポーランド主導、スペイン、ベルギー、ドイツ、ハンガリー合作

予告編


あらすじ

  •  1970年代、米ソ冷戦の代理戦争が激化するアンゴラ。戦争記者のリシャルト・カプシチンスキはアフリカの新たなる夜明けを察知し、無政府状態とした南部の紛争地帯に潜入取材に挑む。その道中で散々たる戦禍や現地民や軍関係者と密接な関係を持ってゆくが、次第に記者としての使命感に揺らぎ始めてゆく....
 リシャルト・カプシチンスキ。世界で最も生気にあふれた報道記者と讃えられた伝説的な人物だ。日本国内でも彼の著書の邦訳版が発行されており、"ルポタージュ"の研究において彼の存在を無視できない。彼の著書はその類まれなる洞察力と感性が遺憾なく発揮されている。入手した事件は映像よりも鮮明かつ衝撃的。物語はまさに小説より奇なり。豊富な知識から抽出された文体は多数の分野を跨げるほど多義的だ。そして、専門的知識や社会背景を知らずとも十二分に把握できる万人性が魅力的だ。

 なお、日本では本映画の原作の邦訳は未発行だが、関連する書籍として『黒檀』が出版されている。

 劇中でキーワードとなる"Confusao"【コンフュサォ】(ポルトガル語で混乱)。鉛玉の雨霰を強行突破する場面や死体塗れの一本道での銃撃戦、アンゴラの都市部で脱出するポルトガル人など、どの場面でもコンフュサォは付き纏う。

 アニメーションはアメコミやバンドデシネの中間地点のような野性味溢れるデザインで統一されており、本作の状況説明と史実性を高める目的で時折実写映像が挿入される。記者のタイプライターや大学の教壇が空中浮遊するシュールレアリズムに即した映像も登場するが、基本的には地に足の着いた実写映像以上に現実味を帯びた作品だ。

 ロトスコープやモーキャプのような実写取込の技術を採用したとは到底思えないほど柔軟に動くのが面白い。無機物と地面の接触や車体と人物の質量感など、極端に形が崩壊した形跡がなく、仮にあっても嫌にならないのだ。

 『バクテリアウォーズ』のように、アニメから実写映像への切替は観客を落胆させる起因となることが多い。本作ではその問題を見事に解消していた。人物の静止画を実写に切替えたり、通常時をアニメ/熱狂時を実写という分類を施すことで双方の要素が互いに刺激し合っていた。
 
 現場で発生した事件を正確に、迅速に、簡潔に報道することこそがジャーナリズムなのか。戦場であった現地民や同僚の記者達から、「弱き人間に救いの手を述べよ。」という共通の信念が飛び交うたびに、カプシチンスキは葛藤してゆく。自分の行動が世界情勢を著しく変えるのではないかと。その決断とその軌跡を綴る場面は手に汗握るものだった。

 戦場の最前線で任務を全うした記者の至極のドキュメンタリー。

  

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