私とカートゥーンと鈴と。: ディリリとパリの時間旅行 Dilili à Paris

ディリリとパリの時間旅行 Dilili à Paris

ディリリとパリの時間旅行 Dilili à Paris
監督・脚本 ミッシェル・オスロ
製作 クリストフ・ロシニョン、フィリップ・ボエファール
音楽 ガブリエル・ヤレド
編集 パトリック・デュクリュエ
仏独白合作 2018年 フランス語 95分

予告編


 『キリクと魔女』『アズールとアスマール』のミッシェル・オスロの新作。ベルエポック期の情緒溢れるフランス・パリで巻き起こる大事件に挑む少女の物語。ベル・エポックとは、フランスが不安定な政治体制ながらも、都市圏の消費文化や産業革命の躍進に発展した19世紀末期のこと。

 同一の原作者からか、どことなくキリクの親戚かと惑わすような風貌の少女の名前はディリリ。好奇心と探究心は人一倍でキリクに負けず劣らず。フランス領のニューカレドニアから遥々パリに来たハーフフレンチだ。故郷と新天地の双方の文化や習慣を尊重し、優雅に冷静に物事を対処するまさに現代的な価値観から創生されたような女性である。故郷の風習や秩序を半ば強引に文明欧米化してしまったババールは対照的だ。

 人物のオブジェクトはコンピューターで平面を重視して構成。彼等の足元には影も幕の段もないのに、目の錯覚を通してあたかも黒い影が違和感なく存在しているように見れる。輪郭線をなくしたデザインは10分程度あれば自然と慣れていくのだが、途中に登場する動物が原因で一瞬気持ち悪くなってしまった。

 全編に染み込んだアールデコ調のパリも去ることながら、当時の闇の部分も赤裸々に披露する大胆さも凄まじい。最初の場面で悪名高き人間動物園を挿入し、素人目でもこれが彼女の一般的な認識だと定義づける演出は衝撃的。主人公の社会的地位と端的に表現された搾取の歴史を公開したのだから。そして、少しでも未開人ではなどと侮れば、次の場面でのディリリの流暢なフランス語で二度驚くだろう。

 男性支配団や狂犬病や貧民街などディリリの行く手を妨害する様々な事件。子供向けとは言うものの彼らの出現は少々不安にさせるかもしれない。特に女性を人間以下の存在として家財具同然の処遇を平気で振る舞う姿は心苦しくなる。そんな主人公達に待ち受ける危機や困難は実態の陰湿さとは裏腹に、少年探偵団の事件簿のような楽観的とも言える雰囲気があった。それらと全編を通して『マドレーヌ』のようなじゃじゃ娘の奮闘を両立していた。

 ディリリの推理と調査を手助けする実在した人物は全てパリに所縁のある方ばかり。しかも、物語に自然とマッチした台詞と性格が用意されている。パリの歴史を形成した芸術家の欠片を丁寧に拾得するように登場する。『フォレスト・ガンプ/一期一会』の実写映像のような史実性と肩苦しさがないのも嬉しいところ。

 ただ、一部の人物にお咎めに対する贖罪がないのが少々不満だった。物語で重要事項となる事件の加害者が無罪放免のまま本編が終了するケースはある意味斬新だが。それでも、隅から隅まで"本物のパリ"で彩られた本作は最高の時間旅行だった。

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